更年期なのかセルフチェック!似た病気に備え病院でも診断
PROFILE
1 更年期の基礎知識
2 更年期のセルフチェックシート
3 更年期症状を我慢する問題点
4 更年期は似た症状の病気もチェック
5 更年期の4つの備え
6 更年期をチェックする際の疑問
7 更年期で気になる症状があったら一度受診して
更年期の基礎知識
更年期は誰しも必ず訪れるものです。ただし、症状が出るタイミングや症状の種類は個人差があります。そこでまずは基礎知識として、更年期の性質や症状をご紹介していきます。
更年期の時期
一般的に女性更年期は、閉経が起きる年齢の前後5年、計10年間の期間を「更年期」と呼びます。女性は閉経の平均年齢が約50歳なため、45~55歳の期間が更年期の目安ということになります。
ただし女性更年期が始まる時期は個人差があり、必ずこれらの指標のとおりに始まるとは限りません。遅い場合もあれば、逆に30代後半に更年期に入る方も存在します。
▼いつからが更年期か、というテーマについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
更年期はいつからなのか?目安や終わりまでの対策を徹底解説
更年期によくある症状一覧
女性更年期は次のような症状があることが特徴です。これらの症状が強くつらいと感じる状態は、一般的に「更年期障害」と呼びます。
精神神経系 | 頭痛・めまい・不安感・イライラ感・うつ・不眠等 |
---|---|
血管運動神経系 | のぼせ・ほてり・発汗・寝汗・動悸(どうき)・息切れ・むくみ等 |
運動器官系 | 手先の痛み(しびれや変形)・関節痛・しびれ・肩こり・背中の痛み・腰痛等 |
消化器系 | 胃もたれ・胸焼け・吐き気・便秘・下痢等 |
泌尿器・生殖器系 | 尿失禁・月経異常・性交痛等 |
皮膚・分泌系 | ドライアイ・喉の乾き |
更年期の症状の原因
女性更年期の症状を引き起こす原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が加齢によって減少してくるためです。閉経に向けて女性ホルモンが急激に減少していき、ホルモンバランスが崩れることで各症状を引き起こしています。
また、外的要因として仕事や育児等の影響や、介護等の心理的負担が増えてくることも更年期の症状に影響するとみられています。
更年期のセルフチェックシート
ここからは女性更年期かどうかをセルフチェックしてみましょう。更年期は、「簡略更年期指数(SMI)」というチェックシートを使ってセルフチェックすることができます。
方法は自覚している各症状と程度をチェックし、点数を算出していく形です。合計した点数は「更年期指数」と呼び、点数によって更年期の程度を推測します。
気になる症状を次のチェックシートに当てはめてチェックしてみてください。
症状 | 症状が強い | 症状は中くらい | 症状は弱い | 症状はない | 点数 |
---|---|---|---|---|---|
顔がほてる | 10点 | 6点 | 3点 | 0点 | |
汗をかく | 10点 | 6点 | 3点 | 0点 | |
腰や手足が冷える | 14点 | 9点 | 5点 | 0点 | |
動悸(どうき)・息切れがある | 12点 | 8点 | 4点 | 0点 | |
寝つきが悪い・眠りが浅い | 14点 | 9点 | 5点 | 0点 | |
怒りやすい・イライラする | 12点 | 8点 | 4点 | 0点 | |
憂うつな気持ちになる | 7点 | 5点 | 3点 | 0点 | |
頭痛・めまい・吐き気がある | 7点 | 5点 | 2点 | 0点 | |
疲れやすい | 7点 | 4点 | 2点 | 0点 | |
肩こり・腰痛・手足が痛む | 7点 | 5点 | 3点 | 0点 | |
合計 |
更年期指数の自己採点の評価法は次のとおりです。
【0~25点】・・・これまでの生活を続けて問題なし
【26~50点】・・・食事、運動に注意して無理のないように生活するとよい
【51~65点】・・・医師の診察・生活指導・カウンセリング・薬物治療の必要あり
【66~80点】・・・長期的な治療が必要
【81~100点】・・・精密検査を受ける必要がある/更年期障害である場合は長期的な治療が必要である
参考:厚生労働省
更年期症状を我慢する問題点
更年期は自然なことであり、誰もが経験するため「我慢するべき」と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、更年期の症状を我慢しすぎると良い結果をもたらさないことがあります。そこで、更年期の症状を我慢する問題点について見ていきましょう。
日常生活や仕事に悪影響
更年期により日常生活や仕事がままならない状態になる人も珍しくありません。人によっては症状が強く出ることもあるため、「更年期は病気ではないから」と軽く見るのは禁物です。
厚生労働省の「更年期症状・障害に関する意識調査」によれば、更年期症状を自覚している人のうち、40~49歳は11.7%、50~59歳は6.9%の人が日常生活への影響が「かなりある」と回答しています。
症状が日常生活に支障をきたしている場合は「更年期障害」と診断もつき、治療をすることも検討されます。治療により、今までどおりの日常生活を送ることができる可能性があります。更年期による不調は自然なことであり、誰もが経験するため「我慢するべき」と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、更年期の症状を我慢しすぎると良い結果をもたらさないことがあります。そこで、更年期の症状を我慢する問題点について見ていきましょう。
他の病気の見逃し
更年期は身体・精神共にさまざまな症状を起こします。ただ、個々の症状は他の病気でも起こることがあります。一見すると更年期なのか、他の病気なのか判別が難しいです。更年期だろうと思っていたら、他の病気が隠れていたということも珍しくありません。
特に更年期の年代は、病院に行かなかったことで治療が手遅れになる病気も存在します。だからこそ更年期の症状を我慢せず、不調を感じたら病院で診断を受けるのが大切です。定期的な健康診断も行い、自分の健康を管理しておきましょう。
更年期は似た症状の病気もチェック
更年期と似た症状の病気で上位に上がるのは、「バセドウ病」と「橋本病」です。他にも可能性がある病気はありますが、症状の大部分が似ているため、まず疑われる病気です。
次にこれらの病気2つについて解説します。
バセドウ病
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気で、自己免疫疾患の一種です。甲状腺ホルモンは本来は臓器の代謝等をコントロールしてくれるものですが、過剰に分泌されることで不調を引き起こします。
具体的には甲状腺ホルモンと交感神経系のカテコールアミンが過剰分泌され、次のような症状が起きます。
● 動悸(どうき)
● 手先の震え
● 暑がり・汗をかきやすい
● 疲れやすい
● 筋力低下
● 下痢または軟便
● イライラ感
● 落ち着かない 等
この他に生理が止まる症状が出ることもあります。また、「甲状腺の腫れ」や「目が飛び出る・目が閉じられなくなる」という身体的な症状も特徴的です。
バセドウ病の原因はウイルス感染や強いストレスが関係して発症すると考えられています。治療を受けない場合、心不全や骨粗しょう症等を併発させる可能性があるため、必ず治療が必要です。
なお、バセドウ病は薬物治療や甲状腺の手術によって治療を行います。
橋本病
橋本病も甲状腺が関係する自己免疫疾患の1つです。
ただし、バセドウ病と異なり、甲状腺に慢性的な炎症が起きることで、逆に甲状腺ホルモンの分泌が不足してしまう病気です。甲状腺ホルモンは内臓を含めたさまざまな機能を動かすために必要なため、不足することで更年期と似た症状を起こすことがあります。
なお、橋本病でも甲状腺機能が正常であれば、症状は起きず治療が必要とは限りません。
しかし、各症状が強く出る場合は、甲状腺の機能異常が起きた「甲状腺機能低下症」と診断されます。この場合は治療が必要になるでしょう。
なお、橋本病の代表的な症状としては次のものがみられます。
● 動悸(どうき)・息切れ
● 脈拍減少
● 体温低下(冷え)
● 筋力低下
● 肌の乾燥
● むくみ
● 食欲不振
● 便秘
● 無気力感・ひどい眠気
● 物忘れ
● 月経不順 等
橋本病の原因は自己免疫の異常が原因ですが、なぜ異常が起きるのかは理由がわかっていません。ですが、低下している甲状腺ホルモンを補う薬による治療を行うことができます。
更年期の4つの備え
更年期はどのような人でもいずれ訪れます。あらかじめ備えておけば更年期の影響を軽減し、過ごしやすくなるでしょう。
ここからは更年期を健やかに過ごしたい人に向け、4つの備えをご紹介します。
病院で定期健診
まず、病院で定期健診を行うことは欠かさないようにしましょう。定期健診を受けていれば、更年期に入ったかどうかが判別できることもあります。
また、更年期以外の病気にかかっている場合も定期健診を受けていれば、早期発見の可能性が高まります。自分では気がつかなかった異常に気がつくこともあるかもしれません。
なお、更年期は、婦人科、更年期外来、女性外来で診察してもらえます。精神的症状が辛い場合は、心療内科・精神科を利用することも可能です。
もしかかりつけの病院があり、相談できる場合は内科でも問題ありません。ひとまず、医師の診察を受けることから始めましょう。
栄養バランスのとれた食生活
更年期を迎えると体内バランスを崩しやすくなるため、栄養バランスのとれた食生活がより大事になります。不規則な食生活は自律神経も乱れてしまうため、より更年期を悪化させる可能性があります。
なお、食生活は「規則正しく3食食べること」「栄養バランスを保つこと」がポイントです。食事構成としては、主食・副菜・主菜を3:2:1の割合で取ることを意識しましょう。
また、更年期で損なう要素を「食事で補う」ことも重要です。特に更年期によって減少する女性ホルモンの補完、乱れがちなホルモンバランスの調整に重点をおきましょう。
食事で補う栄養素は、次のものがおすすめです。
栄養素 | 働き | 含まれる食品 |
---|---|---|
大豆イソフラボン | 女性ホルモンと似た働き | 豆腐、豆乳、納豆、おから等 |
ビタミンE | ホルモンバランスの調整 | かぼちゃ、抹茶、アボカド等 |
栄養の不足分をサプリメントで補助
食事だけで必要な栄養素を完璧に取るのは難しいことです。そのため、不足分はサプリメントで補充する手もありますただ栄養は食事で摂取するほうが吸収率もよいため、あくまで補助的な利用がおすすめです。
なお、サプリメントや健康食品の類いは、複数の製品を同時に摂取しすぎないよう注意してください。複数のサプリメントを摂取したせいで過剰摂取となり、健康を損なうこともあります。各栄養素が食事とあわせて1日の摂取量を超えないようにしましょう。
運動を無理せず継続
更年期対策として運動も継続して行いましょう。
運動によって、乱れがちな精神をリラックスさせ、低下してくる筋力の増強も期待できます。代謝を促しやすくもなるため、体内バランスを整える際にも助けてくれるでしょう。
更年期の運動はウォーキングやヨガ等の有酸素運動がおすすめです。1回20~30分の運動を週に3~4回行うとよいでしょう。
以下でウォーキングの方法を簡単にご紹介します。
ウォーキングのやり方 |
---|
1, 顔は遠くを見る 2, 少し胸を張るように背筋を伸ばす 3, 肘は90度で曲げて軽く振る 4, 呼吸が苦しくない早歩きを意識 5, ひざは伸ばしてかかとから歩く 6, 吊り上げられている感じで歩く |
更年期向けの市販薬を常備
病院で投薬治療をするほどではないけれど、少し体調が気になるという方には市販薬を使う手もあります。ドラッグストア等で更年期向けの市販薬が販売されているので、気軽に試すことが可能です。
なお、病院で受けられる治療は西洋医学の投薬治療に対し、市販薬で購入できるのは東洋医学の分野である漢方薬がメインです。病院で処方されるようなホルモン剤や抗不安薬等は市販では取扱いがないので注意してください。
漢方薬は服用を続けることで体質を改善し、体調不良や体の悩みを緩和するという考え方です。緩やかに体質を整えるため、軽めの更年期症状に悩んでいる方に向いています。
更年期でおすすめな漢方については次のとおりです。
更年期向けの漢方薬 | 機能 | 対応する症状 |
---|---|---|
当帰芍薬散 | 血の巡りを促し、水分代謝を調節する。 | 冷え・疲れ・貧血・頭痛・肩こり等 |
加味逍遥散 | 体に溜まる熱を覚まし、血を補う。 | のぼせ・ほてり・ホットフラッシュ等 |
桂枝茯苓丸 | 血の巡りを良くする。 | 頭痛・肩こり・めまい・皮膚炎・下半身の冷え・のぼせ(上半身)等 |
市販薬といっても初めて使用する場合は、どの漢方を使うべきかは症状や体質によって異なるため、漢方の専門知識がある人に一度相談をすることをおすすめします。個々に適した漢方を選択したほうが、症状の緩和が期待できます。
漢方についての相談は、漢方薬局か漢方に詳しいスタッフが在籍している薬局で相談してみてください。
更年期をチェックする際の疑問
ここでは更年期をチェックする際に浮かぶことが多い疑問を集めました。今回は2つの疑問にお答えするので、気になる疑問がある方はご確認ください。
病院では何を基準に診断?
病院では血液検査、問診、更年期障害以外の病気の確認を行ったうえで総合的に判断します。更年期と思われる症状でも、別の病気の可能性があるためです。
特にバセドウ病や橋本病といった甲状腺機能障害は症状が類似しており、病院では可能性を調査して診断を進めます。
※参考:日本産科婦人科学会
どのような人が更年期障害になりやすい?
症状が出るか出ないかは個人差がありますが、真面目な人や、絶え間なく仕事や家事等を頑張っている人は、特に更年期障害になりやすいといわれています。体が不安定な時期なため、環境ストレスが多い人は影響を受けて強い症状が出やすい傾向があるためです。
また、真面目な人は正面からストレスを受け過ぎてしまうため、更年期は特に心身に不調が現れやすくなります。
ただし、あくまでも「なりやすい」だけで、確実に更年期障害になるとは断定できません。必要以上に不安にならず、気になる症状が出てきたらセルフチェックも活用してみてください。セルフチェックの点数が高く、症状に悩むようであれば、一度病院に受診してみましょう。
更年期で気になる症状があったら一度受診して
更年期障害の症状が出るのか、症状がどれぐらい出るのかは個人差があります。発症する症状も人により異なるため、紹介した症状すべてが当てはまるとは限りません。
しかし、精神神経系や血管運動神経系等、複数症状が一致する場合はセルフチェックをしてみることをおすすめします。
ただし、結果が更年期の可能性を示していても、別の病気の可能性もあります。自己判断で症状を我慢し、放置するのは危険です。他の病気なら治療の早さが命を左右することもあります。これからも元気に過ごしていくためにも、気になる症状があるのなら、婦人科等で1度受診しましょう。