妊娠後期になると体はどう変わる?母体と胎児の変化を知ろう
PROFILE
1 妊娠後期とは妊娠28週~40週以降のこと
2 妊娠後期の母体と胎児
3 妊娠後期の体調の変化
4 妊娠後期にやっておいたほうが良いこと
5 妊娠後期にやってはいけないこと
6 妊娠後期は体調不良の対策をしつつ楽に過ごそう
妊娠後期とは妊娠28週~40週以降のこと
妊娠後の変化は大きく分けて3段階あります。
妊娠0週~15週目を「妊娠初期」、妊娠16週~27週目を「妊娠中期」と呼びます。
最後に迎える妊娠28週~40週目とそれ以降が、「妊娠後期」です。妊娠後期は、出産に向けてお母さんや赤ちゃんに最後の変化が起きる時期とされます。
妊娠後期の母体と胎児
妊娠後期は母体と胎児にどのような変化が訪れるのでしょうか。ここからは妊娠後期に起きる変化を具体的にご紹介していきます。
胎児は最終的に3,000g程度に成長
妊娠後期は胎児が一気に大きくなります。
妊娠28週目に約850g~1,500g弱だった胎児も、出産が間近になる妊娠40週目に向けてぐんぐん成長。最終的には約3,000gまで成長します。
お母さんは赤ちゃんの成長を最も感じやすい時期です。
子宮の大きさは約24cm
子宮も胎児の成長にあわせて、伸縮・成長してきます。
妊娠後期になると子宮の大きさは横幅約24cm、縦幅はなんと約40cmまで成長。子宮自体の重さも元々40gほどだったものが、1kg程度まで増します。
また、子宮が大きくなる影響で、消化器官や横隔膜等が圧迫されます。よって妊娠後期はお母さんの食欲や呼吸への影響も大きいです。
赤ちゃんの臓器がほぼ完成する
妊娠28週目ごろは、赤ちゃんの心臓を始めとしたさまざまな臓器がほとんど完成する時期です。胃や腸といった消化器官もほぼ完成され、「胎便」をつくる等生まれたあとに適切な排せつができるように準備も行っています。
赤ちゃんは頭位の姿勢に
妊娠中に赤ちゃんは子宮の中でぐるぐると体勢を変えますが、妊娠30週ごろに入ると頭を下に向ける「頭位」の体勢に安定します。
頭位になるのは、赤ちゃんが自ら生まれやすくするためや、成長した頭を楽な状態にするためです。赤ちゃんは体勢を安定させたら、逆さ立ちしたような形で出産まで過ごすことになります。
妊娠後期の体調の変化
妊娠後期のお母さんはつわり等は落ち着いてきますが、次のような体調の変化が見られるようになります。
● 腰痛
● 頭痛
● むくみ
● 胸焼け
● 尿漏れ
● 恥骨痛
● 足がつる
これらの症状はどうして起こるのでしょうか。ここからは症状を起こす原因から詳しく解説していきます。
腰痛
妊娠後期は赤ちゃんが成長し、お母さんがおなかを突き出すような反り腰姿勢になりやすいため、腰の関節や靭帯(じんたい)に負荷がかかります。おなかの重みで下半身の血行不良も起こりやすいことも相まって、腰痛を誘発しやすくなります。
さらに妊娠後に分泌が増える「リラキシン」というホルモンの影響もあり、骨盤周辺の靭帯(じんたい)も緩みやすい状態。つまり妊娠後期は、腰痛が起きる可能性が高まる時期といえます。
実際、妊娠後期になって腰痛を強く認識するお母さんは珍しくありません。
腰痛を予防するには、反り腰になりすぎないよう姿勢に気を付けつつ、下半身の血行を良くすることも意識しておくとよいでしょう。血行改善には半身浴やカイロで腰回りを温めることもおすすめです。
参考:池袋西口病院
頭痛
妊娠後期は頭痛も起こしやすくなります。赤ちゃんに栄養を送るために必要な血液量が増え、お母さんの血液が薄まって「鉄欠乏性貧血」を起こすためです。
鉄が不足すると血行が悪くなるため、血液によって脳へ送られる酸素量が減少。お母さんは頭痛やめまいを起こしやすくなります。
加えて前よりも不便さが増すために疲れが取れず、ストレスが蓄積することも影響するでしょう。疲労とストレスが溜まり、自律神経が乱れて頭痛を起こすことも考えられます。
また、出産に向けて不安が募り、緊張性頭痛を起こすこともありえます。緊張性頭痛は精神的なストレスによって引き起こされるため、経験するお母さんは少なくありません。
いつもより心身を休める時間を意識的に取るようにしましょう。
なお、「鉄欠乏性貧血」を予防する場合は、医師に相談をして鉄剤等を処方してもらうこともできますが、食事で摂取することも可能です。
鉄分が含まれる食材(ヘム鉄・非ヘム鉄) | ||
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ヘム鉄 | 非ヘム鉄 | |
摂取量の目安 | 8.5~9mg | |
特徴 | 吸収されやすいが胃腸への負担が大きい | 比較的負担が少ないが、吸収率がやや劣る |
鉄分を含む食材 | 豚レバー うなぎ あさり あわび カタクチイワシ 干しエビ 等 | ひじき あおのり かわのり きくらげ えごま 切り干し大根 等 |
むくみ
妊娠後期はむくみも強く出やすくなります。赤ちゃんへより多くの血液を送るためにお母さんの血液が薄まる作用のせいで、水分が血管の外に出てしまうためです。
さらに体内の水分を保持させようと「アルドステロン」や「コルチゾール」というホルモンが分泌される影響もあります。妊娠後期の正常な体の働きですが、むくみの原因にもなっています。
妊娠後期の血行不良を起こしやすい影響もあり、むくみも解消しづらい状態です。
むくみを対策するには、1日20分ほどのウォーキングと程よい水分補給を心掛けましょう。むくむからといって水分補給を避けるのは禁物です。1日1.5~2Lの水を何回にも分け、こまめに摂取するようにしてください。
また、塩分が多すぎる食事を避け、塩分を排出してくれる「カリウム」を摂取するのもおすすめです。
カリウムが含まれる食材 | ||
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摂取量の目安 | 2,000mg | |
カリウムを含む食材 | 里芋 山芋 さつまいも じゃがいも ほうれん草 春菊 かぼちゃ 切り干し大根 納豆等 |
胸焼け
妊娠後期は子宮が大きくなる影響で消化器官をはじめとした内臓を圧迫します。そのため、通常より胃が持ち上がる形になり、胸焼けや胃もたれを起こすことがあります。
また、成長した子宮の影響で逆流防止の機能が緩みやすくなり、胸焼けが起きやすいです。胸焼けが進行して、「逆流性食道炎」を起こしてしまうこともあります。
対策としては胃酸が増える食べ物を避けることや、1回の食事量を減らして回数を増やす等、胃に優しい食事を心掛けることがよいでしょう。
胃酸が増えやすい食べ物の例 |
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極端に熱いもの/冷たいもの 脂っぽいもの 味の濃いもの 辛いもの 固いもの |
尿漏れ
赤ちゃんが成長してくるとぼうこうや子宮を支えている「骨盤底筋」が圧迫され、尿漏れも起こしやすくなります。骨盤底筋は排せつもコントロールする役割がありますが、圧迫されることで通常のように機能しづらくなってしまうのです。
そのため、妊娠後期は多くの妊婦さんが尿漏れを経験します。例えばくしゃみやちょっとした動きで尿漏れを起こしてしまうことも珍しくありません。
また、骨盤底筋がうまく機能できないことで、尿意を感じてから我慢できる時間も短くなるので注意が必要です。
少しでも尿漏れを予防したいという場合は、骨盤底筋を鍛えていきましょう。妊娠後期の尿漏れや、出産後の骨盤底筋の回復に役立ちます。
おすすめな骨盤底筋トレーニングを簡単にまとめたので参考にしてください。
【骨盤底筋トレーニング】 |
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1. ゆっくり息を吐きながら、肛門をゆっくりと締める 2. 息を吸いながら、ゆっくりと肛門を緩める 3. 10回繰り返し、3分休んで3セット行う ※1日2回ほど行うのがおすすめ! |
恥骨痛
恥骨とは、陰毛の生え際あたりにある骨のことです。妊娠後期には、この恥骨に負荷がかかり、恥骨痛を自覚することがあります。ただ、痛む場所が恥骨周辺とは限らず、脚の付け根あたりが痛むことがあるのが恥骨痛の特徴です。
恥骨痛が起きるのは、重くなったおなかが恥骨を圧迫することや、出産に向けてホルモン分泌が増える影響とみられています。ホルモン分泌によって骨盤が緩み、恥骨結合が拡がると痛みが生じてしまうことがあります。
なお、恥骨痛の予防・緩和ケアをするには、骨盤底筋のストレッチや鼠径部のマッサージがおすすめ。恥骨結合に柔軟性が出るため、痛みが楽になります。
また、妊婦用の骨盤ベルトの活用もよいでしょう。緩みがちな骨盤を支え、恥骨への負荷を和らげてくれる可能性があります。
【おすすめ骨盤底筋ストレッチ】 |
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1. あおむけに寝て、足を肩幅に開く 2. 肛門や尿道等、陰部全体をぎゅっと締めるイメージでキープ(5秒) 3. 一気に脱力して約1分休憩 4. 1~3の工程を繰り返す(計10セット) |
足がつる
ミネラル豊富な食事を取る | 体を冷やさない・血行を改善する |
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“カルシウム・マグネシウム摂取を意識!” 例えば… 【カルシウム】 ・乳製品、大豆製品、小魚、海藻類等 【マグネシウム】 ・海藻類、ナッツ類、大豆製品、ごま等 | “体を冷やさないことを意識!” 例えば… 【冷え防止】 ・靴下、レッグウォーマーをはく 【血行改善】 ・足湯や半身浴をする等 |
妊娠後期にやっておいたほうが良いこと
妊娠後期に入ると、出産もいよいよ間近に迫ってきます。陣痛が始まると止めることはできないので、出産から帰宅後の準備まで早めに行っておくことをおすすめします。
ここからは妊娠後期にやっておいたほうが良いことをわかりやすく解説するので、参考にしてください。
入院準備
まず早々に始めるべきなのは入院準備です。妊娠後期に入ったら、いつ陣痛が来るかわかりません。医師の判断で予定より早めに入院することもありえます。
そのため、医師にいま入院すると言われても、すぐに病院へ行ける状態にしておくことが大事です。
なお、入院セットはすぐに取り出せる場所に置き、家族にも周知しておきましょう。お母さんが外出先から入院になった場合等、自分で持ち出せないこともあるためです。
また、出産後はすぐに育児が始まります。しばらくは赤ちゃんに掛かりきりなため、必需品をそろえ、すぐ使えるよう用意しておくと安心です。パートナーと一緒に準備を進めましょう。
入院準備としてそろえておくと良いものを次にまとめたので参考にしてください。
入院セット | 出産後のためにそろえておくもの |
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【お母さんのためのアイテム】 ● 母子手帳 ● 健康保険証 ● 診察券 ● 印鑑 ● 筆記用具 ● 基礎化粧品 ● 授乳ブラジャー ● 母乳パッド ● 産褥ショーツ ● 産褥ニッパー ● パジャマ(マタニティータイプ) ● 清浄綿・産褥パッド ● 退院する時の服 【赤ちゃんのためのアイテム】 ● 退院する時の肌着・洋服 ● おくるみ ※すべて1つのバッグにまとめておく | ● 赤ちゃんの衣類 ● 赤ちゃんの寝具 ● 沐浴(もくよく)セット ● 粉ミルクまたは液体ミルク ● 哺乳瓶・哺乳瓶消毒器 ● おむつ・おしりふき ● おむつ用ごみ箱 ● ベビー用体温計 ● ベビー用爪切り ● 衛生用品(綿棒、消毒液等) |
家事や育児のサポートを確認
赤ちゃんが生まれてからの家事や育児について、事前に詳しく決めておくことも大切です。例えばパートナーと赤ちゃんのお世話や家事をどのように分担するか等、具体的なプランを組んでおきましょう。
夫婦2人きりの場合は、育児や家事代行のサービスを利用する手もあります。活用する場合は出産の前に使えそうなサービスを探し、すぐ利用できるように登録を済ませておきましょう。何をしてもらうかも夫婦で決めておくと安心です。
また、夫婦どちらかの親に来てもらってサポートを受ける人や、里帰り出産をする人もいるでしょう。この場合は、事前に協力してもらう人と生活の流れやお世話の方針について話し合っておくことが大切です。
妊娠後期にやってはいけないこと
出産に向けて準備することはたくさんありますが、妊娠後期はやってはいけないこともあります。
最後に特に注意したい「やってはいけないこと」について確認しておいてください。
中見出し:おなかを圧迫しないようにする
妊娠後期は特におなかを圧迫しないように注意してください。おなかが強く圧迫されると「子宮収縮」を起こし、早産や流産を招いてしまう危険があります。
特におなかが大きくなってからは、より注意が必要です。例えばしゃがむ時はおなかを圧迫しないように足を開く、きつい服装は避けるようにする等を意識しましょう。
また、寝る時もおなかを圧迫しない姿勢を取るようにしてください。体勢としては「シムス位」がおすすめです。子宮の血流も妨げにくく、妊婦さんに推奨されています。
シムス位の取り方 |
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1. ベッドに横になり左側を下にして横向きになる 2. 左足を楽に真っ直ぐ伸ばし、右足の付け根と膝を曲げる 3. 右足を床に沿っておなか側へやや持ち上げる(角度は緩め) 4. 曲げた右足を起点に、少し体を倒して軽いうつ伏せになる 5. 左手は体の少し後ろ気味、右手はやや肘を曲げて前に出して楽にする ※おなかと床の隙間を埋めるように抱き枕を使うのもおすすめ! |
動きすぎない
妊娠後期は動きすぎることも避けましょう。おなかが大きくなってからお母さんが動きすぎると、おなかが張って早産を誘発しやすくなってしまいます。
また、動きすぎることで子宮口が予定より早く開いてきてしまうこともあります。ぐったりするようなしんどさを感じるまで動き回ることは避けておくのが無難です。
妊娠後期は体調不良の対策をしつつ楽に過ごそう
妊娠後期には赤ちゃんが2.5倍~3倍ほど成長するため、お母さんのおなかも目に見えて大きくなります。身動きが取りづらく体も重くなって大変ですが、赤ちゃんが成長している証拠なので、頑張って乗り越えていきましょう。
また、後期は赤ちゃんの成長に伴い、お母さんの体調にも変化が訪れます。腰痛、頭痛、むくみ、胸焼け、尿漏れ、恥骨痛、足がつる等が特に目立ってくるので、意識的に対処法を講じておきましょう。
特に妊娠後期でもできるストレッチや運動、食事改善等は、症状を自覚する前から早めに行っておくのがおすすめです。疲労やストレスを溜めてしまうことでも体調不良を招きやすくなるため、心身を休める時間も大切にしてください。