PMSの改善方法を徹底解説。症状を悪化させる原因や主な治療方法も紹介
PROFILE
1 PMSとは
2 PMSの症状
3 PMSの症状を改善させる方法
4 医療機関で行うPMSの主な治療方法
5 PMSの改善でよくある疑問
6 まとめ:PMSはセルフケアで改善も望める
PMSとは
PMSの正式名称は月経前症候群と言います。一般的には生理が始まる1週間〜2週間前に、身体的・精神的症状を発症します。ただ、症状といっても軽いものではなく、生活に支障をきたすレベルであることが多いです。そのため、仕事や私生活がままならなくなる人も少なくありません。
少なくともそのような症状に3カ月以上悩まされている場合、PMSの診断が下る可能性が高いです。
PMSの原因
PMSはたしかに存在する疾患ですが、発症する原因は明確にわかっていません。
ただ、現時点では生理が近づくと分泌される女性ホルモンの「エストロゲン」「プロゲステロン」が関わっているのではないかと言われています。
本来、エストロゲンとプロゲステロンは、女性の体をさまざまな側面から保つ役割があります。しかし、生理によって分泌されるホルモンが大きく増減し、体内のバランスが崩れて体調不良を引き起こしているとみられています。
また、食生活や生活習慣の乱れ、ストレスもPMSに関係しています。忙しいときに寝不足や粗食を繰り返しているうち、いつの間にか生理周期がズレたという経験はありませんか?このような月経周期のズレは生活習慣の乱れが原因です。
生活習慣の乱れはホルモンバランスを崩すため、PMSを発症しやすくなったり、ひどい症状を招くこともあります。
ライフステージで症状が変化することが多い
PMSはじつは年齢によって発症し、症状も変化します。
時期としては生理が始まっていれば10代から発症する可能性はありますが、性成熟期である20代〜40代が最も発症しやすいと言われています。性成熟期は女性の体が妊娠・出産しやすい時期であり、ホルモンや子宮の活動が活発なためです。
年齢によって症状も変化していき、20代は腹痛・頭痛等の身体的症状が目立ち、30代からはイライラや不安感等精神的症状が強く出るケースが多くなっています。また、出産経験の有無によっても、症状が精神的か身体的か変化しやすいです。一般的には出産経験がある人は精神的な症状がでやすく、出産経験がない人は身体的な症状がでやすいという傾向があります。
ただし、ここで厄介なのが体の中の変化以外にも、外的要因によってPMSは引き起こされることがある点です。たとえば仕事や私生活等のストレスによって症状が出始めることがあるため、内的要因以外にも症状の原因がある可能性があると言えます。
PMSの症状
PMSにどのような症状があるのかを知っておくと、体調不良の原因がPMSによるものだと自分で理解するのにも役立ちます。不調の原因がわかるだけでも不安感が拭えることもあるため、
症状について詳しく知っておくことは大切です。
じつはPMSの症状には、大きく分けて精神的症状と身体的症状があります。ここからはどのような症状があるのか、具体的に見ていきましょう。
精神的症状
PMSの精神的症状は次のようなものがあります。
● イライラ
● 気分の落ち込み
● 涙が勝手に出て止まらなくなる
● 不安感が強くなる
● 気持ちが落ち着かない
● 集中力ややる気の減退 等
PMSの精神的症状は、普段起きるような感情の起伏でないことが特徴です。たとえばいつもはあまり気にならないことでひどく落ち込んだり、我慢できることも必要以上にイライラする場合は
PMSの症状の可能性があります。
身体的症状
身体的症状には次のような症状があります。
● 腹痛
● 頭痛
● 腰痛
● 肌荒れ
● 胸のハリ
● むくみ
● のぼせ・ほてり
● 便秘
● 眠気
● 不眠
● 倦怠感・疲れやすい
● 過食または食欲不振 等
これらの身体的症状すべてが見られるとは限りません。一部の症状だけひどく出るケースもあり、逆に複数の症状が出ることもあります。また、身体的症状によって自分を責めたりふさぎ込むことで、精神的症状がひどくなることもしばしば見られます。
PMSの症状を改善させる方法
PMSの性質や症状が見えてくると、さまざまな要素によって症状がひどくなる可能性があることがわかります。症状を改善させるには薬を飲むだけではなく、多角的なアプローチが必要です。
そこで、ここからは具体的なPMS症状の改善策を解説します。
食事で改善効果のある栄養素を取り入れる
PMSの症状を和らげていきたいのなら、普段の食事バランスを整えるのにプラスして、PMSの改善に役立つ栄養素を積極的に摂取するのがおすすめです。
特にPMSの改善に役立つ栄養素をまとめたので、以下を参考に食事を見直してみてください。
PMS改善に役立つ栄養素 | 食品例 |
---|---|
ビタミンB6 | まぐろ・かつお等の魚牛・豚・鳥等のレバー |
ビタミンB1 | 豚肉 うなぎ たらこ 玄米ご飯 |
ビタミンB2 | 豚レバー うなぎ アーモンド鶏卵 納豆 |
鉄分 | 豚レバー しじみ 小松菜 まいわし 卵黄 |
ビタミンD | さけ まいわし さんま まぐろ めかじき キノコ類 |
ビタミンB6、ビタミンB1・B2は神経伝達物質を作り、物質の作用を高める効果があります。体内物質を行き渡らせ、エネルギー代謝をスムーズにすることでPMSを和らげることが可能です。
加えて、ビタミンDは代謝や免疫を高める効果もあり、PMSによる症状の改善が見込まれています。さらにこれらのビタミン同士は他の栄養素の作用も高める役割もあり、体調を整えるためにも重要です。
また、鉄分は生理によって足りなくなる血を作るために必要な栄養素です。そもそも貧血がひどい人はPMSもひどくなりやすいため、悪化を予防することにも役立ちます。
なお、鉄を摂取する際は、ビタミンCを含む野菜やフルーツも一緒に食べるのがおすすめです。鉄分の吸収がよくなるので効率的に栄養素を摂取ができます。
適度に運動をする
PMS改善には、適度な運動も大切です。運動をすることでセロトニンが分泌され、精神的症状である気分の症状も改善しやすくなります。また、筋肉の緊張をほぐすことで副交感神経を優位にし、ストレスを緩和する効果もあります。
特に有酸素運動はこれらの体内物質を多く分泌し、ストレスを緩和しやすいです。なお、有酸素運動は、次のような運動が挙げられます。
● スクワット(ハーフスクワット)
● 踏み台昇降
● もも上げ
● ウォーキング
● ランニング
● サイクリング 等
時間としては15分以上続けると効果が望めるでしょう。身体がぽかぽかするぐらいの運動を習慣化すれば、むくみ対策にも有効です。
睡眠の質を向上させる
睡眠の質を向上させることも、PMSの改善につながります。質の悪い睡眠はホルモンバランスを崩し、生理周期の乱れやPMS症状の悪化を招くためです。そのため、睡眠の質を向上させるだけでPMSの改善を狙うことができます。
睡眠の質を上げるためには、次のような行動を取り入れ、規則正しい生活を心がけましょう。
● 入浴で身体を温める
● 起床後に日光を浴びる
● 温かい飲み物を飲む
● 深夜にスマホやパソコン画面から出るブルーライトは避ける 等
また、睡眠時間を十分にとることもポイントです。一般的に約7時間前後の睡眠が理想的といわれているので、7時間を目安に睡眠時間もしっかり取るようにしましょう。
カフェイン・アルコール・喫煙を控える
PMSの期間は簡単に言えば、神経が過敏になる時期です。そのため、カフェイン・アルコール・喫煙といった刺激物を控えることもおすすめします。
これらは神経に影響を与え、より精神的症状を強めてしまう恐れがあるためです。また、喫煙は血行も悪くなりやすく、むくみやすいPMS・生理の期間には相性が悪いと言えます。
普段アルコールを飲んでいる人は飲む量をセーブしたり、生理期間中は控えるようにしましょう。
できるだけストレスを避けてリラックス
ストレスを避けることや、なるべく心身ともにリラックスすることもPMSによる症状を改善する策の一つです。
ストレスが原因でPMS症状が悪化することはわかっているため、なるべくその要因を無くすことは大きな意味を持ちます。
PMS症状が出やすい期間は余裕がある生活を過ごし、趣味を楽しんだり好きなものを食べたり気分転換をするとよいでしょう。また、緊張をほぐすヨガや半身浴、ゆったりとした睡眠等も効果的です。
ストレスを解消したりリラックスできる方法は人それぞれなので、自分が過ごしやすい方法を探しておきましょう。
生活に支障がでる場合は受診
もし著しく生活の質を損なうほどPMSの症状が重い場合は、迷わず医療機関を受診してください。いつもどおりの私生活や仕事が継続できないのなら、十分に相談をする理由になります。
生理に関することは「我慢しなきゃ」「こんなことを相談するのは…」といった考えを持つ人も少なくありませんが、我慢しても何も得はありません。また、病気が隠れている可能性がないとは言えないため、可能性を排除する意味でも受診は大切です。
PMSの相談ができる医療機関は次の3つが一般的です。
医療機関 | 科の特徴 |
---|---|
婦人科 | 妊娠・出産をはじめ子宮の病気・疾患・障害等、女性のさまざまな不調の診療を行う。 |
心療内科 | 精神的なことを起因とした体の不調を診断し、心身ともに治療を行う。 |
漢方内科 | 漢方を用いて自然治癒力を高め、治療を行う。 |
もし一度もPMSの診断を受けていない場合は、まず婦人科で受診することから始めてみましょう。
医療機関で行うPMSの主な治療方法
医療機関で行うPMSの治療方法は、4つほどあります。詳細は選ぶ診療所によりますが、基本的には生活指導以外にカウンセリングと薬による治療がメインです。
ここからはPMSの診療が受けられる婦人科・心療内科・漢方内科等の詳しい治療方法をご紹介していきます。
カウンセリング
婦人科・心療内科・漢方内科共に、まずはカウンセリングを行うことが多いです。
特に精神的症状が強い場合は、カウンセリングで症状を理解し整理することで症状の緩和が期待できます。
また、カウンセリングでは認知行動療法も交えて治療を行うことが多いです。症状について掘り下げ、客観的に自身の状態を理解することができます。
症状への理解を深められれば、PMSによる負担を減らす方法を探ることができるでしょう。
低用量ピルの処方
症状が重く、痛み止め等各症状への対処療法では解決しにくい場合、低用量ピルを用いることもあります。低用量ピルとは、ホルモンバランスの変動抑制効果のある薬のことで、ホルモンを抑制して排卵を止めることができます。
ホルモンを薬で抑制することで、PMS特有の情緒不安定や頭痛等の身体的症状も和らげることが可能です。ただし妊活中等、妊娠を望んでいる場合は、妊娠を阻害してしまうため使うことができません。
その場合は漢方等、妊娠に影響がない治療薬を用いることになります。
漢方薬の処方
PMSの治療には漢方薬を用いるケースも珍しくありません。漢方は症状へ直接作用させるのではなく自然治癒力を高めて体質を改善し、症状を和らげるものです。
そのため、たとえば西洋薬の頭痛薬のように即効性があるとは限りませんが、緩やかに体調を整えてくれる作用があります。また、症状に合わせて生薬を組み合わせられるため、個々の体質に合わせた治療をしやすいです。副作用が比較的少ないという特徴もあります。
抗うつ剤の処方
精神的症状が強い場合は抗うつ剤を処方し、不安感等を和らげる治療を行うことがあります。薬の種類は処方によりますが、基本的には精神的症状を引き起こす脳内物質を阻害する働きがあるものが選ばれることが多いです。
生理前の1週間等期間を区切って抗うつ剤を服用し、極端な精神的負担を軽減していきます。
PMSの改善でよくある疑問
近年PMSは広く知られるようになりましたが、まだまだ疑問が多い人も少なくないでしょう。ここからはPMSの改善でよくある疑問を紹介します。
同じ疑問がある人はぜひ参考にして解消していきましょう。
ミレーナはPMSを改善できる?
ミレーナは主に避妊の効果を目的とした避妊具なため、PMSの改善は望めない可能性があります。
ミレーナは本来、受精卵の着床予防や生理痛の軽減、過剰な月経症状の改善に用いられています。
具体的には子宮内で黄体ホルモンを継続的に放出し、子宮内膜が厚くならないようにすることで受精卵の着床を防ぐ仕組みです。また、その仕組みから、同時に過剰な月経症状を抑制する効果もあります。
ただ、ミレーナは子宮内膜への働きを抑制するだけにとどまるため、PMSの原因であるホルモン変動には作用しません。そのため、ミレーナでPMSの症状を改善させるのは難しいと言えます。
サプリでPMSは改善できる?
サプリで直接PMSを改善するのは難しいです。しかし、改善効果のある栄養素をサプリで摂取し、PMSの症状を緩和する方法はあります。
たとえばPMSに効果的なビタミンB6、ビタミンB1・B2、ビタミンD、鉄分等は、食べ物から摂取できるのが理想的です。
しかし体調が悪いと食事に気を使う余裕もないかもしれません。そんなときはサプリで栄養素の不足分を補うと栄養バランスを整えやすくなります。
まとめ:PMSはセルフケアで改善も望める
PMSは食事や運動、適切な睡眠やストレスの軽減等のセルフケアで改善できることもあります。体内バランスが崩れるとPMSは悪化しやすいため、原因となる生活習慣の見直しやストレスの解消は症状の改善に効果的です。
ただ一方でセルフケアだけでは改善しきれないほど、身体的・精神的症状が重いケースもあります。いつもの日常生活を送れていないと思ったときは、無理をせず医療機関を受診しましょう。