PMSは生理の2週間前から始まる?辛い症状を緩和させる方法を解説
PROFILE
1 PMSに関する基礎知識
2 PMSとPMDDの違い
3 PMSの症状が悪化する行動
4 PMSの症状を緩和するには
5 まとめ:PMSが気になってきたら生活を見直そう
PMSに関する基礎知識
PMSは正式には「月経前症候群」という疾患です。
一般的に生理前に起こり、身体的・精神的な体調不良を引き起こします。ただ、人によって表面化する症状や程度が異なるという特徴があります。
また、症状が始まる時期も人によって多少違うため、個人差という部分に特に左右される疾患です。ただ平均的に発症する時期等はわかっているため、どのような動きで体に影響を与えるのか知っておくと症状に備えやすいです。
まずはPMSの基礎知識として、始まる時期や発生する原因について解説していきます。
始まる時期
PMSは生理の1〜2週間前のタイミングで発生することが一般的です。しかし人によっては2週間前に始まる人もいれば、3日前にまとめて症状が出ることもあります。症状の表れ方にも個人差があり、明確に決まった症状がありません。
ただ同時期に起きる不調は、より精神症状が強く出るPMDDの可能性もあり、どちらを発症しているかの判断は診断が必要です。
なお、年齢で言えば、20~40代の性成熟期に最も発症しやすい傾向があります。女性の体が妊娠・出産しやすい活発な時期は体内物質の変化により、PMSになりやすくなっています。
発生する原因
PMSを発症する正確な原因は解明されていません。
ただ現時点では「エストロゲン」「プロゲステロン」というホルモンの影響が指摘されています。女性の体の働きを正常に保つために分泌されるものですが、生理周期の影響で体内で増減し、不調を引き起こしていると言われています。
また、一方でホルモンバランスの異常が原因という説もあり、明確な原因がはっきりしていないのが現状です。
発生する割合
PMSは生理があるすべての女性が発症するとは限りません。しかし生理がある女性の約20~50%がPMSで、そのうち3〜5%がPMDDであると言われています。
一方で女性の75%は生理前の不快な症状を自覚しているという調査結果もあり、診断を受けていないだけで潜在的なPMSが隠れていることも考えられます。割合から見てもPMSはどのような女性でも発症する可能性がある疾患と言えるでしょう。
※参考:田町メンタルクリニック
※参考:日立保険サービス
終わる時期
PMSは生理の開始、つまり経血が出始めると症状が落ち着きます。
たとえば生理寸前までは理由なく落ち着かない気持ちも、まるでスイッチを切り替えるように急に気持ちが落ち着くことがあります。身体的症状は生理中に発症する人もいるためわかりにくいですが、特に精神的症状は出なくなることが多いです。
もし生理が始まっても多くの症状が継続する場合は、別の病気の可能性もあるので注意しましょう。
PMSとPMDDの違い
PMSとPMDDは名前も似ており、違いがわかりにくいと感じることもあるかもしれません。しかしこの2つは明確に異なり、症状にも大きな差があります。
自分がどちらを発症しているのか見極めるためにも、それぞれを正確に理解しておく必要があります。ここからはPMSとPMDDの違いを詳しく見ていきましょう。
PMS(月経前症候群)とは
PMSとは、生理前に体と心が不安定になり、腹痛や倦怠感等の明確な症状として不調が出る状態のことです。人によっては日常生活に支障をきたす場合もあり、仕事ができない等死活問題になることも珍しくありません。
また、PMSには身体的症状と精神的症状の2種類があり、部分的または複数の症状が表れることもあります。
一般的にPMSで見られる症状は次のとおりです。
身体的症状 | 精神的症状 |
---|---|
1. 腹痛 2. 頭痛 3. めまい 4. 吐き気 5. 便秘や下痢 6. 動悸や息切れ 7. 乳房が張る(もしくは痛む) 8. にきびや肌荒れ 9. むくみやしびれ 10. 不眠症 等 | 1. 不安感 2. 倦怠感(だるさ) 3. 易怒性(イライラ) 4. 集中力低下(記憶力の低下) 5. 憂鬱感 6. 神経が過敏になる 等 |
PMSの治療法
PMSを治療する場合は、カウンセリング・生活習慣の指導・薬物療法等が用いられます。一般的にはカウンセリングや生活習慣の指導等の非薬物療法から始め、必要に応じて西洋薬もしくは漢方薬を処方することが多いです。
それぞれの治療法には次の役割と狙いがあります。
● カウンセリング・・・症状を把握・整理する/相談することで不安感を軽減
● 生活習慣の指導・・・日常生活でホルモンバランスや体調を整えるサポートをする
● 西洋薬(痛み止めや低用量ピル、抗うつ薬等)・・・症状の一時的な抑制をする
● 漢方薬・・・体調を整えて症状を改善させていく
PMDD(月経前不快気分障害)とは
PMDDは「月経前不快気分障害」と言い、特に精神的症状が強く出るPMSの一種です。そのため、PMSと併発する場合もあります。
なお、PMDDでは症状に次のような特徴が見られます。
特徴① | 特徴② |
---|---|
1. 強い易怒性がある 2. 必要以上の不安感や絶望感 3. 抑うつ感がある 4. 緊張しやすく神経が過敏 | 1. 集中力が著しく下がる 2. 関心があったものへの興味がなくな る 3. 物事へのやる気がなくなる 4. 必要以上の疲労感 5. 食欲の変化(減退または過食等) 6. 睡眠障害がある 7. 感情のコントロールがしにくい 8. もともとPMSの身体的症状が強い |
「不快気分障害」という名がつくように、特に精神面でコントロールできないような不安定さがあることが特徴です。
セルフチェックでは上記の特徴1の症状が1つ以上あり、特徴2の症状のうち1つ以上が存在して合計5つ以上の症状がある場合、PMDDの疑いがあると言われています。
ただし正確な判断はあくまでも専門の医療機関での診断が必要です。疑いがあると思った人は一度関連する病院で診察を受けてみてください。
PMDDの治療法
PMDDの治療は基本的にPMSと似た方法が取られますが、薬の種類は違うこともあります。たとえば精神的症状が重い場合は、抗うつ薬を一時的に使用します。精神的症状が強く出るタイミングで薬を服用することで、症状を和らげることが可能です。
また、PMSと同じく低用量ピル(経口避妊薬)を使うことでホルモンの分泌を抑制し、症状を起こしにくくする方法が取られることもあります。
ただし、PMDDだからといって必ず薬を服用しなければならないとは限りません。症状が軽い場合は薬を使用しないケースもあります。
PMSの症状が悪化する行動
じつは日常のちょっとしたことで、PMSの症状を悪化させてしまうことがあります。PMSは体も過敏になりやすいため、きっかけ一つで大きな症状を招いてしまうこともあります。
PMSを悪化させないためにも、避けるべき行動を見てみましょう。
不安な症状を我慢する
実は、PMSは不安な症状を我慢し続けるだけでも悪化のリスクがあります。
そもそもPMSはストレスとの関係が密接です。ストレスが強い状況が体への刺激となり、余計にひどい症状を招いてしまうこともあります。
PMSの疑いがある場合はなるべくストレスが少ない状況で、落ち着いてリラックスできるよう過ごすことが大切です。
飽和脂肪酸の摂り過ぎ
PMSの疑いがある間は肉類(飽和脂肪酸)の摂り過ぎにも注意が必要です。肉類は食べ過ぎるとPMS症状が悪化しやすいためです。
同栄養素には体内で炎症を促進してしまう作用があり、頭痛や腹痛等を悪化させやすくなります。肉類を頻繫に摂ることが多い人は特に量に気をつけておきましょう。
甘いものの摂り過ぎ
PMSでストレスが溜まると、甘いものが食べたくなる人もいるかもしれません。しかし、甘いものの食べすぎにも注意が必要です。甘いものは血糖値の急上昇・急降下を起こすため、血糖値変化によって精神的にも不安定な状態を引き起こしやすくなります。
そのため、PMSのときは砂糖をメインに使った血糖値が急激に上がる甘いものは避けるとよいでしょう。
もし甘いものが食べたいときは、さつまいも等自然な甘みの血糖値上昇が緩やかなものを選んでください。
アルコール摂取・カフェイン摂取・喫煙習慣
PMSは体内バランスの乱れによって、神経が過敏になる期間です。そのため、コーヒーや紅茶・日本茶等に含まれるカフェインの摂り過ぎやアルコールの摂取でも症状が悪化する恐れがあります。
PMSによって脳が興奮している状態がカフェインやアルコールによってさらに活性化され、緊張や不安感が強まる可能性があるからです。そのため、いつもならリラックスできる一杯でも、反対に体調を悪化させてしまうことがあります。
また、喫煙は血行不良のもとになり、やはりPMSを悪化させてしまう要因となります。
PMSのときは喫煙を控え、なるべくノンカフェイン等の飲み物を選び、リラックスタイムを過ごすことがおすすめです。
PMSの症状を緩和するには
PMSの症状を緩和するには、普段の生活習慣を見直すことも大切になってきます。規則正しい生活を送っていると思っている人でも、どこかが偏っていてPMSに影響を与えているかもしれません。
また、PMSは月経の2週間前から症状が出ることを考えると、普段から生活習慣の改善を意識する必要もあります。改善策はすぐにでも簡単に取り入れることができるため、ぜひ試してみてください。
栄養をしっかり摂る
PMSの症状緩和には、普段からバランスの整った食事でしっかり栄養を取ることが大事です。ただ、加えてPMSの場合は特に次のような栄養素も積極的に摂取することをおすすめします。
症状緩和に役立つ栄養素 | 目的・効果 | 食品例 |
---|---|---|
マグネシウム | イライラや不安感を軽減する (セロトニンを作りやすくなる) | アーモンド そば |
カルシウム | 牛乳 チーズ | |
ビタミンB6 | まぐろ・かつお等の魚 牛・豚・鳥等のレバー | |
ビタミンB1 | 神経伝達物質を作る 体内物質の作用を高める | 豚肉 うなぎ たらこ 玄米ご飯 |
ビタミンB2 | 豚レバー うなぎ アーモンド 鶏卵 納豆 | |
鉄分 | 貧血軽減 | 豚レバー しじみ 小松菜 まいわし 卵黄 |
ビタミンD | 代謝や免疫を高める むくみ抑制 | さけ まいわし さんま まぐろ めかじき キノコ類 |
DHA・EPA | 飽和脂肪酸を避けて栄養を摂 る (肉類を避けるため積極的に摂る) | サケ サバ イワシ |
これらの栄養素は食べ物で摂取できるのが理想的ですが、難しい場合はサプリ等も活用してください。1日のうちでバランスよく栄養素を摂取していくとよいでしょう。
十分な睡眠時間を確保する
十分な睡眠で体を休めることもPMSの症状緩和に大きく貢献します。睡眠は体を休めて整える役割があるため、症状を悪化させない体づくりができます。
じつは睡眠時間が短い人はPMSの症状が重くなりやすいと言われており、睡眠は体調を整えるうえで重要なキーです。睡眠時間はしっかりとって、強い体づくりをしていきましょう。
なお、睡眠時間の目安としては毎日約7時間程度の睡眠が好ましいです。
適度な運動を心がける
PMSの症状緩和策として適度な運動もおすすめです。体を動かすことでセロトニン等の分泌により、気分転換になることも期待できます。
また、なかでも運動は有酸素運動が特におすすめです。最低15分から1時間程度、体が温まるくらい運動すれば生理前の症状やむくみ予防にも効果があります。ぜひ取り組みやすい運動から始めてみてください。
なお、日常で取り入れやすい主な有酸素運動は次のものがあります。
● スクワット(ハーフスクワット)
● 踏み台昇降
● もも上げ
● ウォーキング
● ランニング
● サイクリング
PMS日記をつける
PMSの緩和のために医師も推奨する方法のひとつに、PMSの症状などを記録したPMSをつけることが挙げられます。
定期的に記録することで、PMSが起きた日の食事内容や行動がわかり、原因となった可能性を探ることができます。また、生理から何日後ぐらいにPMSの症状が出たか、どの日が症状が強かったか、などからPMSが起こりそうな日を予測でき、早めの対処ができる可能性もあります。
さらに、その結果PMSへの不安が和らぎ、ストレスが緩和されるのもPMSの対策に有効です。
医師に相談する
PMSの症状が強いのでは、と感じる場合は、我慢せずに医師に相談する選択肢も考えましょう。生理に関連する不調は我慢してしまう人も多いですが、通常どおりに日常生活を送れない場合は耐える段階を越えています。
また、最初は軽程度のPMSでも放置することで悪化することもあります。場合によってはPMDDを併発することもあるため、無理は禁物です。症状が気になる場合はぜひ1度最寄りの診療所を利用してください。
なお、PMSは主に次の診療所で治療を行うことが一般的です。
● 婦人科・・・女性特有の不調を治療する
● 心療内科・・・精神的症状を起因とする体調不良を治療する
● 漢方内科・・・東洋医学を用いて自然治癒力を高めて改善・治療する
まとめ:PMSが気になってきたら生活を見直そう
PMSは生理の1〜2週間前に目立った症状が出ます。人によって症状に差はありますが、生活がままならないほどの症状が出ることも珍しくありません。しかし、PMSは我慢する以外の対策が見つかることもあり、症状を悪化させないためにも放置せず、治療するのがおすすめです。
もし症状が目立つ場合は、日常生活に原因が潜んでいるかもしれません。まずはバランスの取れた食事・睡眠・運動を心掛けましょう。
ただし、PMSはセルフケアだけでは症状緩和が難しい場合もあります。その際は無理をせずに、関連する病院へ相談をしてみてください。体調を整えて、PMSとうまく付き合っていきましょう。