卵巣嚢腫の手術を勧められたとき、治療の必要性と同じくらい気になるのが「費用」ではないでしょうか。
入院や手術にかかる費用はもちろん、自己負担額や公的医療保険(健康保険)制度の活用によって、実際に支払う金額は大きく変わります。
この記事では、以下の3つのポイントを中心に、卵巣嚢腫の手術費用を詳しく解説します。
・卵巣嚢腫の手術費用の相場
・手術方法による費用の違い
・高額療養費制度を活用した負担軽減の仕組み
※各費用の詳細は、複数の医療機関での実際の費用を参考に、総合的に記載しています。(2026年7月現在)
鳥居 佳織
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 1.卵巣嚢腫の入院・手術費用の相場はいくら?
- 2.手術方法別|卵巣嚢腫の入院・手術費用一覧
- 3.実際に払う金額はいくら?自己負担額の考え方
- 4.手術費用以外にかかるお金
- 5.病院によって卵巣嚢腫の手術費用は変わる?
- 6.卵巣嚢腫の手術費用に関するよくある質問
卵巣嚢腫の入院・手術費用の相場はいくら?
卵巣嚢腫の入院・手術費用は、健康保険適用の有無や手術方法によって変動します。
健康保険適用時の入院・手術費用の目安
卵巣嚢腫の入院・手術は、多くの場合、健康保険が適用され、自己負担は原則3割となります。

※上記は健康保険適用の場合の一般的な目安であり、医療機関や処置内容によって異なります。
自費診療になるケースはある?
基本的に、卵巣嚢腫の治療を目的とした手術は健康保険の適用対象です。良性の嚢腫であっても、診断・治療の必要があると医師が判断すれば、保険診療として手術が行われます。
ただし、まれに自由診療を希望する場合や、先進医療等健康保険対象外の技術を併用する場合には、別途自費での診療となる可能性があります。
健康保険が適用されるかどうかは、治療の目的や手術方法によって異なるため、事前に医師や医療機関に確認しておくと安心です。
手術方法別|卵巣嚢腫の入院・手術費用一覧
卵巣嚢腫の手術には、大きく分けて「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」と「開腹手術」の2つがあります。

手術方法によって、体への負担や入院日数、そして費用にも違いが生じます。ここでは、それぞれの特徴と費用の目安を解説します。
腹腔鏡手術の入院・手術費用
腹腔鏡手術は、卵巣嚢腫の治療で広く用いられている方法のひとつです。お腹に小さな穴を数カ所あけ、そこからカメラや手術器具を挿入して嚢腫を取り除くため、体への負担が少なく、術後の回復が早い点が特徴です。
近年では、腹腔鏡手術に対応する医療機関が増えており、開腹手術よりも術後の入院期間が短く済むと期待されています。
健康保険が適用されるため、自己負担額はおよそ14万〜27万円程度が目安です。術式や入院日数、医療機関の体制によって多少の差が生じることがあります。
開腹手術の入院・手術費用
嚢腫が大きい場合や、周囲組織との癒着が強く腹腔鏡手術では対応が難しいと判断される場合には、開腹手術が選択されます。
お腹を10センチほど切開して行うため、術後の痛みや体への負担はやや大きくなり、入院期間も長くなる傾向があります。
費用は腹腔鏡手術と大きくは変わらないものの、入院が長引くことで差額ベッド代や入院中の検査費が加算され、総額がやや高くなるケースがあります。
健康保険適用内で受けられるため、自己負担額の目安はおよそ12万〜26万円程度です。
卵巣温存手術と卵巣摘出手術の費用差
卵巣嚢腫の手術では、卵巣・卵管を残す「卵巣嚢腫摘出術」と、卵巣・卵管ごと取り除く「付属器切除術」のいずれかを行います。年齢や嚢腫の大きさ、状態によって医師が総合的に判断します。
どちらの術式も健康保険が適用されるため、自己負担額に極端な違いはありません。ただし、付属器切除術のほうが処置範囲が広くなったり、手術時間が長くなったりするケースがあるため、数千円〜数万円の費用差が生じる場合があります。
費用だけでなく、術後の体調や将来のライフプランにも関わる重要な選択となるため、医師とよく相談して決めることが大切です。
実際に払う金額はいくら?自己負担額の考え方
卵巣嚢腫の手術は健康保険が適用されるものの、自己負担額は決して少なくありません。
しかし、高額療養費制度を利用すると、一定額を超えた分については払い戻しを受けられます。
健康保険3割負担の場合の自己負担目安
医療費は原則として、健康保険により3割負担となります。例えば、手術費用の総額が90万円の場合、窓口での支払いはおよそ27万円が目安です。
ただし、実際に負担する金額は年収等によって異なります。また、「高額療養費制度」の適用によりさらに軽減される場合があります。
高額療養費制度を使うといくら戻る?
高額療養費制度とは、同一月(1日から月末まで)の医療費が高額になった場合、自己負担額に上限を設ける制度です。例えば、年収370万〜770万円の方(69歳以下)であれば、ひと月あたりの上限は「8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%」と定められています。
この条件で医療費が100万円かかったときの自己負担額はおよそ8万円台となり、それを超えた分はあとから払い戻されます。(※実際の自己負担上限額は、年齢や所得区分、加入している健康保険によって異なります。)
ただし、食費や差額ベッド代、先進医療にかかる費用など、健康保険適用外の支払いは対象外となる点に注意が必要です。
実際には、病院でいったん高額の医療費を支払ったあとに、加入中の健康保険の窓口に申請することで上限を超えた分が払い戻される仕組みです。
あらかじめ「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払い自体が上限額内に抑えられるため、家計への一時的な負担を減らすことができます。認定証は、加入している健康保険組合や協会けんぽに申請すれば取得可能です。
手術が決まったら、早めに申請しておくのがおすすめです。
なお、マイナンバーカードを保険証として利用している場合は、事前の申請手続きをしなくても窓口での支払いが自動的に限度額内に抑えられます。
手術費用以外にかかるお金
手術を受ける際は、手術費用だけでなく、入院や検査、通院にかかる費用も忘れてはなりません。ここでは、見落としやすいお金を解説します。
入院費・差額ベッド代
入院時に個室や少人数部屋を希望する場合には「差額ベッド代」として追加費用がかかることがあります。
この費用は病院ごとに大きく異なり、1日あたりの金額は比較的幅があります。
相場としては、5,000円〜1万円ほどとなるケースが多く、入院日数が延びると数万円~十数万円にのぼる場合もあります。
差額ベッド代は原則自己負担となるため、部屋の希望があるときは事前に金額や空き状況を確認しておくと安心です。
術前検査・通院・術後フォロー費用
卵巣嚢腫の手術では、術前検査や診察、術後の経過観察のための通院等、さまざまな費用が発生します。
具体的には、術前に血液検査・心電図・画像検査(MRIや超音波)等を行い、術後も複数回の通院が必要になるのが一般的です。これらをすべて合算すると、数万円程度になることもあります。
あらかじめ、どのような検査が必要か、どのタイミングで費用が発生するのかを確認しておくと、予算の見通しを立てやすくなります。
費用トラブルを防ぐために確認すべきこと
入院や手術の前には、費用の内訳やオプションの有無について、病院側にしっかり確認しておくことが重要です。
個室利用や麻酔方法、検査内容によって追加料金が発生することがあるため、見積もりを出してもらえるかどうかを事前に尋ねておくと安心です。
病院によっては、「入院セット」や「手術パック」として費用をまとめて提示しているケースもあります。書面で内容と金額を確認し、不明点は遠慮せず質問することで、予期せぬ出費を防げます。
病院によって卵巣嚢腫の手術費用は変わる?
卵巣嚢腫の手術費用は、同じ内容の手術であっても、検査体制や入院の条件、診療方針の違いによって、総額や自己負担額に違いが出る可能性があります。
医療機関ごとの特徴を理解して選ぶことが大切です。
大学病院・総合病院・クリニックの違い
卵巣嚢腫の手術を受けられる施設には、大学病院・総合病院・クリニックといった医療機関があります。それぞれに特徴があり、手術の対応体制や費用面にも違いが見られます。
大学病院は、専門性の高い医師が在籍し、最新の医療機器や技術を活用した治療が可能です。検査や処置の項目が充実している分、費用がやや高めになる傾向があります。
また、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関を紹介状なしで受診する場合は、通常の診療費とは別に初診時に7,000円の特別料金が発生する点に注意が必要です。
総合病院やクリニックでは、標準的な診療体制のもと、比較的コンパクトに治療が行われることが多く、大学病院に比べて費用を抑えやすい傾向があります。
ただし、施設ごとに対応できる症例や手術実績、入院設備の充実度に差があるため、症状や希望に合わせて医師と相談しながら選ぶことが大切です。
費用を抑えたい人の病院選びのコツ
治療費を少しでも抑えたいと考えている場合は、病院の公式サイト等で手術実績や費用の目安を事前に確認しておくことをおすすめします。
また、事前相談で見積りを提示してくれる病院もあるため、不明点があれば遠慮せず問合せましょう。
卵巣嚢腫の手術費用に関するよくある質問
卵巣嚢腫に関する費用や治療方針については、不安や疑問を抱く方も多いでしょう。ここでは、よくある質問に答えます。
卵巣嚢腫の手術は必ず必要?
手術が必要かどうかは、嚢腫の大きさ・症状の有無・悪性の可能性等をもとに医師が総合的に判断します。
直径が小さく、症状もない良性の嚢腫であれば、定期的な経過観察のみで対応できることもあります。ただし、大きさの変化や症状の進行、ねじれ・破裂のリスクがある場合には、手術が検討されることになります。
治療方針は、医師と相談のうえ、自身の体調や将来の希望に応じて慎重に決めましょう。
民間の医療保険は使える?
加入している民間の保険会社や共済等の入院手術に備える医療保険・特約では、手術給付金や入院給付金の対象になることがあります。
給付の条件は契約内容によって異なるため、保険証券や約款で「対象となる手術名」や「入院日数の条件」を事前に確認しておくと安心です。
また、給付申請には診断書や手術証明書が必要になる場合もあるため、あらかじめ保険会社に問合せて必要書類を確認しておくとスムーズです。
日帰り手術は費用が安い?
一部の軽症例や小さな嚢腫に対しては、日帰り手術が可能な場合もあります。
日帰り手術や短期入院のほうが医療費を抑えられる可能性もありますが、安全性や術後の経過観察も考慮する必要があります。医師と相談しながら、体への負担やリスクをふまえて適切な方法を選ぶようにしましょう。



