妊娠初期の食事はコレだけ見ればOK!摂取したい栄養素や推奨されないもの
PROFILE
1 妊娠初期の食事は「無理せずバランス重視」
2 妊娠初期に摂取すべき栄養素
3 妊娠初期に摂取を注意すべき食品や嗜好品
4 妊娠初期は食べられる時にバランスを意識しよう
妊娠初期の食事は「無理せずバランス重視」
いまは赤ちゃんのために、とにかくきちんと食べなければいけないとプレッシャーを感じているかもしれません。
しかし、妊娠初期の食事は「無理をせず」バランスを保つことが重要です。
栄養バランスが重要
実は妊娠初期は、お母さんの摂取した栄養が赤ちゃんに送られる段階ではありません。妊娠16週程度まで赤ちゃんは卵黄のうという器官から栄養を補給しているためです。
しかし、これから出産のためにお母さんの健康・体力の維持が必要になってくるため、体づくりのために栄養バランスの整った食事を心掛けることが必要です。
無理しすぎないことも大切
食事を気遣いたいと思いつつ、つわりで吐き気等の体調不良に困っているお母さんもいるのではないでしょうか。妊娠初期は特につわりの症状がひどいことが多いので、思うように食事ができなくなっても仕方のないことです。
そのため、もしつわりがひどい時は栄養に固執して食事を取る必要はありません。すぐ吐いてしまったり食べられるものが少ない場合は、とにかく食事を取ることが優先です。
良い栄養だけを取ろうと無理をせず、食べられるものを食べられるだけ摂取するようにしてください。症状がひどい場合は1食を一気に食べようとせず、小分けにして食べるのも良いでしょう。
また、繰り返し吐いている場合は脱水症状にならないように水分補給もできる限り行ってください。
妊娠初期に摂取すべき栄養素
普通の食事が取れる体調の時はバランスの整った食事に加え、お母さんの体づくりを意識した栄養素を取り入れていきましょう。
特に妊娠初期に摂取がおすすめな栄養素は次のものが挙げられます。
● 葉酸
● 鉄分
● カルシウム
● タンパク質
続いて各栄養素について、作用や摂取できる食品等を詳しく解説していきます。
葉酸
葉酸はビタミンB群の一種で、タンパク質を体内で作るのを助ける栄養素です。筋肉等を含む細胞の再生・発育に使われるため、お母さんの体の健康維持を助けてくれます。さらに赤血球を作る働きもあるため、貧血予防にも最適です。
ただし、葉酸は一般的に食事から1日240μgが摂取目安ですが、妊娠中のお母さんは必要な量が増えることもあり、サプリメントによる400μgの摂取が推奨されています。
葉酸はサプリメントでも摂取できるので、うまく活用して摂取していきましょう。
摂取量の目安 | 1日1,000μg( 30歳~49歳) +400μg |
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葉酸を含む食品 | ・モロヘイヤ ・ほうれん草 ・ブロッコリー ・アスパラガス ・枝豆 ・いちご ・レバー 等 |
鉄分
鉄分は体内で血液を作るのに必要な栄養素で、妊娠初期の貧血予防に効果的です。さらに鉄分は体に吸収されたあとヘモグロビンに変わり、酸素を体へ運ぶ働きもあるため、活力ある体づくりを助けてくれます。
なお、鉄分には動物由来の「ヘム鉄」と、植物由来の「非ヘム鉄」があります。
ヘム鉄は体に吸収されやすく、栄養素として活躍するまでのスピードが早いのが特徴です。ただヘム鉄が多い食品は、胃腸の負担になることもあります。
一方、非ヘム鉄はヘルシーな野菜等の食材にも含まれるため、比較的食べやすいものが多いです。しかしヘム鉄に比べると体への吸収率がやや劣ります。それぞれの特徴が異なるのでヘム鉄・非ヘム鉄を組み合わせ、無理なく摂取していくのがコツです。
なお、鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)もサプリメントでの摂取が可能です。
ヘム鉄 | 非ヘム鉄 | |
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摂取量の目安 | 8.5~9mg | |
鉄分を含む食品 | ・豚レバー ・うなぎ ・あさり ・あわび ・カタクチイワシ ・干しエビ 等 | ・ひじき ・あおのり ・かわのり ・きくらげ ・えごま ・切り干し大根 等 |
カルシウム
カルシウムは歯や骨を強くしてくれる栄養素です。お母さんの骨の強化に加え、赤ちゃんの骨の形成にも役立ちます。
日本人は慢性的にカルシウム不足な人が多い傾向があるので、妊娠初期からカルシウムを意識的に摂取し不足を改善しておくのがおすすめです。
また、カルシウムを摂取する際は、食品によって吸収率が大きく異なる点も覚えておいてください。ずっと同じものを食べる必要はありませんが、摂取する際は吸収率が高い食品も適度に献立に組み込むと良いでしょう。
なお、カルシウムもサプリメントで摂取可能です。
摂取量の目安 | 650mg |
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カルシウムを含む食品 | ・牛乳 ・チーズ ・ヨーグルト ・小松菜 ・ひじき ・高野豆腐 ・いわし 等 |
タンパク質
タンパク質は筋肉や臓器、髪、肌等を再生・発育させる栄養素です。加えてホルモンや免疫物質等を作る材料にもなるので、お母さんの体をさまざまな面から支えてくれる存在と言えます。
なお、摂取量は摂取エネルギーの13~20%が良いといわれています。特に妊娠初期の摂取量は一般的な成人女性と変わらないので、簡単に摂取できます。
摂取量の目安 | 50g |
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タンパク質を含む食品 | ・鶏むね肉 ・鮭 ・かつお ・牛乳 ・豆乳 ・卵 等 |
妊娠初期に摂取を注意すべき食品や嗜好品
妊娠初期は摂取を注意すべき食品や嗜好品があります。
少量なら口にしても問題ないものもありますが、中には出産するまで口にしないほうが良いものもあるので注意していきましょう。
生の魚介類等
生の魚介類等は「食中毒」の恐れがあるためできたら避けたい食品です。もし妊娠中に食中毒になった場合、下痢や嘔吐で子宮収縮を引き起こすことがあります。子宮収縮は流産や早産につながる恐れがあるので危険です。
さらに状況が悪いとお母さんの血管が詰まる血栓症が起こりやすくなったり、胎児が細菌や寄生虫に感染し命にかかわることもあります。そのため、ちょっとおなかが痛くなるだけと甘く見ることはできません。
特に妊娠中は免疫力が下がっていることもあるので、いつもよりも食中毒になる危険があり注意が必要です。生の魚介類を絶対に食べてはいけないとは言えませんが、妊娠中はできる限り避けるのが無難と言えるでしょう。
生ハム、生肉等
生ハム、生肉等は、「トキソプラズマ症」に感染する危険があるため妊娠中はおすすめできません。トキソプラズマとは鶏、豚、牛、鹿等に含まれる寄生虫の一種で、火のとおりが不十分な肉を食べることで感染します。
感染すると、まれに発熱やリンパの腫れ、筋肉痛等を引き起こすことがあります。ただトキソプラズマ症は健康な人の場合は無症状なケースも多いです。重症化することも少ないため、過度な心配はいらないといわれています。
ではなぜ妊娠中に注意が必要なのかというと、妊娠中のお母さんが感染すると30%ほどの確率で赤ちゃんにも感染することがあるためです。赤ちゃんが感染して重症化してしまうと、流産や死産につながることがあります。
ただ赤ちゃんに感染した場合も必ず発症するとは限らず、症状が出る確率も10~15%といわれています。トキソプラズマ症は妊娠中でも服用薬で治療が行えるので、生肉を食べてしまっても慌てないでください。
もし生肉類を食べていて影響が不安な場合は、抗体検査を受けるのがおすすめです。感染の有無を調べることができるので、気になる人は一度検査を受けてみてください。
※参考:東京臨海病院産婦人科
非加熱の乳製品等
非加熱の乳製品は「リステリア菌」による食中毒の恐れがあるので摂取は避けてください。リステリア菌とは、自然界にある細菌で汚染された食品を食べることで感染します。
感染するのは乳製品からだけではありませんが、非加熱の乳製品が最もリステリア菌に感染するといわれています。感染した場合は脳や骨髄から菌が拡がり、高熱、腹痛、胃腸炎等を引き起こします。重篤な状態になることもあるため、妊婦の感染は危険です。
また、リステリア菌は赤ちゃんに直接的な危険もあります。リステリア菌に感染した赤ちゃんのうち、約20%が流産や死産した事例が確認されているためです。感染を乗り越えて出産できても、死亡または重篤な病気に陥るケースも確認されています。
特に妊娠初期は感染すると赤ちゃんへのリスクが高い傾向があるので、注意が必要です。妊娠中の人は特に感染しやすいので、火が通ってない乳製品は必ず避けるようにしましょう。
※参考:佐野産婦人科
アルコール
アルコールも妊娠中の摂取は避けるべき食品です。妊娠中にお母さんがアルコールを摂取するとアルコールの刺激で早産や流産を招く恐れがあります。
また、もし流産にならなくてもおなかの中の赤ちゃんにも悪影響を与えてしまいます。お母さんから胎盤を通して送られたアルコールは、赤ちゃんの体ではうまく代謝することができません。代謝できなかったアルコールが体や脳に影響を与え、発育の遅れや脳障害等を招く危険があります。
そのため、妊娠中のアルコールは少量でも摂取はおすすめできません。出産するまで必ず避けるようにしましょう。
水銀を含む食べ物
魚類等水銀を含む食べ物も摂取には注意しましょう。水銀は一定以上取りすぎると赤ちゃんの成長に影響があるといわれています。
ただ、完全に魚類等を絶つ必要はありません。食べ物で摂取できる水銀はごくわずかなので、日々の摂取量に気を付ければ水銀が含まれる物を食べても問題ありません。
日本人の1日の水銀摂取量は平均約8μgです。普通の人はこの平均値で毎日摂取し続けても問題はないといわれています。
しかし妊娠中のお母さんは、赤ちゃんへの影響を考えてもう少し意識的に抑えておくのがおすすめです。目安としては水銀が多いとされる魚類等の食べ物は、週に1回程度(週に50~100g以内)に抑えると良いでしょう。
水銀が多い魚類は次のとおりです。
マグロ類 | サメ類 | 深海魚 | くじら |
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・本マグロ ・インドマグロ ・クロカジキ ・メバチマグロ ・メカジキ 等 | ・ヨシキリザメ ・ドチザメ 等 | ・キンメダイ ・メヌケ ・ムツ 等 | ・マッコウクジラ ・バンドウイルカ ・コビレゴンドウ 等 |
ビタミンAを含む食べ物
ビタミンAを含む食べ物は取りすぎに注意しましょう。
ビタミンAはレバーやうなぎ等に含まれる栄養素でレチノールとも言います。基本的には危険な成分ではなく、皮膚や粘膜を保つのに必要な栄養素です。
しかし妊娠初期に摂取し過ぎてしまうと赤ちゃんの成長に異常が起こる恐れがあります。とはいえ全く摂取しないのも体に良くないので、量に気をつけて摂取していきましょう。
1日の摂取推奨量 | ・18~29歳:650㎍ ・30~49歳:700㎍ |
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耐容上限量(1日) | 2,700㎍ |
ビタミンAを含む食品 | ・鶏レバー(14,000㎍/100g) ・豚レバー(10,400㎍/80g) ・うなぎ(1,500㎍/100g) |
ヒ素を含む食べ物
ヒ素を含む食べ物も摂取量に注意が必要です。お母さんがヒ素を含む食べ物を大量に摂取すると、赤ちゃんはヒ素を分解できず体に蓄積してしまいます。ヒ素が蓄積し過ぎると脳障害や奇形を起こす可能性があります。
しかしヒ素は相当な量を食べないと危険な摂取量に到達しないので、過剰に心配する必要はありません。例えばヒ素を含む食べ物として取り上げられることが多いひじきは、週に1~2回小鉢で食べる程度なら妊娠中でも食べても問題ありません。
もし食べるのが少し不安だと感じる人は、調理前に食材を水にさらす・ゆでる等の調理がおすすめです。ヒ素は水に溶ける性質があるため、一手間を加えることで含有量を軽減することができます。
ヨウ素を含む食べ物
ヨウ素は摂取量に注意は必要ですが、体に必要な栄養素でもあります。ヨウ素は体内で甲状腺ホルモンの生成や赤ちゃんの発育を助けてくれます。むしろ足りないと赤ちゃんの発育を悪くしてしまう恐れがあり、妊娠中は摂取がおすすめです。
ただ極端にヨウ素を取りすぎると甲状腺肥大や先天性甲状腺機能低下症等を発症する恐れがあるといわれています。つまり取らなくても取りすぎても問題が出る栄養素です。摂取量の目安を意識しながら取り入れていきましょう。
摂取量の目安 | 1日240㎍ |
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耐容上限値 | 2,200㎍ |
ヨウ素を含む食品 | ・昆布 ・わかめ ・ひじき ・たら ・ズワイガニ 等 |
カフェイン
カフェインも完全に禁止ではありませんが、摂取量は注意が必要です。カフェインはお母さんが過剰摂取を続けると、赤ちゃんの発育に影響を及ぼす可能性があるといわれています。ただ適量なら毎日飲んでいても問題ないといわれているので、安心してください。
なお、妊娠中のカフェインの摂取量目安は1日300mgなので、コーヒーならマグカップに2杯程度が目安です。カフェインレスのハーブティー等も活用し、推奨量を守りながら楽しみましょう。
摂取量の目安 | 1日300mg |
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カフェインを含む食品 | ・コーヒー(60mg/100ml) ・紅茶(30mg/100ml) ・ウーロン茶(20mg/100ml) ・玉露(160mg/100ml) ・煎茶(20mg/100ml) |
※参考:東京都保健医療局
妊娠初期は食べられる時にバランスを意識しよう
あらためて妊娠初期に積極的に摂取したい栄養素と、摂取に注意が必要な食品をまとめてみましょう。
妊娠初期に摂取すべき栄養素 | 摂取を注意すべき食品や嗜好品 |
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・葉酸(ほうれん草等) ・鉄分(レバー等) ・カルシウム(乳製品等) ・タンパク質(肉・魚等) | ・生の魚介類 ・生ハム、生肉 ・非加熱の乳製品 ・アルコール ・水銀を含む食べ物(魚介等) ・ビタミンAを含む食べ物(レバー等) ・ヒ素を含む食べ物(ひじき等) ・ヨウ素を含む食べ物(海藻類等) ・カフェイン(コーヒー等) |
妊娠初期に摂取すべき栄養素として挙げた4つは、ぜひつわり等がひどくない時に取り入れてみてください。ただどのような栄養も過剰摂取すると体に毒になってしまうので、摂取目安を守って食べましょう。食事はバランスが大切です。
また、注意すべき食品・嗜好品については、生ハム・生肉、非加熱の乳製品、アルコール等は特に摂取を控えたほうがよいと言えます。食べたいものが食べられないのは辛いですが、出産後の楽しみに取っておきましょう。