ホルモンバランスを整える7つの方法とは?乱れの原因から解説
PROFILE
1 ホルモンバランスとは
2 ホルモンバランスの乱れでおきる4つの問題
3 ホルモンバランスが乱れる原因
4 ホルモンバランスを整える7つの方法
5 ホルモンバランスを整える際の疑問
6 セルフケアでホルモンバランスを整えて不調を緩和しよう
ホルモンバランスとは
女性において「ホルモンバランスが乱れている」という場合、女性特有のホルモンを指すことが一般的です。女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモンがあります。
2つのホルモンは働きが異なり、生理周期の中で分泌量が変化するのが特徴です。
エストロゲン
エストロゲンは排卵が始まる排卵期から分泌量が増加します。女性の健康な体と心のために、次のような働きをするホルモンです。
● 丸みを帯びた体つくり
● 妊娠に備え血管をしなやかに、骨を強くする
● 子宮内膜や乳腺を整える
● 自律神経に働きかけ心を健やかに保つ
プロゲステロン
対するプロゲステロンは、エストロゲンが整えた状態を維持し、妊娠が健全に維持されるために働くホルモンといえます。働きは次のとおりです。
● 基礎体温の上昇
● 子宮内膜を整える
● 乳腺を発達させる
このように女性ホルモンはお互いにバランスを取りながら、女性の身体の健康を保っています。しかし、ちょっとしたことでバランスが乱れてしまいやすい面も持っているのです。
ホルモンバランスの乱れでおきる4つの問題
それでは女性ホルモンのバランスが乱れてしまうと、どのような問題が起きるのでしょうか。問題別に解説していきます。
生理不順で妊娠にも影響
ホルモンバランスの乱れにより起きる大きな問題が、生理(月経)に関するものです。
成人女性の生理周期は生理が始まった日を1日と数え、次の月経が開始する前の日までの日数を数えます。一般的な生理周期は25~38日で、ずれは6日前後、出血がある期間は3~7日です。
ホルモンバランスの乱れにより生理周期が崩れた状態を、生理不順といいます。生理不順になると起きうる症状は、次のような内容です。
▼生理不順に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
生理不順について基本から解説!検査を受けて病気を治療しよう
過短月経 | 過長月経 | 無月経 | 頻発月経 |
---|---|---|---|
生理の出血が少なく、3日以下で終わってしまう | 生理の出血が多く、8日以上続く | 妊娠していない状態で、生理が3カ月以上来ない | 生理周期が24日以内と短い |
健康的な人であっても、生理周期が6日ほど変わることは珍しくありません。しかし20~45歳で生理不順が続く原因は、ホルモンバランスの乱れに限らず婦人科系の病気や不妊症が隠れている恐れもあります。
生理周期が大きく乱れている場合には、婦人科へ相談することも検討してみましょう。
更年期障害で身体的・精神的に多様な症状
加齢に伴い卵巣ホルモンのエストロゲンの分泌が大きく減少すると、更年期障害といわれるさまざまな心身の不調が起きることがあります。
更年期障害で起こりやすい症状は下記の6種類が挙げられます。
精神神経系の症状 | 血管運動神経系の症状 | 皮膚分泌系の症状 | 消化器系の症状 | 運動器官系の症状 | 泌尿器・生殖器系の症状 |
---|---|---|---|---|---|
・頭痛 ・めまい ・不眠 ・不安感 ・イライラ感 ・うつ ・気分の落ち込み | ・ほてり、のぼせ(ホットフラッシュ) ・動機、息切れ ・寝汗、発汗 ・むくみ | ・喉の渇き ・ドライアイ ・皮膚のかゆみ | ・胃もたれ ・吐き気 ・下痢、便秘 ・胸やけ | ・肩こり ・腰痛 ・背中の痛み ・関節痛 ・しびれ ・手指の痛みや変形 | ・月経異常 ・尿失禁 ・性向痛 ・膣の乾燥 |
更年期障害の症状は程度や内容に個人差があるため、全員に全ての症状が当てはまるとは限りません。しかし、当てはまる項目が多い場合は、ホルモンバランスの乱れによって多様な変化が起きている可能性があります。
PMSの引き金
PMSは月経前症候群のことで、生理が始まる3~10日前からおきる疾患です。直接的な原因は明らかになっていないものの、ホルモンバランスの乱れが影響すると考えられています。
個人差もありますが、次のように症状が生理周期に合わせて変化するのも特徴です。
生理中 | 卵胞期(生理終了) | 排卵期 | 黄体期(生理前) |
---|---|---|---|
・生理痛 ・頭痛 ・貧血 ・便秘、下痢 ・ニキビ | 症状がないことが多い | ・おりものの増加・出血 ・下腹部の痛み | ・むくみ ・胸の張り ・下腹部の痛み ・便秘 ・眠気 ・食欲が増す ・甘いものが食べたくなる ・体がだるい ・肌荒れ、ニキビ ・イライラする ・不安になる ・集中できない |
心身共に症状が現れるため、生理前につらさを感じる女性も多くいます。
▼PMSに関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
PMSは生理の2週間前から始まる?辛い症状を緩和させる方法を解説
肌が荒れて大人でもニキビ
ホルモンバランスの乱れは肌の状態を不安定にさせ、大人のニキビや敏感肌の原因になります。
理由は2つあり、1つはエストロゲンの分泌量の低下です。肌や髪の潤いとハリを保つ効果を持っているため、減少すると皮膚の乾燥やターンオーバーの乱れに繋がります。
一方でプロゲステロンには皮脂を増加させる働きがあり、ニキビの原因になる毛穴詰まりを起こす場合があります。生理中はプロゲステロンが増えるため、皮脂が増加しニキビになりやすくなってしまうのです。
また、女性ホルモンの分泌の減少は男性ホルモンの過剰分泌を招きます。男性ホルモンは皮脂分泌を増やすため、こちらも肌が荒れて大人でもニキビができる原因になります。
ホルモンバランスが乱れる原因
心身にさまざまな問題を引き起こすにもかかわらず、なぜホルモンバランスの乱れが起きてしまうのでしょうか。原因を4つ紹介します。
ストレス
ホルモンバランスが乱れる原因として、ストレスが挙げられます。
エストロゲンとプロゲステロンの分泌は、脳の視床下部や脳下垂体という部位からの命令で調節されます。これらの部位はとてもデリケートで、ストレスや睡眠不足等日々の生活の変化に敏感に反応し、分泌量のバランスが乱れてしまうのです。
ストレスには精神的なものだけでなく、例えば寒さや痛みといった体が直接感じるものもあります。そのため自身では「ストレスがない」と思っていても体がストレスを感じ、ホルモンバランスが乱れてしまうこともあります。
睡眠不足
ホルモンバランスの乱れを起こす原因には、睡眠不足も大きく関わります。女性ホルモンの分泌量を調節する脳の視床下部が、自律神経系や免疫系の機能もコントロールしているためです。
自律神経は生命維持にかかせない機能を、意識せずともコントロールする神経のことです。呼吸や消化、心臓の鼓動等をコントロールするため、自律神経の機能が低下すると頭痛やめまい、動機、眠気等の症状が現れます。
ホルモンバランスは、体調悪化によるストレスも大敵です。体調が悪くて睡眠不足になりホルモンバランスがますます乱れる、という悪循環が起こることもあります。
過度なダイエット
急激に体重を減らすダイエットに取り組んだ場合も、ホルモンバランスの乱れに繋がります。生きていくために重要な臓器へ限られた栄養を送るべく、子宮や卵巣等の生殖機能は後回しになってしまうためです。
女性ホルモンの分泌をおさえ生理が来ないように体が働きかけることで、ホルモンバランスの乱れにつながります。
加齢
ホルモンバランスの乱れには、加齢も影響を及ぼします。これは、女性ホルモンの分泌量が年齢とともに少しずつ変化していくからです。
2つの女性ホルモンのうち、エストロゲンの分泌量は20代後半がピークで、その後少しずつ減少していきます。
更年期に向かう40歳以降は特に急激に減少しやすい時期です。生理不順や不正出血だけでなく、のぼりやほてり、めまい、疲労感等さまざまな症状が現れます。
ホルモンバランスを整える7つの方法
日々の生活の中のちょっとした工夫でも、ホルモンバランスを整えることができます。
栄養バランスの取れた食事
残念ながら、ホルモンバランスを直接整えてくれる食品はありません。しかし、栄養不足や偏りがホルモンバランスの乱れにつながるため、バランスよく食事をとることがとても重要です。
正常な女性ホルモンの分泌を促すためにも、食事は炭水化物やたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することを心がけましょう。
以下に、日頃の食生活でバランスよくとりたい食品と、それに含まれる栄養素を挙げました。
● ご飯・パン・麺等から「炭水化物」
● 野菜・果実から「ビタミン」
● 海藻類・キノコ類等から「ミネラル・食物繊維」
● 肉・魚・卵・大豆食品等から「タンパク質・コレステロール」
● 牛乳・乳製品から「カルシウム」
● 芋類から「ビタミンやカリウム、食物繊維」
● ゴマ・ナッツ類から「ビタミンB群・E」
摂取量の目安を知りたい場合は、農林水産省の提示する食事バランスガイドを参考にするのもおすすめです。
また、大豆製品にはタンパク質やコレステロール以外に、エストロゲンと似た分子構造をした大豆イソフラボンも多く含まれます。たんぱく質を補う際に、大豆製品を選ぶのも手です。
また、食事だけでは補いにくい栄養素がある場合は、サプリメントを活用するのも手です。
▼生理痛改善にも役立つ、ホルモンバランスを整えるためのレシピはこちらの記事で紹介しています。
ホルモンバランスを整える15分でできるワンパン温活レシピ
十分な睡眠
良質な睡眠をたっぷりととることも、ホルモンバランスを整えるために大切です。個人差はありますが、十分な睡眠時間は6~10時間が理想とされます。
自分に合う睡眠時間を知りたい場合は、毎日の就寝時間をそろえてみましょう。例えば夜11時にベッドに入り、7時間寝たときと8時間寝た時のすっきり感や疲れの取れ具合等を比較します。朝起きたら自律神経を活発にするために、まず太陽の光を浴びることも大切です。
しかし、夜勤のため日中に眠らざるをえないという人もいるかもしれません。日中に眠る場合は、明るさと音に注意すると質の良い睡眠をとるための環境を整えられます。遮光カーテンや耳栓等を活用し、静かで暗い寝室にすると効果的です。
また、明るい時間に家へ帰宅し眠る場合は、サングラス等で帰り道の日光を遮ると自律神経が活発になるのを防げます。
ストレスをためない生活
ホルモンバランスの乱れを招くストレスをためないように、上手に発散させていきましょう。気軽にできるストレス発散法として、次のような方法が挙げられます。
● 軽い運動や趣味に没頭する
● 入浴でゆっくりとした時間を過ごす
● アロマテラピー等でリラックスできる環境を過ごす
軽い運動や趣味への没頭は、ストレスになることを考える時間を減らすのに効果的です。入浴等、リラックスする時間をとると、ストレスを回避することにも繋がります。
また、自身の物事の考え方を振り返り、少しずつ変えていくのも選択肢の1つです。例えば自分の失敗にしか目がいかない、自分を過小評価してしまう、といった考えの癖がある場合、どんどん自分を責めてネガティブな思考に陥ってしまいます。
自分がどうしてそう考えたのか、ゆっくり振り返る時間を作ってみてください。
体のツボを指圧
ホルモンバランスの乱れによる不調の改善に、ツボ押しも効果的です。代表的なツボを3つ紹介します。
ツボの名前 | ツボの場所 | ツボの押し方 | 期待される効果 |
---|---|---|---|
三陰交 | ・足の内側のくるぶしに小指をそえる ・指4本分上へいった、骨のきわが三陰交 | ・親指の腹を三陰交へ当てる ・心地よいと感じる強さで5秒間押す ・左右とも5回ずつくりかえす | 生理トラブル、ホットフラッシュ、冷えやむくみの解消 |
血海 | ・膝のお皿の内側から上へむけて指をそえる ・指3本分上の、やや内側のへこんだところ | ・手のひらや手のひらの親指の付け根を血海へ当てる ・心地よいと感じる強さで5~10秒ほど周辺をマッサージ ・左右とも5回ずつくりかえす | 生理痛や冷え、だるさの緩和 |
陰陵泉 | ・膝のお皿の下、内側にあるくぼみへ人差し指をあてる ・指4本分下がったあたりにあるくぼみ(押すと軽く痛みがある) | ・親指の腹を陰陵泉へ当てる ・心地よいと感じる強さで5秒間押す ・左右とも5回ずつくりかえす | むくみや下痢、食欲不振の改善 |
ツボを押すときは、細い棒等であざができるほど強く押すのは避けましょう。人によって手足の長さは違うため、指の腹や手のひらで心地よいくらいの強さで押すとツボを刺激しやすく効果的です
ピルを服用
エストロゲンとプロゲステロンを含む女性ホルモン剤(低用量ピル)も、生理痛の緩和や生理不順の改善に役立つ薬です。ホルモンバランスの乱れが整うことで、肌荒れにも効果がみられます。
ピルの処方は病院で受ける必要があるため、セルフケアだけでは改善が難しい場合には、婦人科へ相談してみましょう。相談しにくい面もあるかと思いますが、ピル以外にも適切な治療を提案してもらうことで、症状の改善や緩和が期待できます。
漢方薬の服用
ホルモンバランスを整えるためには、漢方薬の服用も効果的だと考えられています。漢方では血のめぐりや内臓の働きといった基本的な健康の機能にアプローチすることで、結果としてホルモンバランスを整えることにつながるという考え方が主流です。
ホルモンバランスを整えるための漢方薬としては、次のようなものが挙げられます。
当帰芍薬散:血のめぐりを良くするほか、卵巣機能に影響を及ぼし、月経不順の人などに処方されます。
加味逍遥散:体の熱である「気」を調整する成分が含まれていて、排卵障害を始めうつやイライラなど生理や更年期による精神面での症状が強い人に効果が出やすい薬です。
漢方は、病院で処方されるほか、漢方医薬局やドラッグストアで購入できます。自分に合った漢方の選び方がわからない人や、他に服用している薬がある人は、病院か漢方医薬局で相談してみましょう。
ホルモンバランスを整える際の疑問
ここまで読んだ方の中には、自分にホルモンバランスの乱れが起きているかチェックしたいと感じた方もいるかもしれません。自分で乱れをチェックする方法と病院への相談タイミングについて解説します。
ホルモンバランスの乱れのチェック方法は?
今回紹介した4つの問題から起こりうる症状が出ている場合、ホルモンバランスが乱れている可能性があります。
また、更年期障害は簡易更年期指数(SMI)という簡単なテストでも定期的にセルフチェックできます。これは設定された10個の質問に対し、症状の程度を「強・中・弱・無」の4段階で判断するものです。
厚生労働省の「ヘルスケアラボ」等、オンライン上で簡易的にセルフチェックできるサイトがあるため、気になる方は試してみましょう。
病院で相談したほうがよい?
セルフケアだけでは問題が改善しない、生理周期以外でも症状が出ている場合には、病院へ相談をしましょう。ホルモンバランスの乱れだけでなく、婦人科系の病気や糖尿病、高血圧、心疾患等が潜む可能性もあるからです。
また、セルフケアがプレッシャーになり、かえってストレスの原因となる可能性もあります。「すでに症状があって不安」「セルフケアだけでは改善が難しい」と感じたら、無理せず病院へ相談してみましょう。
加齢によるホルモン減少への対処法は?
女性の場合、通常では閉経を起点に、ホルモンの分泌量は必ず少なくなっていくものです。こうした加齢による女性ホルモンの減少は、残念ながらセルフケアで増やすことはできません。ただし、一時的にホルモン補充療法などでホルモンの減少量をサポートすることにより、ホルモン減少に伴う症状は緩和されることが多々あります。
加齢によるホルモン減少や更年期と似た症状に悩んでいる方は、婦人科や更年期外来を受診することで解決の糸口になるかもしれません。
セルフケアでホルモンバランスを整えて不調を緩和しよう
ホルモンバランスが乱れる原因は、ストレスや睡眠不足、過度なダイエット、加齢です。乱れが生じると、生理不順や更年期障害、PMS、大人でも肌荒れによるニキビ等、心身へさまざまな症状が現れてしまいます。
乱れを整えるためにできるセルフケアの7つの方法をおさらいしておきましょう。
● 栄養バランスのとれた食事
● ホルモン分泌をサポートする飲み物を選ぶ
● 十分な睡眠
● ストレスをためない生活
● 体のツボを指圧
● ピル薬を服用
● 漢方薬を服用
セルフケアだけでは改善が難しい場合や、症状がすでに出ていて不安があるときは、無理せず病院で相談してみましょう。