「乳がん=しこり」じゃない!?乳がんの意外なサイン

PROFILE

1 乳がんは「しこり」だけじゃない!
2 実は見落としがち?乳がんの意外な初期サイン
3 なぜ「しこり」に頼りすぎると危ないのか?
4 胸の変化に気が付いたらどうしたらいい?
乳がんは「しこり」だけじゃない!

I’m OK?編集部:乳がんの話を耳にすると、なんとなく自分の胸を触ってみたりはするのですが、私個人もやはり「しこりがないか探す」という感じになっています。そのたびにしこりのようなものを感じないので、自分は大丈夫だなと安心しているのですが、これは認識として間違っていると思ったほうが良いですか…?
森医師:まず、自分の胸に関心を持つこと自体はとっても良いことです!乳がんはよく「定期的に自分で確認しましょう」と呼びかけがありますよね。日々自分の胸に関心を持つことや、適切なタイミングで検診を受けることなどを「ブレスト・アウェアネス」といいます。ブレスト・アウェアネスの具体的な方法自体はここでは一旦割愛しますが、このブレスト・アウェアネスがまだあまり浸透していません。
ブレスト・アウェアネスでは、確認すべきことはしこりだけではありません。自分の胸に関心を持つことが間違っているのではなく、しこりがないというだけでは乳がんではないと言い切れない、ということです。大きな理由は3つあります。
一つ目はこの記事のタイトルでもあるように、乳がんではしこり以外の症状が出ることがあるからです。そして二つ目は、「しこり」と考えるものに人それぞれ違いがあることです。しこりと聞いたとき、どんな硬さでどんな大きさか、と想像してみてください。その想像には人それぞれ違いがあり、医師にとってしこりといえるものでも、全員がそう考えるとは限りません。たとえばしこりが大きいと、胸の張りのように感じる人もいます。三つ目の理由は、本当の初期だと自分で触ってわかる、見てわかる、という状態ではない可能性があります。定期的に自分で確認していても、乳がん検診でしか発見できない乳がんがあることを覚えておいてほしいですね。
I’m OK?編集部:病院は何か異常や変化があれば行くものという意識もありますが、それじゃダメということですか?
森医師:通常の受診はそうですよね。でも、検診はそれじゃダメです!乳がんに限らず、検診と一般的な病院の受診は別物だと考えてください。検診は異常があったから行くものではなく、異常がないかを確認するためのもの。「40歳になったら2年に一度のマンモグラフィ検診受診」というガイドラインがありますが、これは自分で気になることがなくても行ってください。また、自分で気になる症状がある場合でも、「3カ月後に検診の予定があるから」とそのときまで受診を待ってしまう人がいますが、これも注意が必要です。
自分で何かしらの胸の変化を感じたら、まずは検診を待たずに乳腺外科医を受診するようにしてください。
▼ブレスト・アウェアネスの詳細はこちらの記事でご確認ください。
ブレスト・アウェアネスってなに?自分のために習慣化したい「健康のためのバストケア」
実は見落としがち?乳がんの意外な初期サイン

I’m OK?編集部:実際、乳がんの初期サインとしてしこり以外のものにはどんなものがありますか?

画像引用:公益財団法人 日本対がん協会
森医師:乳がんでは、しこり以外にも次のような初期症状が現れることがあります。
● 乳頭の陥没、分泌物、湿疹状の変化
● 皮膚のくぼみ・ひきつれ・赤み・硬さなど
● 腕のむくみ、リンパの腫れなど外見的変化
森医師:それから、小葉がんと言われるものは広範囲のがんなので、一部がしこりのように硬くなるというより、胸全体が硬くなるというイメージです。また、先ほどお伝えしたように、芯はあるけど周りがやわらかいものや、特定の乳腺の周りが硬くなるものだと「しこり」という印象と異なるものが多いように感じます。胸の形自体が変形している場合や全体の硬さが違うというような、広範囲な変化は見落とされやすい傾向にあります。部分的にしこりを探すのではなく、全体を見て、いつもと違いがあるかどうかというのが重要です。
なぜ「しこり」に頼りすぎると危ないのか?

I’m OK?編集部:実際には、しこりがない乳がんも多いということですか?
森医師:しこりとして症状が現れるものが多いのは事実です。ただし、それだけではないので、しこりがあるかどうかだけを基準にしてほしくない、ということ。しこりにならないものもあれば、しこりとしてわかりにくいものもあります。日頃から自分で確認していたけれど変化に気が付かなかった人でも、乳がん検診で乳がんだとわかったあとに触ってみると「言われてみれば違う」と感じることもあります。
I’m OK?編集部:確かに、日頃から自分の胸の状態を知っていないと、そもそも変化に気が付くこと自体難しそうですね。
森医師:私たち医師は、日々乳がんの女性の胸に触れているのでわかりやすいですが、そうでない人には特に難しいはずです。早期発見で多くの人が治る病気だからこそ、しこり以外の乳がんでもなんとか早く気が付きたいんです。そう考えると、しこりの有無だけを参考にするのではなく、他の変化にも目を向けて、乳がん検診もしっかり受診してほしいです。
I’m OK?編集部:逆に、検診を受けていれば十分ということでもないんですか…?
森医師:はい、残念ながら十分とは言い切れません。乳がん検診にも種類があり、マンモグラフィで見つけやすいがんもあれば、乳腺超音波(エコー)検査で見つけやすいがんもあります。また、2年に一回の検診が推奨されていますが、稀に検診と検診の間に成長する中間期がんというものもあります。また、鎖骨の下、みぞおちといった脂肪の薄い部分、いわゆるブラジャーのワイヤーが当たるような部分は検診ではみつかりにくい部分です。日頃からそういう場所を触ったり観察したりする習慣をつけておくことも忘れないでください。
胸の変化に気が付いたらどうしたらいい?
I’m OK?編集部:では、いつもと違う胸の変化に気がついたらどうしたら良いですか?
森医師:しこりだったら、とにかくすぐに受診してください。そのほかの症状の場合はホルモンの影響も大きいので、痛みがなければ次の生理を待ち、それでもおさまらないようであれば受診してください。
胸の変化で気になることがあれば、乳腺外科医がいる病院を受診するのがお勧めです。たまに、乳がんかもしれないという不安が負担になり、逆に受診を避けてしまう人がいます。でも、しこりがあるからといって乳がんだとは限らず、もちろん胸の病気にも乳がん以外のものもあります。どんな不調でも早期に気が付くに越したことはないので、まずは乳腺外科医に相談してみてください。