日本人女性の9人に1人がり患する乳がん。正しい知識の第一歩は、まずは検査から

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1 「乳がん患者は生きづらい」という声が取材のきっかけ
2 まさか自分が…。乳がんの当事者になった日
3 自分の体を知るために、検査が大事な第一歩
4 がんになっても人生は続くからこそ、大事な“備え”
5 困難があっても、決して1人じゃない
「乳がん患者は生きづらい」という声が取材のきっかけ
I'm OK? 編集部:阿久津さんは乳がんにり患する以前から乳がんをテーマに取材をしてきたと伺っています。その理由やきっかけを教えてください。
阿久津さん:はじまりは、会社の健康診断で良性腫瘍といわれ、緊張して向かった診察室で21歳の乳がん患者と出会ったのがきっかけです。同年代の女性の乳がん患者からの訴えを聞く中で、「取材しよう」と思いました。そこから約20年間、ピンクリボン活動に取り組む人々や乳がん患者のドキュメンタリーを担当しました。一番最初のインタビューは、「乳がん患者は生きづらい」という彼女の言葉。実際に自分がり患してからも、それが解決できているのか?常に考えています。
生きづらいと思うのは、患者さんだけでなく、患者さんの周りの人々も同じ。小さな解決が、周りの人にとっての解決策になることもあります。その1つ1つの成功体験を繋いで広げるお手伝いをするのが私の使命です。
I'm OK? 編集部:り患される前から、多くの乳がん患者の方と接する機会があったのですね。
阿久津さん:活動を続ける中で、患者さんにとっては聞かれたくないこともたくさん聞いてきました。でも、その「聞かれたくないこと」が、誰かのためになる可能性があるんです。「次の誰か」のためにと、包み隠さずに話してくれた方々のためにも、私自身も隠せない!と思いました。
まさか自分が…。乳がんの当事者になった日

I'm OK? 編集部:阿久津さんの乳がんが発覚したときの経緯についても教えていただけますか?
阿久津さん:私は健康診断のオプションで乳がん検診を受けていたのですが、46歳のときに「乳がんかもしれない」とあっさり医師から言われました。伝えられたときは、人生で一番落ち込んだ瞬間でもありましたが、落ち込みながらも、何か自分にできることはないか3日間くらいずっと悩んだのを覚えています。
I'm OK? 編集部:多くの人が、「まさか自分が」ということがほとんどですよね。
阿久津さん:9人に1人の女性が乳がんになるということは、「まさか自分が」が、当たり前のようにやってくるということです。ただ、突然その日を迎えるよりも、手術や治療を受けるとどれだけ生存率が高まるか、どのような選択肢があれば働けるか、知識があれば、何かしらその先に光が見えて道が続いていくと思うんです。
乳がんになっても、決して諦めないこと。そして、正しい知識を身につけて、自分にとって最良の判断をしてほしいなと思います。知識がないと、選択も判断もできません。
I'm OK? 編集部:次の誰かのためにと、阿久津さんがご自身の体験を記録・発信していく理由についてお伺いできますか?
阿久津さん:多くの取材対象者は、術後など当時を振り返った取材がほとんどですが、私は自分自身という、告知の時点から記録ができる取材対象者に出会ってしまったわけです。主治医との診察や病院で苦しむシーンなど、今記録しておかないと、二度と撮れないという思いがずっとありました。次の誰かが見たときに、何かヒントになればという強い気持ちのまま、全て記録してきました。
また、正しい知識をどこかに置いておきたいという思いも強くあります。本やインターネットなどの情報溢れる世の中、ネガティブな情報やアルゴリズムによって自分に都合のよい情報ばかり目にすることも少なくありません。間違った情報でないかを判断するためにも、正しい知識や情報が欠かせませんよね。だからこそ、そういうときに私の記録が頼ってもらえる場所であり、発信でありたいと思っています。
I'm OK? 編集部:正しい知識をもつことで正しい情報を選択できることが、自分の今後の治療にもつながっていきますね。
自分の体を知るために、検査が大事な第一歩

I'm OK? 編集部:乳がんは誰にでも起こりうる病気として、知っておくべき心構えや備えておくべきことなどはありますか?
阿久津さん:まず大事なのは、分からないことはきちんと医師に聞くこと。自分自身の体に関する大事なことなので、遠慮する必要はないんです。たとえば検診の際にも、その検査で何がわかるのか、「異常なし」といっても自分の胸の特徴や最適な検診の頻度など知っておくべきことがあるかなど、医師に聞いてみてください。そこからは、大切な知識だけでなく安心感も得られます。
また、り患後であっても、その治療法が選択された理由など、自分が疑問に思ったまま治療を受けるのは一番良くありません。1つ1つ、しっかり納得して進めていってください。
I'm OK? 編集部:検診を結果だけで終わらせず、自分の身体について知ったり、知識を得るきっかけにつなげると。分からないことはきちんと医師に聞く、大切な心構えですね。
阿久津さん:中には「再検査で乳がんが見つかるのが怖くて行かない」「1度行ったからしばらく行かなくていい」と思ってしまう方も一定数いらっしゃいます。
けれども、2年に1回のマンモグラフィ検査が推奨されているのは、この頻度で受けたら死亡率が下がるというエビデンスがあるからこそ。40歳以上の方には必ず受けていただきたいですし、受ける際は、自分の胸がマンモグラフィ検査で見つかりづらいタイプなのか確認していただきたいです。
そして、乳がんは、触って分かる唯一のがんといわれています。早期発見のためには、普段から自分の胸に関心を持つこと=ブレストアウェアネスが重要。自分の普段の調子や正しい状態を知り、いざ違和感があったときに気づけるかどうか。自分の身体に関心をもって大事にすることで、自分の身体の変化に気づけるようにしておきたいです。これが本当の早期発見への本当の第一歩ですね。そして、もし違和感があったらきちんと検査に行くという行動力も大切です。
がんになっても人生は続くからこそ、大事な“備え”

阿久津さん:病気になっても、毎日の生活は続く。実際に手術や通院をすると、それなりの費用もかかります。私は治療を始めて5年が経ちますが、今でも数ヶ月に1回は治療のために通院しています。そのたびに、検査、投薬治療、ホルモン治療の副作用への漢方処方、交通費など、月の医療費も結構かかります。継続的に治療を受けて、今の自分の状態を維持していくためにはある程度のお金が必要。だからこそ、人によってはそこをしっかりカバーできる保険への見直しが必要なこともあるし、突発的にお仕事を辞めてしまうのも踏みとどまってほしい。
I'm OK? 編集部:自分が乳がんだと知って、驚いてすぐに仕事を辞めてしまう人も少なくないんですね。
阿久津さん:そうなんです。「びっくり離職」というそうなんですが、治療も生活も続くからこそ、勢いで辞めないでいただきたい。私が約1ヶ月で仕事に復帰したように、復帰ができる人もいます。自分の治療とバランスをみて、リモートワークを併用するなど、まずは一旦冷静になって将来を考えてみてほしいです。自分が何を優先してどんな人生を生きていきたいか、自分らしい生活を送りながら生きていくにはどんな方法があるのかなど、この先のことを自分でしっかり選んでいくために、ぜひ乳がんに対する正しい知識を持った人が増えたらいいなと思います。
困難があっても、決して1人じゃない

阿久津さん:私は、多くの人に「ひとりじゃないよ」ということを伝えるべく、今の活動を続けています。
乳がんになったからといって全てが終わりではありません。その先に道があって、困ったときに助けてくれる人がいる。だからあなたはひとりじゃないんだよって。この、「ひとりじゃないよ」ということは、乳がん患者だけでなく、育児、介護などで大変な思いをされている全ての方に通ずることだと思います。頼りづらかったり、言えなかったりする中で、どのように「お互い様」にしていくべきか…、と思っていて。支えてもらったから、支える。ありがとうや助け合いの循環が起こる世の中であればいいなと思っています。
I'm OK? 編集部:自分のためでなく、大切な人のために、次の誰かのために、乳がんに対しての考え方や知識の持ち方を改めて見直さないといけないなと思いました。
阿久津さん、本日はありがとうございました。