更年期の頭痛がひどい場合の治し方は?おすすめの薬や対処法を解説
PROFILE
1 更年期に起こりやすい頭痛の種類
2 更年期に頭痛が発生する原因
3 更年期の頭痛を軽減する対処法
4 更年期に発生する頭痛の治療法
5 更年期の頭痛を予防するには
6 更年期頭痛を理解して快適な毎日を送ろう
更年期に起こりやすい頭痛の種類
女性の体は、ホルモンバランスの影響を受けやすい側面があります。そのため、更年期に突入すると、ホルモンバランスの変化により、頭痛の頻度や種類が増えることもあります。これまでは頭痛に悩まされなかった方でも、更年期特有の頭痛が起きる可能性もあるため、特徴を把握しておくことが大切です。
片頭痛
更年期に起こりやすい頭痛の一つは、片頭痛です。片頭痛とは、その名のとおり頭の片方だけが痛む頭痛です。片頭痛が起きると、次のような症状が現れることがあります。
● 脈を打つような痛み
● 後頭部を締め付けられるような痛み
● ささいな動作で悪化する
● 悪心や吐き気を伴う
● 光に敏感になる
● 音に敏感になる 等
片頭痛が起きる前には、視覚や感覚に異変が生じることもあります。主な視覚症状は、光や線が見える、視野の一部が欠ける等です。感覚症状としては、チクチクした感覚や感覚鈍麻等が現れることがあります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛とは、一次性頭痛の中でも最も多いタイプの頭痛です。長時間同じ姿勢でいた時に、締め付けられるような痛みを感じた場合は、緊張型頭痛の可能性があります。緊張型頭痛の症状や特徴は、次のとおりです。
● 頭部全体が締め付けられるような痛み
● 肩こりとともに頭痛が起きる
● 圧迫感がある 等
緊張型頭痛は片頭痛と異なり、脈を打つような痛みは起こりません。頭痛の程度は軽度から中程度で、日常生活に大きな支障はないものの、頻繁に起きる場合は治療を必要とします。緊張型頭痛は、30代~40代の女性に多く見られる頭痛の一つです。しかし、更年期に突入したことを機に、緊張型頭痛を経験する方も少なくありません。
薬剤誘発性頭痛
薬剤誘発性頭痛とは、鎮痛剤を過剰に使用することで起こる頭痛の一つです。何らかの痛みに対し、鎮痛剤を頻繁に使用している時に頭痛が起きる場合は、薬剤誘発性頭痛の可能性があります。薬剤誘発性頭痛の主な症状は、次のとおりです。
● 毎日痛む
● 起床時に症状が現れることが多い
● 鎮痛剤を服用しても改善されない
● 頭痛とともに吐き気を感じる
● 集中力が低下する 等
薬剤誘発性頭痛は、鎮痛剤の服用を中止することで改善されるケースが多い傾向があります。ただし、約3割は頭痛が再発するといわれています。症状が重度の場合は、入院治療が必要です。
※参考:日本頭痛学会
病気が原因の頭痛
更年期の頭痛には、命の危機に直結する病気が隠れている可能性もあります。頭痛には、一次性頭痛と二次性頭痛の2種類があります。一次性頭痛とは、明確な原因や疾患が見当たらない頭痛のことです。
上記で紹介した片頭痛や緊張型頭痛は、一次性頭痛に該当します。一方の二次性頭痛は、何らかの病気を起因とする頭痛のことです。病気が原因の頭痛の例は、次のとおりです。
● くも膜下出血
● 脳出血
● 脳梗塞
● 脳腫瘍 等
上記のような脳疾患以外でも、急性緑内障発作や代謝異常等により、二次性頭痛が引き起こされることもあります。二次性頭痛の場合、診断が遅れると命にかかわるため、速やかに病気の治療が必要です。
更年期に頭痛が発生する原因
更年期に頭痛が発生する原因は、ホルモンバランスの変化だけではありません。頭痛は、さまざまな身体的・精神的要因が複雑に絡み合って引き起こされます。ここからは、更年期特有の頭痛が発生する主な原因について解説します。
エストロゲンの減少やゆらぎ
頭痛が発生する原因は、その種類によって異なります。片頭痛の場合、エストロゲンと呼ばれる女性モルモンの変化によって引き起こされると考えられています。女性は、ホルモンの影響を受けやすいということが起因しているのでしょう。
そのため更年期に片頭痛が起きる原因も、エストロゲンの減少と考えられます。女性は8~9歳頃からエストロゲンの分泌が始まり、20歳を迎える頃に安定します。しかし、閉経の前後5年間程度は、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。
片頭痛は、特にエストロゲンの分泌量が減少する閉経前に悪化しやすいといわれています。閉経後にはエストロゲンの分泌量の変動が和らぎ、片頭痛の症状が徐々に改善するのが一般的です。
ストレスの蓄積
緊張型頭痛は、ストレスによって引き起こされると考えられています。ストレス反応が神経や筋肉を過度に緊張させ、脳内の痛みの調整機能を乱し、緊張型頭痛が引き起こされるというわけです。
これまで緊張型頭痛を経験したことがなくても、更年期特有の強いストレスが起因となり、引き起こされることもあります。日常的に精神的ストレスにさらされている場合は、緊張型頭痛になりやすいので注意が必要です。
緊張型頭痛は年齢による差異や傾向は少ないものの、同時に肩こりや首の痛み等を感じるケースも少なくありません。緊張型頭痛の誘発を避けるためには、リラックスを意識してストレスを蓄積しないよう心がけることが大切です。
気候や気圧の変動
更年期の頭痛は、気象の影響を受ける可能性もあります。これは、気圧センサーの役割がある内耳が敏感になるためです。内耳が気候や気圧の変動を感じると、自律神経が乱れ、頭痛を誘発します。
また、急激な気圧の変化は内耳だけでなく、血管や神経にも影響し、頭痛が悪化することも少なくありません。気象の変化に敏感な方は、更年期になると特に頭痛が起きやすいといわれています。
このような頭痛は、低気圧が接近した時や台風の時、梅雨時期等に起こる傾向にあります。普段から気象の変動が体調に影響しやすい場合は、更年期頭痛の悪化に注意が必要です。
高血圧
女性は更年期に突入すると、高血圧になりやすい傾向にあります。その理由は、更年期を迎えるにあたってエストロゲンの分泌量が減少するためです。エストロゲンの分泌量は、脳の視床下部で調整されています。
更年期を迎えてエストロゲンの分泌量が減少する一方で、視床下部は増加させようとします。これにより、血圧のバランスを維持している自律神経の働きが不安定になり、血管の柔軟性が低下し、高血圧につながる可能性があるというわけです。
自律神経は血液のバランスだけでなく、体内のさまざまな働きに影響します。これまでは血圧が安定していた方でも、更年期を機に自律神経のバランスが崩れ、高血圧を引き起こすこともあります。
更年期の頭痛を軽減する対処法
更年期に伴う頭痛は、多くの女性が経験する症状の一つです。適切な対処法を把握しておけば、症状を軽減することが可能です。症状を軽減するためには、市販薬の服用やサプリメントの活用等の方法があります。
市販薬を飲む
頭痛の症状がある時には、市販薬を服用するのも一つの手です。頭痛用の市販薬には、次のような種類があります。
● 更年期向けの薬
● 漢方薬
● 頭痛薬 等
上記のような薬は、ドラッグストアやオンラインショップ等でも販売されています。どの薬を選べばよいか迷った時には、ドラッグストアの薬剤師に相談してみましょう。なお、漢方薬については、このあとの「更年期に発生する頭痛の治療法」で詳しく紹介します。
サプリメントを活用する
更年期頭痛に悩まされた時には、市販薬の他にサプリメントを活用する方法もあります。サプリメントの中には、頭痛に効果のある成分が含まれたものもあります。頭痛に効果のある成分は、次のとおりです。
● エクオール
● マグネシウム
● ビタミンB2 等
エクオールは、大豆から生み出される成分の一つです。大豆製品に含まれるイソフラボンは、エストロゲンと似た働きをすします。しかし、日本人の多くは、イソフラボンからエクオールを生成する腸内細菌を保有していません。
このような方は、サプリメントの摂取によって手軽にエクオールを取り入れることが可能になります。また、人によって差はあるものの、マグネシウムやビタミンB2の摂取により、片頭痛が改善されることもあるようです。
ツボを押す
頭痛を和らげるためには、ツボを押すのも効果的といわれています。頭痛に効果のあるツボの例は、次のとおりです。
ツボ | 場所 | 場所の詳細 |
---|---|---|
百会(ひゃくえ) | 頭 | 両耳と鼻の延長線が交わるところ |
風池(ふうち) | 頭 | 耳の後ろの骨と後頭部のくぼみの中間 |
片頭点(へんとうてん) | 手 | 薬指の第二関節の小指側 |
手三里(てさんり) | 手 | 肘を曲げた時にできる腕の外側のしわから指3本分下 |
足臨泣(あしりんきゅう) | 足 | 小指と薬指の骨が合流する部分 |
ツボ押しによる効果は、頭痛の種類によって異なります。片頭痛の場合、片頭点、手三里、足臨泣のツボを押すと、痛みを和らげられる可能性があります。緊張型頭痛に効果があるとされているツボは、百会と風池等です。
医療機関を受診する
更年期頭痛の症状によっては、医療機関を受診したほうがよいケースもあります。頭痛の原因が更年期特有のものではなく、命にかかわる危険な病気が隠れている可能性があるためです。
医療機関を受診したほうがよい頭痛の症状は、次のとおりです。
● 激しい頭痛
● 頭痛の頻度や強度が増している
● 頭痛以外に神経症状を伴う 等
頭痛の種類によっては、激しい痛みを伴うこともあります。痛みが突然発生した場合や、これまでに経験したことがないほど強い場合は、緊急性が高い病気の可能性があるため、医療機関を受診しましょう。
また、頭痛の頻度や強度が増している時は、治療が必要なこともあります。頭痛に加えて、視覚障害や麻痺等の症状がある時は、脳疾患のケースもあるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
更年期に発生する頭痛の治療法
更年期頭痛は、ホルモンバランスの変化やストレス等が原因で起こることも多く、治療法も多岐にわたります。頭痛の種類や症状の重さに応じ、適切な治療法を選ぶことが大切です。
ホルモン補充療法
頭痛の治療法の一つは、ホルモン補充療法です。ホルモン補充療法とは、ホルモン変化による更年期頭痛の改善を図るために用いられる方法です。通常は、ホットフラッシュや発汗の治療に用いられます。
しかし、片頭痛に対し、パッチやゲルを使用してホルモンを投与することもあります。ホルモン補充療法は更年期に伴う諸症状の他、骨粗しょう症や動脈硬化の予防、頻尿の治療で選択されることもあるようです。
ただし、ホルモン補充療法には副作用があるので注意が必要です。具体的には、性器出血や嘔吐、食欲不振等の副作用があります。また、乳がんや子宮体がん等の一部の病気を抱えている場合は、ホルモン補充療法を受けられないため、医師への確認が必要です。
漢方薬
市販薬や処方薬、ホルモン補充療法には、副作用のリスクがあります。副作用には個人差があるため、必ず現れるとは限りませんが、薬や治療による副作用に懸念がある場合は、漢方薬を選ぶのも一つの手です。
漢方薬は、比較的副作用が少ない薬です。更年期に伴う片頭痛や緊張型頭痛の場合、漢方薬の服用で症状が改善される可能性があります。漢方薬は、頭痛以外のさまざまな症状にも有効です。
更年期に伴う諸症状の改善が期待できる漢方薬は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)等があります。また、現在抱えている病気によっては、ホルモン補充療法が選択できないこともありますが、漢方薬はホルモン補充療法を選択できない方でも服用できます。
更年期の頭痛を予防するには
更年期頭痛は、生活習慣やストレス管理によって予防できる可能性があります。頭痛の症状が強い場合、日常生活に支障を来すこともあります。より快適に更年期を過ごすためにも、生活における工夫を取り入れてみましょう。
ストレッチで血流を促進する
頭痛の予防には、血流の悪化を防ぐことも大切です。特に緊張型頭痛は長時間同じ姿勢が続くことで筋肉が緊張し、血流が滞ることで起こりやすくなります。血流を促進するためには、ストレッチが効果的です。
まずは、起床後や就寝前等にストレッチの習慣を付けましょう。ストレッチの習慣がない場合は、手軽にできることから始めるのがポイントです。首や肩を回すだけでも筋肉の緊張がほぐれ、血行を促進できます。
ストレッチ以外では、ヨガもおすすめです。ヨガは体を柔らかくし、血行を促進できる他、リラックス効果も期待できます。ただし、別の場所を痛める可能性もあるため、決して無理をしないようにしましょう。
適度な運動で汗を流す
更年期頭痛を予防するためには、適度な運動も効果的です。緊張型頭痛の場合、筋肉の緊張が原因になります。運動によって筋肉が温まると血流が改善し、首や肩の筋肉の緊張が緩和されるため、緊張型頭痛を予防できるでしょう。
また、更年期頭痛は、強いストレスによって引き起こされることもあります。そのため、予防するにはストレスを溜めないことも大切です。ウォーキングやジョギング等の有酸素運動は、血行を促進し、ストレス解消にもつながります。
更年期頭痛の予防効果を実感するためには、適度な運動を続けることが重要です。ただし、過度な運動は体に負担がかかるので注意が必要です。毎日30分程度の無理のない運動を心がけましょう。
規則正しい生活を維持する
ホルモンバランスは、生活習慣が影響することがあります。更年期頭痛はホルモンバランスの変化によって引き起こされることもあり、予防するためには規則正しい生活を維持することが大切です。
規則正しい生活は、ホルモンバランスの乱れを抑制し、安定させる効果が期待できます。生活に乱れがある場合は、睡眠や食事等を見直してみましょう。例えば、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる、三食のバランスの取れた食事を取る等です。
また、規則正しい生活を送ることは、心身のリラックス効果が高まり、ストレスの軽減にもつながります。強いストレスは頭痛を誘発する原因になるため、ストレスを溜めない生活を意識しましょう。
正しい食生活を心がける
更年期頭痛はホルモンバランスの変化だけでなく、食生活も大きく影響すると考えられています。正しい食生活を心がけることで頭痛を予防し、症状を和らげられる可能性があります。
ホルモンバランスが乱れやすい更年期には、特に栄養バランスを意識した食事を摂取しましょう。特定の栄養素が不足すると、頭痛を引き起こしたり、悪化させたりすることもあります。
また、アイスクリームをはじめとする体を冷やしやすい食品は、頭痛の原因となることもあります。血行を促進し、頭痛を予防するためにも、体を冷やしやすい食品は避けるようにしましょう。
更年期頭痛を理解して快適な毎日を送ろう
更年期に伴う頭痛は、ホルモンバランスの変化だけが原因とは限りません。頭痛の種類の中には、生活習慣やストレス等が原因で引き起こされることもあります。頭痛の頻度や強度によっては、日常生活に支障を来すこともあるかもしれません。
しかし、工夫次第では、更年期頭痛を予防したり痛みを軽減できたりすることもあります。更年期頭痛を予防するためには、ストレッチや運動で血行を促進し、規則正しい生活を心がけることが大切です。
痛みが気になる時は、市販薬や漢方薬を頼るのも一つの手です。ただし、強烈な痛みやこれまで経験したことがない痛みの場合は、病気が隠れているおそれもあるため、すぐに病院を受診しましょう。