医師に聞きたい!「乳がんになりやすい人」っているの?

PROFILE

1 乳がん、「他人ごと」ではありません
2 「乳がんになりやすい人」って、どんな人?
3 【チェックリスト】あなたは大丈夫?乳がんリスクを自分で確認
4 乳がんリスクに対する勘違い、ここに気を付けて!
5 生活習慣がカギ!乳がんリスクを下げるためにできること
乳がん、「他人ごと」ではありません
国立がん研究センターがん情報サービスのがん統計によると、日本人女性は約9人に1人が乳がんになることがわかっています。日本人女性がり患するがんの中で最も多いのが乳がんですが、一方で早期発見で90%以上が治る病気だということも乳がんの特徴です。

出典元:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
また、乳がんは年齢にも相関性があり、35歳から徐々に増え始め、40代以降での発症が増加します。15歳~39歳ののAYA世代といわれる若年層での発症は乳がん全体の5%程度。しかしこれは「若いから乳がんにならない」というわけではなく、「少ない可能性ではあるものの若くてもなる病気」だということです。女性であれば誰しもがり患する可能性がある病気だからこそ、早期発見のためには正しい知識を持つことが重要といえます。
「乳がんになりやすい人」って、どんな人?

I’m OK?編集部:乳がんにはなりやすい人、なりにくい人というのがいるんですか?
大井医師:はい。一部の乳がんは遺伝性であることがわかっています。そのため、親や兄弟、姉妹、祖父母、叔父叔母といった近親者に乳がん経験者がいる場合、そうでない人よりも乳がんのリスクが高いと考えられます。
I’m OK?編集部:もちろんそうでなければ乳がんにならない、というわけでもないのはわかるのですが、リスクという意味では遺伝以外にはありませんか?
大井医師:実は遺伝以外にも生活習慣や環境的要因と考えられているものがあります。特に下記に該当する場合、そうでない人と比較すると乳がんのリスクが高いといえます。
● 初潮年齢が早い・閉経年齢が遅い
● 出産・授乳歴がない
● ホルモン補充療法(HRT)の経験
● 肥満・過度な飲酒・運動不足
大井医師:初潮年齢や閉経年齢、出産・授乳というのはつまり、生理の回数が多いということとほぼ同じ意味だと考えてみてください。生涯を通して生理の回数が多い人のほうが乳がんになりやすいということです。
I’m OK?編集部:なるほど!初潮が早い、閉経が遅い人は生理の回数が多いし、妊娠中も生理が来なくなるので、生理の回数が変わってくる。わかりやすいですね。生理の回数が多いことがよくないんですか?
大井医師:すべての原因が明らかになっているわけではないのですが、乳がんの中には、女性ホルモンが影響するものがあると考えられています。
【チェックリスト】あなたは大丈夫?乳がんリスクを自分で確認

I’m OK?編集部:チェックが多ければ多いほど、リスクが高いということになりますね。でも、遺伝ももちろんですが、生理の回数とか妊娠とかって自分でどうすることもできないですよね…?
大井医師:そうですね。もちろん、乳がんのリスクを下げるために妊娠する、ということでもありません。当然闇雲に恐れてほしいということでもなく、普段患者さんには、人より少し気を付けておいてほしいというお話をしています。
たとえば、家族に乳がんの人がいるのであれば、その人が乳がんになった年齢から10歳マイナスした頃からの検診受診を推奨しています。つまり、45歳で乳がんがわかった人が家族にいる場合は、35歳からの乳がん検診受診が推奨されているということです。ただし、年齢によって推奨できる検診には違いがあるので、家族に乳がんの人がいる場合は、若くても一度乳腺外科を受診して、医師と一緒に検診プランを立てるというのがお勧めです。かかりつけの乳腺外科医を持つという意味でも、とても良いです。
それから、日頃から自分で体の変化に目を向ける意識を持つということも重要。ブレスト・アウェアネスの習慣をつけるようにしましょう!
▼ブレスト・アウェアネスの詳細はこちらの記事でご確認ください。
ブレスト・アウェアネスってなに?自分のために習慣化したい「健康のためのバストケア」
乳がんリスクに対する勘違い、ここに気を付けて!

I’m OK?編集部:実際には、このリスクというのはどのぐらいのものなんですか…?
大井医師:乳がんのリスクは家族歴がある人の場合、そうでない人に比較すると1.5~2倍ほど高くなると考えられます。それ以外の生活習慣などは、その人の環境や体質なども複雑に絡み合ってくるので、数字として明確にこれぐらい、というのは出せないのですが、明らかにリスクが高い傾向があるのはわかっている、ということになります。
I’m OK?編集部:例えば、年齢も若いしリスク因子も該当しなければ乳がんにはならないということですか?
大井医師:違います!遺伝性の乳がんは、乳がん全体の中でも7~10%です。これは、乳がんの家族がいれば必ず乳がんになるわけじゃないことはもちろん、乳がんのほとんどは遺伝によるものではないことを表しています。
生活習慣がカギ!乳がんリスクを下げるためにできること

I’m OK?編集部:では、乳がんのリスクを下げるために自分でできることというのは何がありますか?
大井医師:具体的にこの食べ物がだめ、こういう生活がだめ、ということを定義づけるのは難しいです。明確に言えるのは、喫煙はリスクでしかないということ。量の問題ではないので禁煙をお勧めします。でもアルコールであれば大量飲酒でなければリスクにならないこともある。たとえば外食やお友達と一緒のとき以外はやめておく、など、メリハリをつけるようにしましょう。ストレスも乳がんを始めすべての健康にとって良くないことがわかっているので、不安になりすぎたり神経質になりすぎるのも考えものです。たとえば肥満にならないように適正体重を意識して運動や食事をするなど、無理をするのではなく、自分の負担にならないように生活習慣を整えるのは、乳がんだけでなくあらゆることに良い影響が出る健康活動だと思って取り組んでみてください。
I’m OK?編集部:そのほかに、特に40代未満の若い女性にも意識してほしいことはありますか?
大井医師:行政の検診対象に入らない世代の方ですね。この世代の方でも、リスクのある方は、若くても乳癌検診を受けるか、気になる症状があるなら乳腺外科外来を受診しましょう。そして、リスクに該当しなくても、絶対に乳がんにならないというわけではありません。初潮がきた年齢から、ブレスト・アウェアネスの習慣をつけ、自分の胸に変化があればまずは病院に行く。自分の体を守る習慣として、必要な備えだと考えてほしいです。