PMSが理解されない悩みを解消!職場や夫との関係に支障を出さない
PROFILE
1 PMSに関する社会的な実情
2 理解されにくいPMSに対するセルフケア方法
3 【対象別】PMSを理解してもらう方法
4 PMSを乗り切る働き方
5 PMSで悩む人によくある疑問
6 周囲の理解を得るためにはまず自身の知識を深めることが大切
PMSに関する社会的な実情
周囲にPMSの理解を求める際には、どのくらいの女性が経験しており、どのくらいの女性が我慢しているかを把握しておくことも大切です。PMSのつらさは、認知度が高いほど理解されやすいでしょう。しかし、PMSの認知度は男女で差があるようです。
PMSの経験者は84.0%
独立行政法人労働者健康安全機構の調査では、PMSを自覚している女性が84.0%だったことがわかっています。自覚している症状は「イライラ」が45.7%で最も多く、「胸の張り」と回答した人も42.6%いました。
自覚した症状 | 割合 |
---|---|
イライラ | 45.7% |
胸の張り | 42.6% |
食欲増加 | 40.4% |
下腹部痛 | 35.2% |
だるさ | 33.4% |
※出典元:独立行政法人労働者健康安全機構
また、跡見学園女子大学の「文学部紀要第43号」によると、PMSのうち、PMDDの基準を満たした人の割合は5.9%だったことがわかっています。
PMSを経験する女性は多いため、周囲が女性であればつらさを理解してもらえる可能性が高いでしょう。
PMSで約半数の女性が困難な状況
厚生労働省の調査によると、47.8%の女性がPMSまたはPMDDで困難な状況に陥っていることがわかっています。
PMS/PMDDによる困難度 | 割合 |
---|---|
高 | 47.8% |
中 | 23.5% |
低 | 28.7% |
同調査では中程度の困難を感じている女性も23.5%おり、多くの女性が心身の健康に何らかの支障を来している状況です。
また、PMSやPMDDの症状が出たときの対処法として、市販薬の服用や病院の受診と回答した女性も一定数いました。その一方で、症状が出ても我慢していると回答した女性が38.5%だったこともわかっています。
PMSやPMDDの症状が出たときの対処法 | いつもしている | たいていしている | あまりしていない | 必要性を感じているが全くしていない | 必要性を感じず全くしていない |
---|---|---|---|---|---|
症状が出ても我慢している | 18.1% | 20.4% | 13.0% | 8.7% | 39.8% |
市販の痛み止めを服用している | 12.9% | 13.6% | 14.0% | 9.3% | 50.2% |
医療機関(婦人科等)を受診している | 4.7% | 4.6% | 9.6% | 18.6% | 62.5% |
医療機関(婦人科等)で処方された痛み止めを服用している | 4.7% | 4.0% | 8.6% | 15.7% | 67.1% |
その他 | 46.2% | 7.7% | 3.8% | 3.8% | 38.5% |
※出典元:厚生労働省
同調査からは、PMSやPMDDによる症状で困難を感じていても、我慢する女性が多いことがわかります。
PMSの認知度は男女で約5割違う
福岡市の「健康課題等と仕事の両立に関する事業所等実態調査」では、PMSの認知度に男女差があることがわかっています。PMSの認知度は女性が約80%、男性が約20%でした。PMSは最近注目される機会が多いものの、男性の認知度は低いのが現状です。
また、PMSの症状が女性の仕事に悪影響を及ぼしていることを知っている人は、全体で4割でした。一方で男性の回答は2割にとどまり、仕事のパフォーマンスへの影響を知る人はわずか1割でした。
PMSの症状のつらさや仕事への影響を周囲に理解してもらうためには、男性の認知度を高めることも重要です。
※出典元:福岡市
理解されにくいPMSに対するセルフケア方法
PMSの症状の出方や感じ方は人によって異なるため、女性を含めて周囲の理解を得るのが難しい側面もあります。セルフケアによって症状が改善されると、周囲からの理解を得られないことにモヤモヤしにくくなる可能性もあります。
PMSへの自身の理解を深める
PMSの原因ははっきりとわかっていませんが、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが関係していると考えられています。黄体期に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが低下することで、下腹部痛をはじめとする諸症状が出るとされています。
PMSは、生理前の3~10日程度の期間に表れるのが一般的です。この期間に不快な症状が出た場合は、PMSの可能性が高いでしょう。体調不良の原因がPMSだとわかると、原因が不明なときより不安を軽減できます。
また、PMSの症状が出る時期は、基礎体温で把握することが可能です。生理周期には、卵胞期・排卵期・黄体期・生理の4つがあります。基礎体温は、黄体期に高くなることが特徴です。基礎体温が急に高くなる時期がわかれば、PMSに備えられます。
PMSの相談先
自身のPMSの症状が気になる場合は、医師に相談するのも手段の一つです。PMSに関する主な相談先は、次のとおりです。
●婦人科
●心療内科
●漢方科
婦人科は、PMSをはじめとする女性特有の症状に対応しています。PMSだと思っていた症状は、子宮や卵巣の病気によるものかもしれません。婦人科では、病気も含めて総合的に診断してくれます。
PMSは、イライラや不安等の精神的な症状を来すことがあります。心療内科では、精神的な症状を和らげるアドバイスをしてもらえるでしょう。必要に応じて、抗うつ薬や向精神薬等が処方されることもあります。
漢方科とは東洋医学に基づき、自然治癒力を高める治療をしている診療科です。漢方薬は草や木等の自然由来のものを原料としているため、副作用が出にくいといわれています。
食事を見直して症状の改善
PMSの諸症状は、栄養バランスが偏った食事が影響していることがあります。基本的には、栄養バランスが取れた食事を心がけることが大切です。症状の改善が期待できる主な栄養素は、次のとおりです。
症状 | 栄養素 | 理由 |
---|---|---|
食欲増加 | ●食物繊維 ●豆類 ●いも類 等 | 血糖値の急上昇をおさえられる |
情緒不安定 | ●ビタミンB6 ●カルシウム ●マグネシウム ●イソフラボン ビタミンE 等 | 神経の緊張や興奮を鎮める効果が期待できる |
頭痛・腰痛・むくみ | ビタミンE | 体の代謝を促す |
チョコレートや果物等の「単一炭水化物」は、血糖値を急上昇させやすいため、「複合炭水化物」を積極的に取るようにしましょう。食欲増加を抑えるためには、一度に摂取する食事の量を減らし、小分けにする方法もあります。
ビタミンB6やカルシウム、マグネシウムを積極的に摂取すると、情緒不安定を軽減できます。ホルモンバランスを整えるために、女性ホルモンに類似した働きがあるイソフラボンを摂取すると良いでしょう。
頭痛・腰痛・むくみの症状が出る場合、体内の水分を溜めやすくなる塩分の摂取を控える必要があります。ビタミンEには利尿作用があるため、乾燥豆や木の実等のビタミンEを多く含む食べ物を摂取しましょう。
自身に合ったストレス解消を実施
強いストレスは、PMSの症状を悪化させる可能性があります。生理前には、セロトニンの分泌量が減少します。セロトニンとは、精神の安定を促す作用がある神経伝達物質のことです。
セロトニンの分泌量が少ないうえに、家庭や仕事等によるストレスが重なると、イライラしたり落ち込んだりしやすくなります。ストレスが原因のPMSを軽減させるためには、自身に合った解消法を見つけることが大切です。
ストレスの解消につながる主な方法は、次のとおりです。
●アロマテラピー
●半身浴
●日光浴
●ウオーキング
●ヨガ
●ストレッチ 等
半身浴は体を芯から温められ、血行不良によるPMSの症状が出るのを抑えられます。入浴にはリラックス効果もあるため、体や脳の疲れをとり、寝つきが良くなる可能性もあります。
また、アンガーマネジメントと呼ばれる方法でストレスを軽減するのも選択肢の一つです。アンガーマネジメントは怒りをうまくコントロールしていく方法で、アメリカの心理教育にも取り入れられています。アンガーマネジメントによって負の感情をコントロールできるようになれば、ストレスが溜まりにくくなるでしょう。
無理をしないでリラックス
PMSの症状が強いときには、決して無理をしないようにしましょう。症状は人によってさまざまですが、胃痛や動悸、めまい等が出ることもあります。症状がつらいときには無理をせず、楽な姿勢をとりましょう。
体を丸める姿勢をとると腹部が温まるため、痛みが軽減することがあります。うつぶせや体育座り等、自身がリラックスできる姿勢を探してみましょう。PMSの症状が出たときには、いつも以上にリラックスを心がけることが大切です。
リラックスする際には、アロマテラピーを楽しんだり、ハーブティーを飲んだりするのも良いでしょう。香りは自律神経やホルモン、感情を司る機能に働きかけ、さまざまな不調を和らげる効果が期待できます。
市販薬で症状の緩和
痛みや不快感が気になる場合、市販薬で症状を和らげる方法もあります。近年は生理痛だけでなく、PMS向けの市販薬も販売されています。PMSの症状には、身体的症状と精神的症状の2種類があります。
市販薬によって効能が異なるため、自身の症状に適したものを選びましょう。市販薬の中には、副作用が少ない生薬由来の成分が配合されたものもあります。PMS向けの市販薬は、薬局やドラッグストア、通販サイトで購入可能です。
薬局やドラッグストアには薬剤師が常駐しているため、市販薬選びに迷ったときには気軽に相談してみましょう。市販薬に関する相談は、「全国のくすり相談窓口」でも受付けています。
※出典元:独立行政法人医薬品医療機器総合機構
【対象別】PMSを理解してもらう方法
身近な人にPMSのつらさを理解してもらえず、悩んでいる女性も多いでしょう。公的データからは、PMSを経験する女性は多いものの、認知度はまだ低いことがわかっています。そのため、PMSへの理解を求めるために自身から行動を起こすことも必要となるでしょう。
親・夫・彼氏に理解してもらう場合
両親や夫、彼氏等の身近な人にPMSのつらさをわかってもらうためには、まずは自身が正しく理解することも大切です。PMSが起こる仕組みや原因等に理解を深め、第三者に説明できるほどの知識を身につけましょう。
医学的な根拠を示しながら説明すると、相手に理解してもらいやすくなります。PMSに関する情報は、ネットに掲載されている医療記事でも入手可能です。自治体によっては、PMSに関する無料セミナーを開催しています。
近年はPMSへの注目が高まっているため、さまざまな書籍が出版されています。PMSに関する知識をうまく伝えられない場合は、相手に書籍を読んでもらうのも良いでしょう。
職場で理解してもらう場合
PMSの症状がつらいときには、職場に理解してもらうことも大切です。なぜなら、PMSの痛みや不快感により、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすこともあるからです。PMSへの理解がある職場なら、安心して働くことができるでしょう。
職場におけるPMSの相談先は、産業医や人事部です。従業員が50人以上の職場では、産業医による健康管理が義務づけられています。直属の上司に理解をしてもらえないときには、人事部に相談し、対策を検討してもらいましょう。
PMSは女性特有の症状なので、男性従業員の理解を得るのは簡単ではないかもしれません。しかし、職場環境を改善するためには、男性従業員を巻き込むことも重要です。
PMSを乗り切る働き方
近年は働き方に対する価値観の変化により、結婚や出産後も働き続ける女性が増えています。しかし、PMSの症状がつらいときでも、無理をしてしまう女性も少なくありません。働きながらPMSを乗り切るためには、働き方の見直しも必要です。
テレワークやフレックスタイム制の適用を相談
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、テレワークを導入する企業が増えました。テレワークはオフィス出社が不要なので、職場でPMSの理解が得られないことによる、周囲との関係悪化を避けられます。
テレワーク導入企業でも、月間や週間でテレワーク可能日数に制限があるケースもあるでしょう。PMSの症状が重たくなる日数の傾向などがつかめれば、PMSのために計画的にテレワークのスケジュールを組むのがおすすめです。
フレックスタイム制は、始業時間や就業時間を調整できる自由度の高い働き方です。PMSの症状が落ち着いている時間帯を選んで仕事をすれば、周囲を気にせずに働けるでしょう。ただし、フレックスタイム制は対象の従業員や職種が限られているケースもあるため、事前に確認が必要です。
生理休暇で仕事を休む
PMSの症状がつらいときには、生理休暇を取得して休養するのも手段の一つです。労働基準法では生理休暇が定められており、症状によって働くことが難しい場合は、労働者の権利として休暇を取得できます。
生理休暇は正社員だけでなく、契約社員やパート従業員等の非正規労働者も対象です。就業規則に記載されていなくても、女性であれば誰でも取得できます。ただし、労働基準法では、生理休暇を有給にするか無給にするかは定められていません。
有給になるか無給になるかは企業によって異なるため、事前に確認が必要です。また、生理休暇は、基本的に生理日に働くことが難しい女性が取得できる制度です。PMSの症状は生理前に出るケースが多いため、生理休暇に該当しない可能性もあります。
PMSで悩む人によくある疑問
最後に、PMSで悩む人によくある疑問を紹介します。
体調不良の原因は本当にPMS?
生理をはじめとする女性ホルモンが原因の体調不良は、必ずPMSだとは限りません。PMSに類似した症状には、月経困難症や更年期障害があります。自身ではPMSだと思っていても、実は類似した別の疾患だったという可能性もあります。
月経困難症とは、下腹部痛をはじめとする症状が生理中に表れる疾患です。更年期障害とは卵巣の働きの低下によって起こる疾患で、必ずしも生理前や生理中に症状が出るとは限りません。
更年期と呼ばれる年代でなくても、その前の30代後半~40代前半のプレ更年期に同様の症状が出ることがあります。また、PMSに類似した症状でも、子宮筋腫や子宮内膜症のように疾患が隠れていることもあるので注意が必要です。生理前の症状がPMSに当てはまっても自己判断せず、病院を受診しましょう。
PMSは完治できる?
PMSは、10代後半~40代後半をメインに発症するといわれています。症状は、年齢とともに生理の回数を重ねることで強くなる傾向があります。しかし、閉経を迎えると生理がなくなるため、PMSの症状は治まるのが一般的です。
病院を受診した場合、生活習慣の改善と薬剤の併用で完治を目指します。薬物療法では、低用量ピルや漢方薬等が使用されます。頭痛や腹痛の症状が強いときには、アセトアミノフェンやNSAIDs等の鎮痛剤が使用されることも少なくありません。
症状が重度でコントロールが不能な場合、最終手段として手術で両側の卵巣を摘出することもあります。卵巣を摘出すれば生理周期がなくなるため、PMSによる諸症状の改善が期待できます。
周囲の理解を得るためにはまず自身の知識を深めることが大切
PMSは生理に付随する症状なので、男性から理解を得るのは難しいかもしれません。症状の出方や感じ方も人によって異なるため、同じ女性でもつらさを理解してもらえないことがあります。
周囲の理解を得るためには、まず自身が自発的に動くことが大切です。PMSに関する知識を深めたうえで、理解してもらいたい相手に説明してみましょう。医学的根拠がある説明であれば、相手を納得させられる可能性があります。
PMSの症状がつらく仕事が難しいときには、テレワークやフレックスタイム制、生理休暇等を積極的に活用するのも手段の一つです。今は同僚や上司からの理解が乏しくても、各種制度を当然のように活用できる未来が訪れれば、女性の労働環境の改善につながります。