更年期で生理はどのように変わる?大量の出血をしてもあわてない
PROFILE
1 更年期と生理の3つの変化
2 更年期とは
3 更年期以外で生理に異常がおきる病気
4 更年期中の生理不調を乗り切るポイント
5 更年期の生理で気になる疑問
6 まとめ:更年期の生理の変化は個人差がある
更年期と生理の3つの変化
更年期になると生理には3つの変化が訪れます。これまで起きていた生理と異なる特徴が出てくるので、まずは一般的な変化例として確認していきましょう。
生理の周期の長短
まず更年期の始まりとして生理周期が長くなる、もしくは短くなることがあります。
これは年齢と共に体内の卵胞が減少することが要因です。卵胞の減少で分泌される女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が低下、脳が不足した分泌量を補おうと指令を送信、卵巣への刺激が過剰になることで生理周期が変わってしまいます。
30代後半~40代で変調があった場合は更年期のホルモン変動による生理の変化の可能性が高いでしょう。
出血が止まらない・減少
分泌されるホルモンバランスの乱れで出血が増えたり、逆に少なくなることもあります。ホルモンがアンバランスなために子宮内膜が厚くなったり、剝がれにくくなり、生理になったときに出血が酷くなってしまうのです。
また、逆にホルモンが十分でないために、子宮内膜が厚くならないということもあります。この場合は極端に出血が減少するでしょう。
生理の減少
更年期によって生理自体の頻度が減ることもあります。毎月あった生理が、2~3カ月に1度や半年に1度といったような頻度になります。ただし、周期が復活することもあるのが厄介な特徴で、1度頻度が減少したと思っても減り続けるとは限りません。
さらに人によっては更年期と見られる年齢でも変化なく生理が続き、突然閉経する人もいます。更年期の生理の変化はある程度、個人差があるものとして付き合っていく必要があるでしょう。
更年期とは
そもそも更年期とは、何なのでしょうか。わからないものと付き合っていくのは、不安を感じる方もおおいでしょう。まずは更年期の概要をあらためておさらいしてみましょう。
閉経前後の期間
更年期とは、閉経前後の5年間を指します。主に40代半ば~50代半ばに起きるもので、思春期や老年期と同じライフステージの1つです。正確に起きる時期や症状は個人差があるものの、すべての女性が等しく経験します。
なお、生理が1年以上止まった場合は閉経と判断されるのが一般的です。
30代後半からでも体調不良
更年期は40代半ば~50代半ばに起こるのが一般的であり、30代後半~40代半ばはプレ更年期、50代半ば以降はポスト更年期と呼ばれます。ただし、人によっては30代後半から更年期症状が始まるケースもあります。このように閉経自体の時期に個人差があり、同様に更年期が早期に始まることもあるということです。
女性はプレ更年期に差し掛かると心や体の状態に変化が出始め、ポスト更年期になると次第に症状が落ち着いていくことは、珍しくありません。
更年期障害で生活に支障
更年期に現れる身体的症状が酷い場合は、「更年期障害」という疾患になることもあります。特徴として、次のような症状を引き起こします。
● 身体的症状:ほてり、めまい、不眠、動悸など
● 精神的症状:気分が落ち込む、情緒不安定、イライラなど
女性ホルモンの大きなゆらぎによって、心身ともに強く症状が出るのが特徴です。症状の度合いが日常生活に支障をきたしているレベルだと更年期障害だと診断される可能性が高いと言えます。
しかし更年期障害は薬やカウンセリングで緩和治療を行うことができるので安心してください。治療ではカウンセリングをしつつ生活指導などを行い、必要に応じてホルモン補充療法や漢方療法をします。必要なケアを行うことで症状を和らげることが可能です。
※参考:公益社団法人 日本産婦人科学会「更年期障害」
更年期以外で生理に異常がおきる病気
更年期に近づくと生理に変化が起きますが、稀に別の病気が潜んでいることもあります。年齢と共に女性特有の病気を発症する可能性があります。
そのため、生理の症状の様子を見て、不安に思う症状がないか見極めることが必要です。ここからは更年期前後に見られやすい病気の特徴を紹介します。
子宮頸がん・子宮体がん
まず注意したいのは、子宮頸がん・子宮体がんです。子宮頸がんはHPVウイルスが原因となり、子宮頚部に発症するがんです。一方で子宮体がんは子宮内膜に発症します。
子宮頸がん | 子宮体がん | |
---|---|---|
発生個所 | 子宮頚部 | 子宮内膜 |
原因 | HPVウイルス | ホルモンの過剰刺激など |
主な発症年齢 | 20代~40代 | 30代後半~60代 |
いずれも放置すると増加・進行し、最悪の場合は命に関わる危険性があるがんです。ただ早期に見つけられれば完治できる病気なため、とにかく早く気がつくことが重要です。
なお、2つのがんの初期症状として不正出血があります。周期外の不正出血がダラダラ続いたり、閉経したあとに不正出血があったら注意が必要です。一度婦人科などへ診察に行きましょう。
また、自治体によっては子宮頸がんの検診を行っているところもあります。20歳以上などの区切りで無料になっていることもあるので、近隣の自治体の対応も調べて利用してみてください。
月経不順・無月経
更年期前後では月経不順・無月経になることもあります。
月経不順とは、その名のとおり生理が定期的に来ない状態です。そもそも生理は本来25日~38日周期であることが正常です。しかし月経不順となると周期がバラバラであったり、毎月こないこともあります。
月経不順となる原因は、ストレスや生活習慣の乱れ、加えてホルモンバランスの乱れと言われています。つまり更年期症状のホルモンバランスの乱れにより、月経不順を引き起こす可能性があるのです。
一方で無月経は妊娠以外で3カ月以上生理が来なくなる状態です。生理が来ていたにも関わらず、生理が来なくなることから「続発性無月経」とも呼ばれています。このケースでは何らかの理由で必要なホルモンが分泌されないことが原因です。
更年期に関連するところでは、ホルモン分泌の機能が低下しているために無月経となることが考えられます。または治療のために抗うつ薬や向精神薬など、特定の薬を使用している場合も影響がある可能性があります。
※参考:MSDマニュアル「月経周期」
更年期中の生理不調を乗り切るポイント
更年期中の生理には変化がありますが、対応方法を知っていれば上手く付き合っていくこともできます。生理不調を乗り切るポイントを見ていきましょう。
生理用品の変更
生理の出血量が増えてくると心配になるのが、経血漏れです。どこへ行くのでも服や物を汚してしまうのではないかと不安を抱えてしまいます。もし生理の出血量が増えている場合は、思い切って生理用品を変更してみるのがおすすめです。
生理用品は使い慣れたものを選んでいる人も多いかもしれませんが、経血漏れがあったり、ナプキンの交換頻度が多い場合は製品の吸収量が合っていないかもしれません。これまで使っていたものより吸収力が高いものへ変更してみましょう。
例えば生理用ナプキンには過多月経向けの吸収力が非常に高いものもあります。睡眠時や長時間ナプキンを変えられないシーンなどにおすすめです。
また近年では、通常のナプキンにプラスして装着し、吸収力を追加する製品も産まれてきています。製品を組み合わせ、適切な生理用品に切り替えていくことで過多月経も過ごしやすくなるでしょう。
なお、生理用品と共に身につける下着にも注目してください。体にフィットした下着をつけることでナプキンのズレを防ぎ、経血漏れしにくい状態を保ちやすくなります。
生理用品の代用品を利用
更年期では周期がズレたり不正出血が起きることもあります。ナプキンをいつでも備えておくのがベターですが、生理が来たタイミングでうっかりナプキンがないという事態になることもあるでしょう。
その場合は以下の物で一時的にナプキン代わりにする手もあります。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
ティッシュペーパー | ナプキンと同じ高分子吸収帯 | ・水に強い | ・吸収力が少ない ・トイレに流せない |
キッチンペーパー | ナプキンと同じ高分子吸収帯 | ・水に強い ・ティッシュより吸収力・耐久性がある | ・トイレに流せない |
トイレットペーパー | 水に溶けるように作られている | ・トイレに流せる ・巻き付けることができる | ・水分でほぐれてしまう ・やや吸収力が劣る |
ハンカチ ミニタオルなど | あてがうことで活用できる | ・吸収力がある ・肌当たりがよい | ・清潔度が劣る ・洗濯が大変 |
もし家で代用品を利用するなら、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、トイレットペーパーが活用できるでしょう。とくに前者2つはナプキンと同じ、高分子吸収帯の紙なため、吸収力が望めます。ナプキンを用意するまでの短時間であれば、一時的に代用が可能です。
もし出先なら最寄りのお手洗いでトイレットペーパーをあてがうか、ハンカチなどの布で代用する方法が選択肢となります。ただハンカチは未使用でないと衛生的な問題から推奨されないので注意しましょう。
なお、代用品はいずれも吸収力に限界があるため、長時間の使用には心もとないものがあります。短時間で様子を見て、なるべく早く適切な生理用品に切り替えましょう。
食事や運動でセルフケア
更年期のホルモン変化の影響を緩和するために、食事や運動でセルフケアをするのもおすすめです。例えば適度な運動は、乱れやすい体のサイクルを助けることができます。有酸素運動を中心に週に3、4回ほど周期的に行うようにしてみてください。
また、食事では女性ホルモンと似た働きがある栄養素を食事で摂取していくと効果的です。具体例で言えば、女性ホルモンと似た働きを持つものとして「大豆」があります。大豆に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た抗酸化作用が豊富です。食物繊維も多く、腸内環境も整えてくれるので健康にも良い素材と言えます。
大豆を食事に取り入れたい場合は、納豆や豆腐、豆乳といった簡単なものでも問題ありません。続けやすいものから始めてみてください。
更年期の生理で気になる疑問
一生で1度しか経験しない更年期ですが、初めての体の変化に何かと疑問も多くあることでしょう。更年期だからと言っても変化に振り回されず、可能なら自分の体をコントロールしたいはず。
ここでは更年期の生理で気になる疑問を集めてみました。疑問を解消し、前向きに更年期を歩んでいきましょう。
更年期の生理の相談は何科?
更年期の生理の相談は、婦人科や産婦人科で受け付けています。また、病院によってはより更年期に特化している、更年期外来(もしくは女性外来)があることもあります。
どれを選ぶかは病院との相性次第ですが、とりあえず症状を相談したい場合は婦人科・産婦人科、より症状についてしっかりと相談したい場合は、より詳しい診療機関を利用するのが良いでしょう。
病院によってはオンライン診療を受け付けているところもあります。診察に行きにくい場合は、検討してみてください。
更年期障害の治療で健康保険は使える?
45~59歳で、更年期障害の治療を受ける場合は健康保険を使用できます。
治療に必要な診察や漢方療法、ホルモン補充療法などに保険が適用されるので安心して治療を受けてください。
急な生理の体調不良で仕事は休んでよいか?
労働基準法68条には、生理休暇という制度があります。企業は生理症状が酷い女性が、急に生理になった場合は当日でも休ませなければいけないというものです。女性側は生理について会社へ具体的な症状や証明などもする必要はありません。
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
※引用:e-Gov法例検索「第六十八条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」
生理の症状がきつい場合は、無理せず生理休暇を利用するのも1つの手です。また、勤務先の就業規則で活用できるものがないかも確認してみてください。
更年期でも妊娠はする?
更年期に入ると20代~30代に比べると妊娠の確率は下がっていますが、妊娠しないわけではありません。閉経しない限りは妊娠する可能性があり、妊娠を望まない場合は避妊を続けたほうが良いでしょう。なお、厳密には閉経後1年間は妊娠の可能性があり、妊娠を望まないのであればやはり避妊の必要があります。
まとめ:更年期の生理の変化は個人差がある
更年期にはホルモンバランスの変動が起きますが、生理の変化には個人差があり、症状がどうなるかは一概には言えません。更年期に入ってから生理の周期や頻度、出血量などが変わる人もいれば、一方で閉経まで規則的な生理が続く人もいるためです。
そのため、更年期に入ったら不規則な出血などで困ることがないように、いつでも生理用品を携帯しておくと安心です。また、更年期の影響で体調不良になることもあるかもしれません。具合が悪いときは適度に休み、食事や運動で普段からセルフケアすることも心掛けましょう。