妊娠初期に腹痛が起こる原因は?注意したほうが良いケースや対処法について解説
PROFILE
1 妊娠初期の腹痛の症状
2 妊娠初期の腹痛の原因や時期
3 妊娠初期の腹痛で注意した方が良いケース
4 妊娠初期の腹痛の対処法
5 妊娠初期の腹痛を防ぐために控えたい食べ物
6 妊娠初期に起こる腹痛の原因を見極めよう
妊娠初期の腹痛の症状
まずは腹痛が心配のいらない生理的なものか異常なものかを判断するために、妊娠初期に起こりやすい腹痛の症状について解説します。起こりやすい痛みの症状は、次のとおりです。
● 下腹部にチクチクやズキズキする痛み
● 下腹部に規則性のある収縮するような痛み
● おなかをこわした時のような痛み
● 胃の付近に圧迫感のある痛み
● 鋭い痛みや増していく痛み
自己判断ができない場合や不安な場合は、すぐに病院を受診するか電話で確認しましょう。
下腹部にチクチクやズキズキする痛み
赤ちゃんの成長にあわせて子宮も少しずつ大きくなるため、子宮の組織や子宮を支えている周りの靭帯が伸びて、下腹部にチクチクとした痛みやズキズキとした引きつるような痛みが生じることがあります。
子宮の成長による痛みは、急に体を動かしたり、体を捻る動きをしたりする際に起こりやすいです。痛みを感じるポイントは子宮全体ではなく、左右どちらかであるケースが多く報告されています。
安静にして痛みがすぐにおさまるようであれば心配はいりません。痛みが我慢できないほど強くなってきた場合は、他の原因が考えられるため主治医に相談しましょう。
下腹部に規則性のある収縮するような痛み
生理痛に近い痛みや子宮が少しだけチクっとするような痛みを感じる場合は、着床の刺激によって子宮内膜が傷つき収縮が起こっている可能性があります。着床痛と呼ばれることもありますが、医学的な根拠はありません。
着床による子宮収縮の痛みの程度には個人差があるため、まったく感じない人もいます。痛みがあっても不安になる必要はありません。ただし出血や鈍痛が続くようであれば受診を検討しましょう。
おなかをこわした時のような痛み
子宮ではなく、腸にガスが溜まったりギュルギュルと腸が動く音が聞こえたりする場合は、便秘や下痢によりおなかの痛みが発生していると考えられます。
原因は妊娠すると黄体ホルモンが分泌されるため、腸の動きが鈍くなって便秘になりやすくなるからです。また、ホルモンバランスの急激な変化により自律神経が乱れて下痢になってしまう人もいます。体質によっては便秘と下痢を繰り返す人もいるでしょう。
妊娠初期の下痢で気をつけたいのが、発熱や嘔吐の症状がある場合です。食中毒やウイルスが原因で腹痛が起きている可能性があるため、すぐに病院を受診してください。自己判断で市販薬を飲むことは避けましょう。
胃の付近に圧迫感のある痛み
みぞおちに下から押されるような苦しさを感じる場合は、子宮が大きくなることによって胃が圧迫され痛みが生じている可能性があります。胃が圧迫されると消化能力が低下するため、食後は胃痛を感じやすくなるでしょう。
また、つわりによる偏食によって胃に負担がかかる場合もあります。嘔吐によって胃酸が逆流し、胃や食道に痛みが発生することも多いです。妊娠のストレスで自律神経が乱れて胃痛を引き起こす場合もあります。
妊娠初期の胃痛で病院に行く目安は、食後にみぞおちが痛んだり、吐血や下痢を繰り返す場合です。痛みが我慢できないほど辛い場合は、我慢せずに病院に相談しましょう。
鋭い痛みや増していく痛み
安静にしていてもおなかの痛みが強くなっていく場合や、大量に出血している場合は危険な状態であると判断できます。冷や汗をかくほどの鋭い痛みはあきらかな異常です。流産や子宮外妊娠の可能性も否定できないので、早急に病院へ向かってください。
また、途中で容体が悪化して倒れる可能性もあるので、一人でいくのは危険です。タクシーを利用するか、家族に連絡して病院まで送ってもらいましょう。
妊娠初期の腹痛の原因や時期
妊娠初期はなぜ腹痛が起こりやすいのでしょうか。腹痛が起こる3つの原因や、いつ頃まで続くのかについて解説します。
妊娠初期の腹痛の原因は?
妊娠初期に腹痛が起こる原因として、次の4つがあげられます。
ホルモンバランスの乱れ
● 精神的なストレス
● 子宮の大きさの変化
● 切迫流産の症状
腹痛の原因を詳しくチェックしていきましょう。
ホルモンバランスの乱れ
妊娠すると、子宮に栄養や水分を蓄えるために必要なプロゲステロンという黄体ホルモンが分泌されます。黄体ホルモンの分泌がピークに達するのは妊娠8〜12週頃です。黄体ホルモンが分泌されると、水分の代謝能力が低下し腸の動きも悪くなります。
腸管の動きが悪くなると消化不良による下痢や便秘が起こりやすいです。腸内環境の悪化によりガスが発生すると下腹部に痛みやハリを感じるようになります。
精神的なストレス
妊娠の不安によるストレスが大きいと、自律神経が乱れて消化器官の動きが弱くなります。ストレスも下痢や便秘の原因になりやすいです。また、ストレスによって交感神経が優位になると胃酸の分泌が活発になり、胃痛を引き起こすこともあります。
妊娠初期に限らず、妊娠中はホルモンバランスが乱れやすく、普段よりもストレスを感じやすい状態です。ストレスが多いと痛みの感じ方も大きくなってしまうでしょう。
子宮の大きさの変化
子宮は胎児の大きさにあわせて収縮を繰り返しながら引き伸ばされていきますが、この収縮には痛みも伴います。また、子宮が大きくなると子宮を支える靭帯も伸びるため、引きつったような痛みが生じやすいです。
さらに、大きくなった子宮は周りの臓器にも負担をかけます。胃や腸が圧迫されて痛みを感じることもあるでしょう。
切迫流産の症状
切迫流産というのは流産を念頭において治療に当たる必要がある人であり、体内に胎児がまだ残っている状態。流産してしまっているというわけではありません。腹痛や出血が認められますが、安静にする以外の対処法はなく、特に妊娠12週目までの切迫流産に対しては、予防に効果的な薬剤はないと考えられています。
妊娠初期の腹痛はいつまで続く?
妊娠初期に起こる腹痛の症状は、妊娠4カ月にあたる16週頃に落ち着くケースが多いです。特に妊娠20週以降はエストロゲンと呼ばれる卵胞ホルモンが優位になるため、メンタルの不調によるストレスの蓄積が改善されやすくなります。
ただし、妊娠中期以降も子宮が大きくなるため、周囲の内臓に負担がかかる状態は継続されます。一度は腹痛がおさまっても他の原因によって痛みだすことも多いです。妊娠中は週数にかかわらず、腹痛が起きやすい状態であることを把握しておきましょう。
妊娠初期の腹痛で注意した方が良いケース
妊娠初期の腹痛だからといって甘く見るのは危険です。状況によってはすぐに産婦人科を受診した方が良いケースもあります。
● 強い痛みが続く
● 出血を伴う痛み
● 発熱や吐き気、嘔吐等の他の症状を伴う
● 規則的な痛みがある
このような症状がある場合は、体に異常が起きていると判断できます。痛みがおさまるまで様子を見ずにすぐ病院へ連絡しましょう。
強い痛みが続く
強い痛みで就寝中に目が覚めてしまったり、冷や汗をかくほど強い腹痛が続いたりしている場合は、流産の可能性が考えられます。様子を見ずにすぐ医療機関で受診しましょう。流産の場合は激しい子宮収縮が起こるため、我慢できないほどの痛みが兆候としてあらわれます。
なお、初期に起こる流産の原因は遺伝性疾患や先天性異常等、赤ちゃん側にあることがほとんどです。仕事や運動が原因で流産になることはほぼありません。また、流産は妊娠全体の15%前後の確率で起こる可能性があります。
出血を伴う痛み
下腹部痛の他に性器からも出血している場合は、切迫流産の可能性があるので注意してください。切迫流産の出血は、絨毛や胎盤の部分的な剥がれによって起こります。正常妊娠への回復が可能なため、出血がある場合はなるべく早めに受診しましょう。
また、子宮外妊娠の場合も少量の出血や軽度の下腹部痛があります。ただし、自覚症状だけで子宮外妊娠だと判断することはできません。病院でエコーを受けて、切迫早産なのか子宮外妊娠なのかを診断してもらう必要があります。
妊娠初期の出血は胎盤が完成する過程でも起こりますが、安易な自己判断は危険です。出血が止まらなかったり、出血量が多かったりする場合は迷わず受診してください。出血量が少なくても不安な場合は迷わず医師に相談しましょう。
発熱や吐き気、嘔吐等の他の症状を伴う
妊娠初期は高温期が続くため平熱より少し高い程度なら心配はいりませんが、38度を超える発熱の場合は、体に異常が起きていると考えて間違いないです。風邪を引いている可能性があるため、こじらせる前に医療機関で受診しましょう。
吐き気や嘔吐の症状がある場合はつわりと勘違いしやすいですが、水分が取れないと脱水症状になってしまいます。消化管の感染症である胃腸炎の可能性も否定できないので、早急に医師の診断を受けてください。
規則的な痛みがある
規則的な感覚で痛みが引いたり強まったりする場合は、切迫流産の可能性があります。出血がないからといって流産しないわけではありません。いつもと腹痛の感覚が異なる場合は、切迫流産や流産の可能性を疑いましょう。
また、妊娠初期の腹痛で子宮筋腫が見つかる場合もあります。子宮筋腫があることが問題になるケースは多くありませんが、位置や大きさによっては妊娠に影響があるので注意してください。信頼できる医師と相談しながら治療を行いましょう。
妊娠初期の腹痛の対処法
出血や強い痛み、吐き気や熱等の心配な症状がなければ、自宅で様子を見てもかまいません。腹痛を解消する対処法は、次のとおりです。
● 休息をとる
● 体を温める
● 水分をとる
ここからは、妊娠初期に腹痛がある場合の対処法について詳しく解説します。なお、痛み止め等の薬を自己判断で飲むのはやめてください。薬を使用したい場合は、必ず医師に相談してからにしましょう。
休息をとる
腹痛を感じたときは動き回らずに安静にしているのが一番です。おなかに負担がかかってしまうので、重いものを運んだり走ったりするのは絶対にやめてください。体を横にして楽な姿勢を取りましょう。
腹痛がおさまったからといってすぐに起き上がるのは避けましょう。腹痛があった日は、作業や家事を再開せずにゆっくり過ごしましょう。
体を温める
冷えて体の血流が悪くなることにより痛みが強くなっている可能性があるため、体を温めるのも効果的です。特に手足は冷えやすいのでアームウォーマーやレッグウォーマー、使い捨てカイロ等を活用してしっかり保温しましょう。腹巻きで子宮や骨盤周りを温めることも腹痛予防に効果があります。
体を内側から冷やさないために、冷たい飲み物やスイーツは控えて体を温める食べ物を積極的にとることも大切になります。体を温める効果のある食材は、次のとおりです。
● 生姜
● 根菜
● 発酵食品
● 芋類
また、お風呂はシャワーだけで済ませるのではなく湯船に漬かることも大切です。リラックス効果によりおなかの痛みが和らぐこともあります。
水分をとる
妊娠初期はつわりで思うように食事がとれず、水分が不足しがちになります。水分摂取量が少ないと便秘による腹痛が起こりやすいので、1日トータル2リットルを目標にしてこまめに水分補給を行いましょう。
ただし、冷たい水は体の冷えを助長させてしまうため控えてください。常温の水か白湯が妊娠中の水分補給に適しています。水分をたくさんとっておなかに溜まった便を柔らかくし、スムーズな排便を促しましょう。
妊娠初期の腹痛を防ぐために控えたい食べ物
適切ではない食生活も妊娠初期の腹痛の原因になります。腹痛を起こしやすい食べ物は、次のとおりです。
● 加熱処理がされていない食品
● 香辛料やスパイス
● カフェインを多く含む飲み物
● ハーブティー
妊娠初期に食中毒や子宮の収縮による腹痛を引き起こさないために、避けた方が良い食べ物と飲み物について詳しく解説します。
熱処理がされていない食品
火を通さない生ものを食べると食中毒になる可能性があります。妊娠中は熱処理がされていない以下のような食品は、食中毒予防のために控えるようにしてください。
● 刺身
● 寿司
● 魚卵
● 鶏卵
● 生ハム
● ユッケ
● ナチュラルチーズ
● 未殺菌乳
生ものにはトキソプラズマやリステリア菌、サルモネラ菌等の食中毒を引き起こす細菌が付着している可能性があります。食中毒が重症化した場合は流産や早産の原因になることもあるので、加熱せずにそのまま食べられる食材を摂取しないように注意しましょう。
香辛料やスパイス
香辛料やスパイスを過剰に摂取すると、子宮収縮により下腹部の痛みが発生する可能性があります。次のような香辛料やスパイスは、料理に使われていることが多いので注意してください。
● ウコン
● ターメリック
● シナモン
● ナツメグ
● サフラン
なお、ここで紹介したスパイスは摂取しすぎなければ問題はありません。料理に使用する際には、入れすぎないようにしましょう。
カフェインを多く含む飲み物
カフェインを多く含む飲み物を飲み過ぎると、自律神経のバランスが崩れて胃腸が活発になり、下痢を引き起こすことがあります。カフェインが含まれている飲み物は、次のとおりです。
● コーヒー
● 緑茶
● 紅茶
● エナジードリンク
● 栄養ドリンク
コーヒーには胃酸の分泌を促すクロロゲン酸や腸の粘膜を刺激するタンニンというポリフェノールが含まれているため、飲んでしまうと腹痛が起きやすい傾向があります。
そもそも、妊娠中にカフェインを摂取すると胎児の発育不良につながるといわれています。しかし、妊娠中のカフェイン摂取による胎児への影響は、まだよくわかっていません。少量なら影響は少ないですが、カフェインの含有量が多い飲み物の多飲は控えるようにしましょう。
ハーブティー
ハーブティーはカフェインレスで妊娠中でも楽しめるお茶ですが、一部の種類には子宮収縮効果があります。妊娠中に控えた方が良いハーブティーの種類は、次のとおりです。
● レモングラス
● ローズマリー
● リコリス
● マテ
● ジャスミン
● ハトムギ
子宮に影響がないハーブティーであれば、リラックス効果があるので妊婦が飲んでも問題ありません。どうしてもハーブティーが飲みたい場合は、専門家や医師に相談してから飲むようにしましょう。
妊娠初期に起こる腹痛の原因を見極めよう
今回は妊娠初期に起こりやすい腹痛の原因と対処法について解説しました。
妊娠初期は、ホルモンバランスの変化やストレスにより腹痛を感じる人が多いです。痛みがすぐおさまるようであれば様子をみるだけで問題ありません。しかし、痛みが強い場合や出血等の症状がある場合は異常だと判断し、すぐに医師の診察を受けた方が良いです。
また、軽い腹痛の場合は、自宅で様子を見ながら安静に過ごしましょう。体を休めたり温めたりするだけで痛みが和らぐこともあります。他にも、腸や子宮を刺激する食品を控えるようにすることも大切です。赤ちゃんを育てる自分の体をいたわりながらマタニティライフを送りましょう。