産後生理はいつから再開?体の変化を知り不順も乗り越えよう
PROFILE
1 産後生理の再開時期は個人差が大きい
2 産後に生理が再開するまでの体の変化
3 産後の生理にかかわる体調不良
4 産後生理の再開を促すポイント
5 産後生理でよくある疑問
6 まとめ:産後の生理再開は焦らず様子を見よう
産後生理の再開時期は個人差が大きい
産後の生理が再開する時期は個人差が大きいです。
一般的には半年程度で生理が再開する人は多いですが、人によっては1年程度生理が来ない人もいます。
生理が始まるタイミングに差があるのは、それぞれの体の状況の差が大きく関係します。出産後の女性の体は出産によってケガを負ったような体の状態であり、体内物質も大きく変化するものです。また、授乳状況も大きな影響があり、必ず何日で生理が来るとは断言できません。
ただ一般的には授乳をしていても半年ほどで卵巣機能が戻ることが多く、生理が始まる人が多いと見られています。一方で授乳リズムが頻繫な場合は、生理が始まるまで1年ほどかかることもあるため、焦らず様子を見ていくとよいでしょう。
産後に生理が再開するまでの体の変化
産後に生理が再開するまで、体の中ではさまざまな変化が起きています。ここからは具体的な変化の過程を要因となる物質などからも掘り下げていきましょう。
出産で女性ホルモンは急激に減少
女性は妊娠から出産後にかけて、体の中で「エストロゲン」と「プロゲステロン」という女性ホルモンが大きく増減します。これらの2つの女性ホルモンは普段から体内で女性らしい体づくりや肌つや、正常な排卵活動(生理)を助けるものです。
同時にエストロゲンは妊娠を助ける働きがあり、プロゲステロンは妊娠後の状態を維持する役割もあります。しかし、妊娠をすると2つの女性ホルモンが増加し、出産時にはピークに到達。出産をすると妊娠を維持していた働きが必要なくなるため、ホルモンが急激に減少、一時的にほぼゼロになります。
その後、減少したホルモンが回復すれば、通常の生理が行われる仕組みです。ただ、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は自然に回復はしていきますが、その後の授乳状況や体質によって左右されます。
母乳優先のホルモンバランス
出産によるプロゲステロンの抑制で、次にプロラクチンというホルモンが活性化します。プロラクチンは母乳を作り、授乳できる体を保つように働く物質で、血液から母乳を作り、赤ちゃんのための母乳を体内で精製します。
また、同時にオキシトシンというホルモンも働き、母乳が出るように脳に伝達します。これらのホルモンが優位になることで、出産後母乳を出すことができます。
しかし、プロラクチンやオキシトシンが優位ということは、プロゲステロンなどを抑制している状態。つまり、生理が再開しづらい体の状態が続くということです。授乳を続ける場合は、母乳優先のホルモンバランスが継続することになります。
なお、もし授乳を行わない場合は出産から3カ月~半年、授乳を行う場合は卒乳から3カ月程度でホルモンバランスが戻ると言われています。
卵胞ホルモンの分泌から増加
出産から時間が経ち授乳が減ってくると、エストロゲン(卵胞ホルモン)が増加。エストロゲンにより子宮内膜が厚くなり始め、また妊娠できるように体が働き始めます。
続いて排卵も始まることで、プロゲステロン(黄体ホルモン)も増えていきます。その後、受精が起きないと生理が始まります。
ただ、これらの体内活動は目に見えないため、正確な生理の再開は予測しにくいです。生理が再開する前兆としては、胸のはりや頭痛、肌荒れなどの身体的症状が見られることがあります。とくに妊娠前の生理前と同じような症状の場合は、生理が起きる可能性が高いため起きるものとして備えておくと安心です。
産後の生理にかかわる体調不良
産後は体の変化が関係して、生理前後でさまざまな体調不良が起きやすいです。誰しもが起こることで過度な心配はいりませんが、どのような症状かわからないと不安も大きくなります。
ここからは主に産後に見られる体調不良を見ていきましょう。
徐々に消えていく悪露
まず出産直後から悪露(おろ)が腟から排出されます。悪露とは、出産によって起きた子宮内の出血や分泌物、子宮内膜の残りなどが含まれる「おりもの」のことです。産後すぐから4週間(人によっては6~8週間)程度までの期間に排出され、徐々に消えていきます。
悪露の症状は子宮の機能が回復していく目安として見ることができます。産後数日は鮮血に近い色ですが、1週間程度で褐色のものへ。産後1週間半~2週間は黄色いおりものへと変わり、その後は通常のおりものに近い白いものへと変わります。
また、悪露は同時に後陣痛が伴うケースも少なくありません。とくに産後直後は後陣痛が強く出ることもあり、生理痛もしくは陣痛に近い痛みを伴うことがあります。ただ痛みは子宮が回復する過程で落ち着いてくるのが一般的です。
ただし悪露の症状が変化していかない、熱や酷い痛みが伴う場合は子宮が回復できていない可能性が出てきます。悪露の変化と体調を注意深く見ておく必要があるでしょう。
生理の再開後に不正出血
生理の再開後は、不正出血が起きることがあります。これは排卵時出血が原因であることが多いです。排卵時出血は、排卵の数日前にエストロゲンの増加で子宮内膜が剝がれ落ちる、または排卵のために子宮から出血するために起きます。
ただ排卵時出血は性成熟期の女性に起きる症状で、過度な心配や治療は必要ありません。軽い腹痛が伴うこともありますが、出血は2~3日で終わる傾向です。
ただし普通の生理と同じように強い痛みがあったり、出血量が多かったりという場合は注意が必要です。病気が隠れている場合もあるので診察を検討する必要があります。
PMSの悪化
産後はホルモンバランスが不安定になりやすく、生理前のPMSが悪化することもあります。PMS(月経前症候群)は、生理前の3日~10日前の間に多くの不調を引き起こす疾患です。主に腹痛・頭痛・むくみといった身体的症状、理由のない不安感やイライラといった精神的症状を起こします。
目立つ症状や度合いは人によって異なるという特徴があり、人によってはいずれかの症状のみが強く出ることもあります。そのため、生活が困難になるほど体調不良になる人も少なくありません。
PMSの原因は明確にはわかっていませんが、ホルモンの急激な増減が原因として見られています。つまり、ホルモンバランスが崩れた産後はPMSがより悪化しやすい状態です。
なお、PMSは妊娠・出産の有無に関わらず発症するものです。妊娠前にすでにPMSがあった人は悪化する可能性は当然ありますが、妊娠前にPMSがなかった人が発症することも考えられます。
▼産後のPMSに関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
PMSは産後に悪化するのか?対策や不調を乗り切る制度まで紹介
産後生理の再開を促すポイント
産後にすぐに生理が再開しなくても、焦る必要はありません。産後の体の変化は自然な変化の1つです。消耗した体の回復と共に緩やかに付き合っていく必要があります。
ただ、体の回復を重視し、生理の再開を促していくことは可能です。そのためには、意識して生活を見直す必要があります。
次は生理の再開を促すポイントを見ていきましょう。
母乳による育児の早期切り上げ
授乳中はホルモンの影響により排卵が抑制される、つまり生理が起きにくい状態です。そのため、母乳による授乳を早期に切り上げることで早くホルモンバランスを戻すこともできます。市販のミルクでも、赤ちゃんに栄養が足りるように作られているので切り替えても何ら問題はありません。
ただし、赤ちゃんが慣れずに飲みが悪いこともあるので、徐々に市販のミルクに切り替えていくと安心です。生後5カ月ごろになれば離乳しはじめ、離乳食に徐々に移行していくこともできます。赤ちゃんの様子を見つつ、市販のミルクや離乳食を試していくとよいでしょう。
食生活の見直し
産後の体やホルモンバランスを整えるには、適切な栄養摂取を意識することも大事です。とくに次の6つは産後の体への栄養素として重要なため、積極的に取り入れましょう。
栄養素 | 効果・理由 | 含まれる食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 体力・筋力回復、肌荒れ防止 | 肉、魚、大豆、卵など |
カルシウム | 歯や骨を強めるため 母乳を作るのに不足するため | 乳製品、煮干し、干しエビなど |
鉄分 | 血液を作る(貧血防止) | レバー、鰹、卵、小松菜など |
葉酸 | 栄養素を行き渡らせるため | わかめ、ほうれん草、レバーなど |
ビタミンB12 | 赤血球を作る(貧血防止) | 魚介類、ほたて、チーズなど |
ビタミンC | 鉄分を吸収するのを助ける | 柑橘類、いちご、ピーマンなど |
出産により女性の体は体力や筋肉が落ちてしまいます。回復させるには単純にタンパク質やカルシウムをしっかりと摂取することが大事です。ホルモンバランスの変化で荒れやすい肌も、適切な栄養素の摂取で保ちやすくなります。
また、産後は体内のカルシウムが母乳作りへ優先されるため、多くの人が歯や骨が脆くなりやすくなっています。そのため、カルシウムも摂取し、骨粗しょう症などの予防対策を行うことも必要です。
さらに鉄分もしっかりと摂りましょう。出産では多くの血液が失われているため、貧血対策に必須です。同時にビタミン類も摂れば、血液を作るのを助けてくれるのでビタミンが取れる食材も意識してみましょう。
産後食欲がない場合は?
もし産後に食欲がない場合は、無理に1食ですべてを食べようとすることはありません。例えば食事を小分けにして少しずつ食べる、もしくは一部分をサプリメントなどで補うのもよいです。食事で摂取するほうが効果的に栄養を摂ることができますが、気にしすぎて逆にストレスになってしまわないよう力を抜きましょう。
食事の用意に宅配を活用
食事に気を使う余裕がない場合は、食事の宅配サービスの活用を検討してみて下さい。食事の宅配サービスとは、より身近な形で日々の食事を提供してくれるサービスです。材料を揃えたり、調理をする手間を最低限で済ませられます。
また、1食分の栄養バランスを考えられている献立であることも一般的で、「減塩」「高たんぱく」など注力したいバランスに長けた商品もあります。
なお、食事の宅配サービスは大きく分けて次の2種類です。
● 温めればすぐに食べられる「お弁当」
● 簡単調理で美味しく食べられる「ミールキット」
なるべく手間なく栄養摂取を望む場合はお弁当、より栄養を重視して新鮮な素材を取り入れたいならミールキットがおすすめと言えるでしょう。
産後のお母さんは食事に気を配りたくとも赤ちゃんのお世話に全力で、なかなか食事に気を配れないことも珍しいことではありません。サービスを上手く活用して体を労わる方法として、食事の宅配サービスがあることも覚えておいて下さい。
育児でストレスを溜めない生活
生理が再開するような体調へ回復させるには、ストレスを溜めない生活を送ることも重要になります。産後はホルモンバランスも崩れており、ストレスによる影響も受けやすいです。
また、赤ちゃんのお世話自体にも体力も必要な上、睡眠不足にもなりやすい傾向もあります。無理な生活が続けば、体を壊してしまう可能性も少なくありません。
体を壊さず育児を切り抜けるには、育児の分担と適度な休憩が必要です。
パートナーには積極的に育児に参加をしてもらい、物理的な休憩を取れるように生活作りをしていきましょう。また、心を休めるためにも好きなことをする時間を作ることも大切です。ストレスを溜め込まないよう息抜きも意識してスケジュールを組んでいきましょう。
育児の支援制度を利用
余裕を作るために、赤ちゃんの育児を助けてくれる自治体の支援制度を利用するのもおすすめです。自治体の子育て支援センターのサービスでは、子育ての相談受付や交流の場の提供、子育てのさまざまな講習などを開催しています。
また、出張で子育て支援をしてくれる自治体もあり、体力的に限界なお母さんの助っ人になります。詳細な支援内容は各自治体によりますが、負担を減らすためにも利用できそうなものがあれば積極的に利用するとよいでしょう。
なお、自治体の支援制度は各自治体の公式サイトなどから確認することができます。
育休の延長
産後の回復が芳しくない場合は、育休の延長を考えることも選択肢として検討しましょう。出産は体に大きな負担がかかるため、必ずしも予定日までに完全回復するとは限りません。くわえて赤ちゃんのお世話で回復だけに注力できない状態です。
もし心身ともに余裕がない状態で仕事を再開してしまえば、後々一気に限界を迎えてしまう恐れがあります。体調が良くないのなら無理をせず、可能な限り育休を延長するようにして下さい。
育休は基本的に1歳未満の子どもがいる場合に取得できるものです。ただ、育休の延長は2回できるようになっており、以下の要件を満たしていることが条件となっています。
● 育休が必要な理由がある(保育園に入園できない、配偶者が養育できなくなったなど)
● 1歳の誕生日に従業員または配偶者が育休を取得している
育休の延長は1回目は1歳6カ月まで、2回目は2歳まで取得することが可能です。要件を満たしている場合は、企業側は育休を認める義務があります。もし育休の延長が必要なら、会社の就業規則に従って申請を進めて下さい。
産後生理でよくある疑問
初めての妊娠・出産では、体の変化に戸惑うことも多くなります。しかし、知っていれば対策できることのほうが多いので、気負わず対応していきましょう。
ここでは産後生理で浮かびやすい3つの疑問に答えていきます。
生理の再開前でも妊娠する?
生理が再開する前でも排卵していれば、妊娠する可能性があります。
授乳中は排卵がホルモンにより抑制されますが、徐々に排卵機能が働くようになるためです。そのため、産後は生理が再開するまで間がありますが、排卵自体は先に体内で起きているため妊娠できる状態になります。
もし妊娠を希望しない場合は、避妊をするのが確実と言えるでしょう。
また、続けて妊娠をすることは合併症などのリスクがあると言われています。とくに産後6カ月以内の妊娠、出産・妊娠期間を18カ月以内とするのは避けることが推奨されています。くわえて帝王切開の場合は妊娠が可能な期間が異なるので注意が必要です。次の妊娠を見越しておきたいのなら、医師に相談をしておきましょう。
※参考:亀田IVFクリニック幕張「妊娠間隔」
いつまでも生理が再開しないと病気?
授乳なども終わっているのに生理が再開しない場合は、子宮筋腫や甲状腺機能低下症などの可能性があるかもしれません。
ただ前述の通り体の回復に個人差があるため、例えば1年生理が再開しなくても病気か否かの判断は難しいです。他に気になる症状がないか気を配りつつ、不安があるならば産婦人科へ一度相談をしましょう。
年齢によって生理は再開しない?
公益社団法人 日本産婦人科学会によれば、日本人の閉経は平均50歳です。ただ、40代前半でも何らかの理由で早期閉経が起こることもあります。
もし妊娠を希望したい場合は、ホルモン補充療法によって排卵活動を促す治療を受ける選択肢もあります。
※参考:公益社団法人 日本産婦人科学会「更年期障害」
まとめ:産後の生理再開は焦らず様子を見よう
産後の生理は半年ほどで始まる人が多いですが、体の回復や授乳状況によっては1年ほど再開しないこともあるので焦らず過ごして下さい。体の回復は個人差がありますが、栄養価の高い食事や適度に体を休めることを意識すると回復を促すことができます。
また、産後もお母さんは赤ちゃん優先の体づくりになります。体を壊さないようパートナーや周りの家族と分担し、育児を進めていきましょう。