PMSが原因で胃痛?今日から始められる対処法・予防法を解説
PROFILE
1 そもそもPMSとは
2 PMSで胃痛がおきる仕組み
3 PMS以外で疑う胃痛の4つの原因
4 PMSによる胃痛への4つの対処法
5 PMSの胃痛向けの3つの予防法
6 PMSや胃痛の悩みに役立つ制度
7 まとめ:生理前のPMSで胃痛が起きたら原因を把握しよう
そもそもPMSとは
PMS(月経前症候群)とは、生理(月経)が始まる3~10日ほどの間に心や体に表れる症状のことです。生理が始まると症状が落ち着く、または症状がなくなります。
人によって程度や内容に違いがあり、次の表のような症状が起こります。
症状が出る場所 | 症状の内容 |
身体 | 乳房の張り・痛み 腹部膨満感 腹痛 頭痛 関節痛・筋肉痛 体重増加 手足のむくみ |
精神 | 情緒不安定 イライラ 抑うつ 不安 眠気 集中力の低下 |
自律神経 | のぼせ 食欲不振 過食 めまい 倦怠感 |
参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会
PMSの詳しい原因はわかっていませんが、生理が始まると女性ホルモンが分泌され、そのホルモンの急激な変動がPMSの症状にかかわっていると考えられています。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、生理の後はエストロゲンが増加します。エストロゲンは肌や髪のうるおいを保つ等、女性の体にとってうれしい働きの多いホルモンです。
その後、排卵するとエストロゲンが減少し、プロゲステロンが多くなります。プロゲステロンは妊娠へ向けて、栄養や水を体へため込む働きのあるホルモンです。そのため、生理前に食べすぎやイライラ、むくみ、体重増加が起きやすくなります。
こうした激しいホルモンの分泌量の変化が、PMSの原因になっているのではないかと考えられているのです。
しかし、女性ホルモンの変化だけではPMSが起きる理由を説明できません。ホルモンの増減はストレス等も影響するため、他の理由もあるとされています。
また、人によって症状の程度が違うのもPMSの特徴です。日常生活が送れないほど重く、胃痛等の症状が出る人もいます。
PMSで胃痛がおきる仕組み
PMSで胃痛が起きるのは、女性ホルモンのプロゲステロンや、プロスタグランジンという物質、ストレスの影響です。
普段、胃は食べ物を胃酸で消化します。胃酸は非常に強い酸性のため、胃そのものも傷つけかねません。そこで普段は、胃は胃粘液により自分の体を守っています。
しかし、プロゲステロンは胃腸の機能を抑えてしまう可能性があり、胃酸が多く出て胃を傷つけてしまう場合があります。
また、プロスタグランジンは生理が始まる前に子宮を収縮させ、経血を排出させる働きを持つ物質です。しかし過剰に分泌されると胃痛や頭痛、吐き気を起こすことがあります。
そしてPMSにより自律神経の乱れやストレスも、胃痛の要因です。交感神経が働きすぎると胃の壁を守る粘液の分泌量が低下し、胃が胃液で荒れてしまいます。反対に、副交感神経が活発になると胃液が増加するため、こちらも胃が痛む可能性があるのです。
胃痛が起きるタイミングが特に生理前だけに集中している場合は、PMSの症状の1つかもしれません。
PMS以外で疑う胃痛の4つの原因
生理前に胃痛がおきる原因は、PMSとは限りません。ストレスや食生活の乱れ、ピロリ菌の感染、胃に関連した病気の可能性について解説します。
ストレス
ストレスになりえる出来事が毎月生理前後で起きている場合、定期的に胃痛を感じる可能性があります。
胃は普段、胃酸で刺激を受けないように胃粘液で覆われています。しかし体のさまざまな働きをつかさどる自律神経がストレスを受けてバランスが乱れると、胃粘膜の防御機能が低下し、胃酸による刺激が増えてしまうため胃痛が起きてしまうのです。
また、ストレスを感じたときに分泌量が増えるコルチゾールというホルモンも胃痛の原因になります。過剰に分泌されると胃の動きが弱まり、消化しようと胃酸が増加して胃を荒らしてしまうためです。
生理前にストレスを感じる出来事が、毎月同じタイミングで起きていないかチェックしてみましょう。
食生活の乱れ
胃粘膜は食生活によっても傷ついてしまいます。次のような食べ物を、ストレス発散等を目的に定期的にたくさん食べていないか、振り返ってみましょう。
● 脂質が多い食べ物(揚げ物、スナック菓子、カップ麺、レトルト食品等)
● 辛い食べ物(香辛料が多く含まれるもの)
● アルコール
● カフェイン(コーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンク等)
脂質が多い食べ物は、消化に多くの胃液を分泌するため、胃粘膜が荒れやすくなります。
辛い食べ物やアルコールも、胃粘膜を刺激する物質です。
また、カフェインを摂取すると胃痛が強くなる恐れがあります。交感神経が刺激され、血管が収縮することで、胃粘液の分泌が減少するためです。
脂質をとる量を減らしたり、カフェインレスのコーヒーを選んだり、できるところから摂取量をかえて胃痛が治まるか様子をみてみましょう。
ピロリ菌
ピロリ菌への感染により胃炎や胃潰瘍が起き、胃痛の原因になっている場合があります。
ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリです。胃の中でピロリ菌が動き回ると胃の壁や粘膜を傷つけてしまうため、胃酸の影響を受けやすい状態にしてしまいます。
日本ヘリコバクター学会によると、日本でピロリ菌に感染している人は少なくとも3,000万人以上です。上下水道の整備が進んでいなかった1950年以前に生まれた人では40%以上の人が感染し、以降はどんどん感染者数が減っています。
また、感染は幼児期が多く感染経路は経口感染や環境因子によるもの等、いくつかの経路が考えられています。
ワクチンのように予防する方法がないため、ピロリ菌の検査を受けたことがない、という場合には病院で検査を受けてみましょう。
参考:一般社団法人日本ヘリコバクター学会
胃に関連した病気
PMSやピロリ菌感染、食生活以外にも、胃痛を起こす病気が潜んでいる場合もあります。主に考えられる病気と胃痛以外の症状を見ていきましょう。
胃痛が起こる病気 | 概要 |
急性胃炎 | ・胃の運動機能が低下して起こる炎症 ・吐き気や下痢が起こることもある ・みぞおちあたりが痛む、むかむかする |
胃潰瘍 | ・胃の粘膜や組織が深くえぐれてしまう病気 ・食後に胃痛が起こりやすい ・むかつき、激しい痛み、出血による貧血や吐血、下血 ・貧血で立ち眩みや息切れが起こることも |
食中毒 | ・ウイルスや細菌、寄生虫による影響 ・発熱や筋肉痛、衰弱、口が乾く、嘔吐、下痢等 |
胃食道逆流症 | ・胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、炎症を起こす病気 ・食事の後にみぞおちの上が焼けるように痛くなる ・胃もたれ、吐き気が続く |
機能性ディスペプシア | ・胃酸の異常や胃潰瘍等の病気がないのに、胃もたれや胃の痛み、しゃく熱感が起こる病気 ・食後すぐに症状が起こる ・不安やストレス等が原因ともされる |
胆石発作、胆のう炎 | ・胆汁の成分が固まってできた結晶が起こす腹痛のこと ・みぞおちの右上や背中、腰、右肩等に痛みが出る ・脂っこい食べ物を食べると胃のあたりが痛む |
PMSによる胃痛への4つの対処法
PMS(月経前症候群)による胃痛を感じたとき、すぐにできる4つの対処法を解説します。
自身が楽な姿勢をとる
胃が痛いときに、自分が楽に過ごせる姿勢をとることで痛みが和らぎます。人によって向きは異なりますが、体を丸める体育座りのような姿勢をとると、腹部が温まり痛みが落ち着くことがあります。
また、左側を下に横向きに寝て、膝を軽く曲げると痛みが弱まる人もいるようです。胃の大部分が左側によっているため、左側を下に横向きで寝ることで胃への負担が弱まる可能性があります。
人によって楽な姿勢は異なるため、いろんな角度を試して過ごしやすい向きを見つけてみましょう。
内や外から体を温める
胃痛を和らげるには、体を内や外から温めるのも有効です。生理前は体の冷えが起きやすく、冷えがあると胃痛の原因になる可能性があるため、内外から体を温めてあげると過ごしやすくなることがあります。
内から温める際は、胃に優しい白湯やカフェインレスの飲み物を活用してみましょう。ショウガ湯やゴボウ茶のように体を温めてくれる食品が入った飲み物もおすすめです。
また、外から温める際には湯たんぽや使い切りカイロを使い、胃の周辺をあたためていきましょう。
胃痛が体を動かせる程度であれば、体の冷えに効くというツボをマッサージするのも効果的です。下半身が冷えやすいときは、土踏まずの中央から少し上にあるという「湧泉」をゆっくり押してみましょう。
また、横になって休む際は温かい環境で過ごすことが大切です。寝具を温かいものにしたり、暖房器具で室温をあげたり、できる範囲で環境を整えていきましょう。
胃痛が体を動かせる程度であれば、体の冷えに効くというツボをマッサージするのも効果的です。下半身が冷えやすいときは、土踏まずの中央から少し上にあるという「湧泉」をゆっくり押してみましょう。
また、横になって休む際は温かい環境で過ごすことが大切です。寝具を温かいものにしたり、暖房器具で室温をあげたり、できる範囲で環境を整えていきましょう。
空腹になる前に食事をする
昼食や夕食までの時間等、長時間食事をしない期間がある時は、軽食で空腹を紛らわせておくと胃痛を抑えられることがあります。空腹を感じると胃酸の分泌量が増えて、胃の粘膜を刺激しやすくなるためです。
胃粘膜を保護する効果があるとされる温めた牛乳や、消化の負担が少ないヨーグルトを選んでみましょう。定期的にとるのが難しい場合は、温かい飲み物もおすすめです。
なお、軽食を選ぶ際は脂質が多いものや辛い食べ物、カフェインが多いもの等、胃に負担を与える食べ物は控えましょう。
市販薬を服用する
胃痛が辛いときは、市販薬を使うのも手です。ただし有効成分が商品によって異なるため、説明書や成分をよく確認してから選びましょう。
胃痛向けの薬の中でも、次の成分が含まれる市販薬は生理による胃痛に効果があるとされています。
● 非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェンナトリウム等)
● アセトアミノフェン
● ブチルスコポラミン
胃痛以外にも生理痛や頭痛がある場合は、非ステロイド性抗炎症薬がおすすめです。胃の痛み以外にも効果を発揮してくれます。
胃があれている、食生活が乱れている場合には、アセトアミノフェンを選びましょう。痛みを抑える力は非ステロイド性抗炎症薬よりも弱いものの、胃にかかる負担は少なめです。
また、胃がキューと強く絞られるような痛みを感じる人は、ブチルスコポラミンの含まれる市販薬を探してみましょう。胃の緊張を和らげてくれます。
ただし、上記の成分の中でもブチルスコポラミンは人によっては目のまぶしさやかすみが起きることもあり、薬を飲んだ後の運転は禁止です。
注意事項をよく読み、心配な場合は購入するお店で薬剤師に相談をしてから購入しましょう。
PMSの胃痛向けの3つの予防法
まず前提として、PMSでの胃痛を予防する特別な方法があるわけではなく、胃痛そのものの対処が必要となります。胃痛が起きないように予防するには、食生活の見直しやストレスマネジメントのほか、体の異常を早期発見できるように定期健診を受けることが大切です。それぞれ解説します。
食生活の見直し
胃粘膜のバランスが崩れにくくなるように、食べすぎない、飲みすぎない生活を意識しましょう。
食生活のバランスが乱れていると、PMSによる胃痛以外にも、胃に刺激が起きる可能性が高まるからです。
次のような食生活を避けましょう。
● アルコールの過度な摂取
● 油分・香辛料が多く塩辛い食べ物
● カフェインが多い飲み物
● 甘味が強いおやつ
● 早食い、不規則な食事
いずれの食品も、胃酸の分泌を促してしまうため胃が痛む要因になります。カフェインや香辛料は神経の緊張・興奮を招き、自律神経が乱れてしまうかもしれません。
リラックスできるよう、ノンカフェインの飲料へ切り替えてみましょう。可能な範囲で塩分や脂質の少ない野菜スープや豆腐、鳥のささ身等、体を温め、胃に負担の少ない食事を選ぶことも大切です。
また、糖分を多く含む食品をとると血糖値が急激に上がり、PMSの症状であるイライラや過食を増進させることにもつながります。バナナやりんご、ドライフルーツ、ナッツ等、消化によい甘いものへ置き換えるとよいでしょう。
あわせて、食べ方も重要です。食べるときは30回を目安に噛むと、胃に負担が少ないだけでなく、満腹感も得られやすくなります。生理前はプロゲステロンの働きで食欲が高まるため、食べ過ぎによるイライラも同時に防いでいきましょう。
ストレスマネジメント
ストレスは慢性的な胃痛の原因となるほか、PMSの症状を悪化させる可能性もあります。ストレス管理のために、ストレスを引き起こす原因「ストレッサー」とストレスによって発生した「ストレス反応」を知っていくことが大切です。
具体的な方法を見ていきましょう。
ストレッサーとストレス反応を探る
今、自分がストレスを感じている状況に対し、次の3つの情報を明確にしていきます。
ストレスが起きて自分がどう思うか
ストレス反応として、心理・身体・行動へ影響が出ているか
3つの情報を自分で振り返ると、ストレスが起きる原因や反応がわかります。体に起きている変化を見つめなおすチャンスです。
また、ストレスを感じる出来事は人によってさまざまです。少しでもモヤモヤしていること、心に引っかかっていることがあれば書き出してみましょう。
具体的に対処する「ストレスコーピング」を選ぶ
ストレスコーピングとは、ストレスの原因へうまく対処する方法のことです。
対処法によって次の表の5つに分けられます。
ストレスコーピング | 概要 |
---|---|
情動焦点型コーピング | ・ストレスに対し、自分の考えやとらえ方を変える 例)一度冷静になって物事を考え直す |
問題焦点型コーピング | ・ストレスの原因へ直接働きかけたり、一度問題から離れたりして解決を目指す 例)ストレスを感じる同僚と話し合い、お互いに理解を深める |
認知的再評価型コーピング | ・ストレスの原因に対し、自分の考えを前向きに変えてみる 例)苦手な業務の楽しいところを見つける |
ストレス解消型コーピング | ・ストレス解消のために、自分の好きなことへ打ち込む 例)旅行や運動等趣味を通じてリフレッシュする |
社会的支援探索型コーピング | ・ストレスの原因解決のために、他の人から支援を受ける 例)関連機関や専門家へ相談し、情報収集や助言を受ける |
こうした対処法や自分が相談できる相手をリスト化し、実際にストレスを感じたら取り組んでみましょう。1日5分からでも、自分がストレスだと感じたこと、ストレス反応を自覚した際の気持ちや行動等を振り返るのもおすすめです。
試してみてうまくいくコーピングがあれば積み重ねていきましょう。胃痛の原因となるストレスへの向き合い方が、少しずつ見つかっていくはずです。
病院で定期的に健康診断
先述の通り、病気が胃痛の原因という可能性もあります。対処法で胃痛が軽減できない、軽減できても痛みが長引く、吐き気がある等、違和感が続くようなら病院で診断を受けるようにしてください。
症状が生理前のみであれば、婦人科を受診してみましょう。生理後も症状が続くようなら、胃炎等消化器の疾患がないか、消化器内科を受診して調べることが大切です。
また、定期的に健康診断を受けると、病気を早期に発見できます。PMSによる胃痛の改善だけでなく、他の病気が潜んでいた場合も対処が早くなるため、定期的に健康診断を受けて自分の体をよく知っておきましょう。
PMSや胃痛の悩みに役立つ制度
原因がPMSか否かに関わらず、胃痛が激しい場合に救急車を呼ぶべきか知りたいとき、誰かに悩みを相談したいときに使える制度もあるため、知っておくと便利です。
救急安心センター事業
胃痛が続いていて「病院に行くべき?」と迷ったときは「救急安心センター事業」へ相談してみましょう。電話で「♯7119」へ発信すると、電話窓口で医師や看護師、相談員が情報を聞き取り、緊急性のある症状か判断してくれます。
緊急性が高くないと分かった場合も、受診可能な医療機関や症状がどうなったら受診すべきかアドバイスを受けられるため、困ったときは活用してみてください。
また、ネット上で使えるサービスとして、消防庁が提供する救急車を使うべきか判断する救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」もあります。今の状態を質問にあわせて回答していくことで、医療機関の受診や救急車を呼ぶべきかの判断をサポートするサービスです。
アプリ版とWeb版があるため、使いやすい方を利用してみましょう。
参考:政府広報オンライン
こころの相談の窓口
胃痛の原因がストレスにありそうな場合、悩み相談ができる公的なサービスを使ってみましょう。周囲への相談が難しいとき、相談できる人がいないときに頼りやすい相談先です。
地域の保健所や保健センターへの直接相談、精神保健福祉センター等が対応してくれます。
また、全国共通の「0570-064-556」へ電話をかけるとこころの健康相談統一ダイヤルを通じて所在地の公的な相談機関に接続されるため、相談先が分からないときはこちらも利用してみましょう。
まとめ:生理前のPMSで胃痛が起きたら原因を把握しよう
生理前にPMSによるイライラや胃痛、不安感等、さまざまな症状で悩む女性は少なくありません。生理前に胃痛が起きた際は、体を温めたり、胃痛が落ち着く姿勢で休んだり、体にストレスをためこまない対応を心がけましょう。
市販薬で一時的に痛みを和らげることもできますが、頼りすぎは禁物です。胃痛の原因はストレスや食生活、病気等多岐にわたるため、痛みを一時的に対処していくと症状が悪化する可能性もあります。
胃痛が生理後も治まらない、痛みが激しいといった場合には、早めに病院を受診しましょう。