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妊娠と出産

つわりはいつから始まっていつまで続く?症状を軽減させる対策について解説

公開日:2024.08.30
更新日:2024.08.30
つわりはいつから始まっていつまで続く?症状を軽減させる対策について解説
妊娠初期には、多くの女性が「つわり」と呼ばれる症状を経験します。この時期の吐き気をはじめとする体調不良は女性に不快感を与え、日常生活に大きな影響が出ることもあるのが現状です。 症状がひどい場合は、仕事を休まざるを得なくなることもあるでしょう。つわりの基礎知識や対策について知ることは、困難な時期を少しでも快適に過ごす手助けになる可能性があります。 そこでこの記事では、つわりのメカニズムや症状、軽減させるための対策等をわかりやすく解説します。つわりについて理解を深め、妊娠初期のマタニティーライフを快適に過ごしましょう。

PROFILE

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専門家/エキスパート 阿部 一也
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業/現在は板橋中央総合病院勤務/専門は産婦人科
INDEX

1 つわりに関する基礎知識

2 つわりの時期とピーク

3 つわりの症状を軽減させるための対策

4 症状がひどい場合は医療機関を受診

5 つわりのときの食事について

6 つわりに関するQ&A

7 妊娠に備えてつわりの基礎知識を把握しておこう

つわりに関する基礎知識

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まずは、つわりのメカニズムや症状について理解を深めていきましょう。妊娠初期に多くの女性が経験するつわりは、妊娠中の一般的な症状の一つです。しかし、原因や症状、対策については、まだ完全に解明されているわけではありません。

つわりとは

「つわり」と呼ばれる症状は、妊娠初期に多くの女性が経験する体調不良の一つです。妊娠5週目頃から何らかの症状が現れるのが一般的です。症状の出方には個人差があり、ほとんど現れない女性もいます。

一方でつわりが重症化し、脱水症状や栄養代謝障害等を引き起こす女性もいるのが現状です。重症化したつわりは「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼ばれており、入院治療が必要になるケースも珍しくありません。

また、症状の出方は初産や経産等妊娠ごとにも異なります。最初の妊娠が軽症でも、次の妊娠時も快適に過ごせるとは限りません。妊娠を希望する場合は、つわりの症状や時期等を把握し、備えておくことが大切です。

つわりが起こる原因

医学の発展に伴い、多くの疾患の原因が解明されるようになってきました。原因が解明されれば、効果的な治療法の開発や予防策の確立につながりますが、つわりが起こる原因については、いまだ解明されていないのが現状です。

現時点では、ホルモンの分泌量が関係していると考えられています。妊娠中は、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やエストロゲン、プロゲステロンといったホルモンの分泌量が増加します。

吐き気や嘔吐を引き起こす原因の一つは、妊娠初期に急増するhCGです。エストロゲンも妊娠中に増加し、つわりの症状に関与している可能性があります。プロゲステロンの増加は胃腸の動きを弱め、胃の不快感を引き起こすことがあります。

つわりの症状

前述したとおりつわりの症状には、個人差があります。一般的には、次のような症状が現れます。

● 吐き気
● 嘔吐
● 食欲不振
● 疲労感
● 頭痛
● 唾液の増加
● 嗅覚の敏感化
● イライラ
● 眠気 等

上記のうち、つわりの症状として代表的なのは吐き気です。吐き気は、朝に感じることが多い傾向があります。これは、空腹により血糖値が下がりやすくなっていることが関係しているといわれています。

体調に変化を感じても、上記のすべての症状が現れるとは限りません。吐き気だけ感じるケースもあれば、複数の症状を感じるケースもあります。身体的な症状に加え、イライラする等の精神的なストレスを感じる女性も少なくありません。 

つわりを経験する人の割合

妊娠初期には、多くの女性がつわりを経験するといわれています。兵庫県立大学の資料によると、全妊婦の50~80%につわりの症状がみられるとされています。

※出典元:兵庫県立大学「自分に合ったつわり軽減方法が、きっとある!」

上記のデータからわかるのは個人差があるものの、つわりは妊娠初期に生じる一般的な症状であるということです。つわりは、特に初めて出産する女性が経験しやすい傾向があります。

そのため、妊娠初期につわりの症状が現れても、心配する必要はありません。一方で、つわりを一切経験しない女性もいます。つわりは個人差があることをよく理解し、基礎知識を把握したうえで備えておくようにしましょう。

つわりの時期とピーク

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妊娠初期に多くの女性が経験するつわりは、開始時期やピークに個人差があります。開始時期やピークを把握しておけば、快適に過ごすための適切な対策を検討できるでしょう。ここからは、一般的なつわりの時期とピークについて解説します。

始まりは妊娠5週目くらい

つわりの開始時期は、妊娠5週目頃からです。一部では、妊娠4週目頃からつわりの症状が現れる女性もいるようです。妊娠4~5週目頃は、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出る時期と重なります。

つわりが早い段階から始まる女性は、妊娠検査薬で検査する前に妊娠に気付く可能性もあるでしょう。なお、この時期につわりが始まる理由の一つは、hCGやエストロゲン、プロゲステロンといったホルモンの影響と考えられています。

前述しましたが、妊娠すると上記のホルモンの分泌量が増加し、心身にさまざまな変化をもたらします。また、つわりが始まる時期には個人差があり、健康状態や生活習慣等が症状の軽重に影響することも少なくありません。

ピークは妊娠8〜10週目

妊娠5週目頃からつわりの症状が出始め、いずれピークを迎えます。つわりのピークは、妊娠8~10週目頃です。ピーク時には、吐き気や食欲不振等のさまざまな症状が強く現れる傾向にあります。

代表的な症状の一つである吐き気は、一日中続くケースも少なくありません。特に空腹時や特定の臭いに敏感になったときには、吐き気の症状が強く出やすいようです。この時期にピークを迎える理由の一つは、hCGやエストロゲン、プロゲステロンといったホルモンの分泌量が増加するためと考えられています。

特にhCGの分泌量は、妊娠8~10週目頃に最も多くなり、ピーク時で症状がひどい場合は、日常生活に支障が出る可能性もあります。日常生活に悪影響を及ぼすときには、医師への相談も必要になるでしょう。

終わりは10週目以降

始まる時期と同様に、つわりが終わる時期にも個人差があります。一般的にはピーク後に徐々に症状が治まり、妊娠10週目以降に終わるケースが多い傾向にあります。ただし、妊娠16週目以降もつわりの症状が続く女性もいます。

妊娠後期以降のつわりは、「後期つわり」と呼ばれており、後期つわりは妊娠初期と同様に、吐き気や食欲不振等の症状が現れます。後期つわりが起こる原因の一つは、ホルモンバランスの変化です。

この他、胎児の成長に伴って子宮が膨張し、胃腸を圧迫することも原因の一つとして考えられています。後期つわりの症状は、胎児の頭が骨盤内に下がることで和らぐ場合が多いものの、症状の出方には個人差があります。

つわりの症状を軽減させるための対策

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妊娠初期には、多くの女性がつわりを経験します。症状の出方によっては、日常生活に支障が出ることもあります。万が一のときに備えるためには、症状を軽減させるための対策を把握しておくことも大切です。

マスクをつける

つわりの症状を軽減させるための対策の一つは、マスクをつけることです。妊娠初期には、特定の臭いが原因で吐き気や嘔吐、食欲不振等のさまざまな症状を引き起こすことがあります。

マスクをつけると臭いを感じにくくなるため、つわりの症状を和らげることが可能です。例えば、料理中にマスクをつけておけば、食べ物の臭いを軽減できるでしょう。ただし、マスクをつける対策は、すべての妊婦に有効な手段とは限りません。

その理由として、特定の臭いに敏感ではあるものの、マスクをつけることで息苦しさを感じることがあるためです。つわりの症状を軽減させたいときは、自身の体調に合う方法を試しましょう。

手軽に食べられるものを持ち歩く

妊娠初期に現れるつわりの対策の一つとして、手軽に食べられるものを持ち歩くことが有効な場合があります。食べづわりや胃のむかつきは、食べ物を口にすることで軽減される可能性があるのです。

つわりの症状軽減に役立つ手軽な食べ物の例は、次のとおりです。

● タブレット
● ガム
● 飴
● こんにゃくゼリー
● 干し梅
● グミ
● クラッカー 等

上記のものを持ち歩いていれば、外出先で症状が出たときに役立つでしょう。特に吐き気は、血糖値が下がる空腹時や起床後に感じることが多い傾向があります。手軽に食べられるものは、自宅にも常備しておくと良いでしょう。

適度に体を動かす

つわりの症状を軽減させるためには、適度な運動も効果的です。妊娠中は胎児に栄養を与えるために、栄養バランスの整った食事の摂取が必要です。しかし、つわりで食べられるものが限られると、低栄養によってむくみやすくなります。

適度な運動によって筋肉の緊張が解ければ、むくみを軽減できる可能性があります。体に負担がかからないよう、マタニティーヨガやストレッチを取り入れてみましょう。また、妊娠中は運動不足になりがちです。運動する習慣をつければ、運動不足の解消にもつながるでしょう。

つわりの症状は多岐にわたり、イライラや不眠等の精神的な症状が現れることもあります。適度な運動はリフレッシュ効果が期待できるため、つわりによる精神的な症状を改善できるかもしれません。

家事や仕事を休む

妊娠中に無理をすると、胎児や母体に悪影響を及ぼすリスクがあります。つわりの症状がひどい場合は、家事や仕事に支障が出る可能性もあります。症状に悩まされたときには、思い切って家事や仕事を休むようにしましょう。

男女雇用機会均等法の第13条では、つわり休暇に関する内容が明記されています。妊娠や出産を経ても働き続ける女性が多い中、つわりの症状がひどいときに休めるつわり休暇を設けている企業も増えています。

企業に勤務している方は、自社につわり休暇があるかを確認してみましょう。つわり休暇がある場合は、無理せず休暇を取得するのも手段の一つです。症状がひどいときの家事については、夫や家族と協力しましょう。

つわりに有効なツボを押す

つわりの症状は、ツボを押すことで軽減されることもあります。症状の軽減が期待できる代表的なツボは、次のとおりです。

● 内関
● 裏内庭
● 足三里 等

内関は、手と手首の中央から指3本分の肘関節側にあるツボです。このツボを押すと、吐き気や胃の不快感といった消化器系の諸症状への効果が期待できます。裏内庭は、足の人差し指の裏に位置するツボです。

このツボは内関と同様に、消化器系の諸症状を軽減する効果があるとされています。足三里は、膝蓋骨下の靭帯(じんたい)の外側のくぼみから指4本分に位置するツボです。このツボを押すと消化器系の諸症状のほか、膝の痛みや足のしびれ等の軽減が期待できます。

症状がひどい場合は医療機関を受診

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ここまで解説したとおり、つわりの症状や時期には個人差があります。症状がひどい場合は、家事や仕事に支障を来すケースも少なくありません。無理をすると胎児や母体に悪影響を及ぼすリスクがあります。

そのため、つわりの症状がひどいときには、無理せず家事や仕事を休むことも大切です。妊娠悪阻を発症し、長期間水分摂取ができないと、意識障害や脳の後遺症につながる可能性があります。つわりの症状が重く、吐き気や体調不良が続く場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。

医療機関を受診する目安は、食事を十分に摂取できず、脱水症状や栄養失調を引き起こしているときです。医療機関を受診し、適切な治療を受ければ、つわり症状の改善につながるでしょう。

つわりのときの食事について

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つわりの症状がひどいときには、十分に食事を摂取できないこともあります。しかし、胎児のためにも、栄養バランスの整った食事を摂取することが大切です。ここからは、つわりのときの食事について解説します。

食べたいものを食べる

特定の臭いに敏感になった場合、食べ物の匂いを嗅いだだけで吐き気を催すこともあります。しかし、何も食べなければ栄養失調を引き起こすリスクがあるので注意が必要です。つわりの症状に悩んだときには、食べられるものを食べるようにしましょう。

通常、好きなものだけを食べる食生活を続けていると、栄養バランスが偏りがちです。特に妊娠中は胎児に十分な栄養を届けるためにも、食生活に気をつかう必要があります。しかし、つわりの時期は栄養バランスの多少の偏りは気にしないことも大切です。

妊娠初期の胎児はまだ小さく、母体に備えられた栄養で成長できます。つわりの症状がひどいときには、夫や家族に食べたいものを用意してもらうのも良いでしょう。

ビタミンB群を積極的に摂取する

妊娠中には、特に摂取すべき栄養素があります。それは、ビタミンB群です。具体的には、葉酸やビタミンB1、ビタミンB6等です。葉酸とビタミンB6には、つわりの代表的な症状である吐き気を軽減する効果があります。

葉酸は、ほうれん草や小松菜、きのこ等に多く含まれています。ビタミンB6が多く含まれる食べ物は、赤パプリカ、玄米等です。また、ビタミンB1が不足すると、ウェルニッケ脳症と呼ばれる疾患を引き起こすリスクがあります。

ビタミンB1が多く含まれる食べ物は、豚肉や豆腐、赤味肉、ナッツ等です。つわりの影響で十分に食事を摂取できない場合は、ビタミンB群のサプリメントを活用するのも手段の一つです。ただし、サプリメントによる栄養補給は摂取量に注意が必要ですので、まずは医師や薬剤師等の専門家に相談をしましょう。

熱いものは冷ましてから食べる

つわりの時期を乗り越えるためには、食事の摂取方法の工夫も必要です。女性の中には、炊き立てのご飯の臭いでつわりの症状が出る人もいます。ご飯を冷ませば臭いが気にならなくなることもあるため、ぜひ試してみましょう。

冷たい食べ物は、つわりの症状が出ているときでも摂取しやすい傾向があります。例えば、トマトやキュウリ、グレープフルーツ、イチゴ等です。キュウリは低カロリーで水分が多く含まれているため、脱水症状になるのを防げます。

ただし、妊娠中は加熱が不十分な食べ物は避けるように心がけましょう。加熱が不十分な肉類や魚介類を摂取すると、リステリア菌に感染しやすくなります。例えば、生ハムやスモークサーモン等は注意しましょう。

こまめに水分を補給する

つわりの症状がひどい場合は、十分に食べ物や飲み物が摂取できないこともあります。症状がひどいときには食べられるものを食べるようにすることが大切です。

また、特に気を付けたいのが脱水症状です。つわりの症状がひどいときでも、水分は十分に摂取するようにしましょう。臭いに敏感になっている場合は、無臭のミネラルウォーターや炭酸水がおすすめです。

ただし、糖分が多く含まれたスポーツドリンクやジュース類といった飲み物は避けるようにしましょう。手軽に水分補給できるよう、自宅にウォーターサーバーを設置するのも手段の一つです。

つわりに関するQ&A

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妊娠初期のつわりには個人差があるため、将来に備えて知識を深めておくことが大切です。最後に、つわりに関するよくある質問を紹介します。

つわりを悪化させる要因は?

症状の出方には個人差がありますが、食事や生活習慣が影響することもあります。特に栄養バランスの偏りは、つわりを悪化させる原因の一つです。妊娠中は、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維をバランスよく摂取するようにしましょう。

その他にも、生活習慣の乱れやストレスは、つわりを悪化させる原因になります。妊娠中は可能な限りストレスを溜めず、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。特に、喫煙や飲酒は控えましょう。

また、つわりの悪化には、運動不足も関係しています。運動不足は血行や代謝を低下させ、ホルモンバランスや自律神経の乱れにつながることがあります。体調が良いときには、適度な運動をするようにしましょう。

つわりになりやすい人の特徴は?

妊娠初期には、多くの女性がつわりを経験します。一方で、5人に1人程度の女性は、つわりを経験しないともいわれています。これは、つわりになりやすい人となりにくい人がいるためです。

つわりになりやすい人の特徴は、体調の変化に敏感な人や精神的なストレスを感じている人などが挙げられます。その理由として、つわりの症状は、ホルモンバランスの変化によって引き起こされていると考えられているからです。

ストレスは、ホルモンバランスに影響を与える可能性があります。ストレスを感じるとホルモンバランスが乱れ、つわりの症状が出やすくなるでしょう。つわりの症状を軽減するためにも、心身のバランスを良好な状態で維持することが大切です。

つわりと流産の関係は?

一般社団法人日本生殖医学会の資料によると、1回の妊娠における流産の頻度は平均で15%であることがわかっています。

※出典元:一般社団法人日本生殖医学会「一般のみなさまへ」

このうち、妊娠12週までに流産する割合が高い傾向にあります。妊娠初期の流産の多くは、胎児の染色体異常です。そのため、妊娠初期に流産しても、つわりが原因ではありません。一方で、つわりがあると流産リスクが軽減するといった研究結果もあります。

つまり、妊娠が正常に継続しているからこそ、つわりが起きるともいえます。ただし、つわりの有無には個人差があるのが現状です。つわりがなければ流産リスクが高まるというわけではありません。

妊娠に備えてつわりの基礎知識を把握しておこう

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程度の違いはあれど、妊娠初期には多くの女性がつわりを経験します。

症状がひどい場合は、家事や仕事に悪影響を及ぼす可能性もあります。重症化すれば、入院治療が必要になることもあるでしょう。しかし、つわりの症状を軽減させる方法もいくつかあります。

妊娠しないとどのような症状が出るかわからないため、将来に備えて軽減する方法を把握しておくことも大切です。つわりの時期を乗り切り、快適なマタニティーライフを過ごしましょう。

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