生理中になぜ吐き気がおきる?対処法や、PMS、つわりとの見分け方を解説
PROFILE
1 生理中に吐き気がおきる仕組み
2 生理中の吐き気への対処法
3 PMSやつわりと生理による吐き気の見分け方
4 生理や子宮に関わり吐き気がある病気
5 生理による吐き気の相談先
6 生理中の吐き気でよくある疑問
7 まとめ:吐き気はまずはセルフケアで緩和してみよう
生理中に吐き気がおきる仕組み
女性の体は妊娠するために受精卵の着床に備え、周期的に子宮内膜が厚くなります。そのとき、妊娠しない場合には使用されない子宮内膜が必要がなくなるため、剥がれ落ちる仕組みです。
この際に、子宮内膜を剝がすために子宮を収縮させるのが「プロスタグランジン」というホルモンです。プロスタグランジンは本来経血の排出を助けるために分泌されますが、じつは胃腸も収縮させる働きもあります。
そのため、生理になると風邪でもないのに吐き気を感じやすくなってしまうのです。プロスタグランジンの分泌自体を止めることはできないため、症状と上手く付き合っていく工夫が必要です。
▼生理中のその他の不快症状などはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
生理中の知っておきたい基礎知識!よくある症状や過ごし方とは
生理中の吐き気への対処法
生理中の吐き気への対処は緩和ケアが主です。対処するポイントは以下の5つがあります。
● 食事
● 胃の状態
● 体温
● ストレス
● ツボ
各ポイントを順番に見ていきましょう。
胃に優しい食事をする
ホルモンによる刺激自体を全く無くすのは難しいため、食事内容を胃に優しい物へ変えましょう。なお、食事の選択においては、以下のポイントがあります。
● 消化の良い食物繊維を多く取り入れる
● 油の少ない食事を心掛ける
● 優しい味付けにする
● 辛いもの・酸味が強いものは避ける
普段から食事に気を使っている場合は、海藻やごぼうと言った食物繊維などを好んでいるかもしれません。しかし、食物繊維が多すぎる食材は、じつは胃に負荷がかかります。にんじん、りんご、じゃがいもなどの消化の良い食物繊維に切り替え、負担を軽減して栄養を摂ってください。
油の少ない食材を選ぶのも重要です。脂っぽいものは胃酸が多く分泌されるため、吐き気の原因になる恐れがあります。脂身が多い肉などを避け、赤身の肉や白身魚などを選んでください。
また、脂っぽさを避けるためには、調理方法にも気を使うのをおすすめします。脂が多くなる炒める・揚げるなどを避け、茹でる・蒸すといった調理方法を選ぶことで胃に優しい食事になります。
加えて避けるもので言えば、辛みや酸味の強いものはおすすめできません。塩分も控えめなものを中心にしたり、味付け自体もなるべく刺激が少ないものを選ぶようにすると吐き気の緩和になるでしょう。
空腹状態を避ける
吐き気が多いと食事を控えてしまいがちですが、空腹は避けるのがベターです。空腹状態が続いてしまうと、胃酸過多になることでまた吐き気を引き起こす可能性もあります。
食べ物が胃に入ることによって吐き気が緩和することもあるため、少量からでも食べられるものを食べてみましょう。
体温を高める
体温が低いことで吐き気などの症状が悪化することもあります。そのため、体温を高めるために温かい食べ物・飲み物を選ぶのも工夫の1つです。
この際に注意が必要なのが「カフェイン」です。
カフェインが多い飲食物は体温を下げたり、胃に刺激も与えてしまいます。そのため、例えば飲み物なら、カフェインが含まれないものが好ましいです。例えばジンジャーやカモミールといった体を温めつつリラックス効果があるハーブティー、もしくは体を温めてくれるポリフェノールが豊富なココアなどもおすすめです。
また、入浴や軽い運動、カイロや部分的な厚着などで体温を高めるのも良いです。口に入れる物だけではなく、体を芯から温めていくことで体温をしっかりと高めることができます。「生理中は入浴や運動が難しい!」という場合は、簡単なヨガや半身浴・足湯など、無理のない範囲でトライしてみてください。
ストレスを発散する
生理中は神経も過敏になりやすい時期。憂鬱さが続くことで余計に吐き気が強まる恐れがあります。より悪化させないためにも、適度にストレスを発散する精神的なゆとりを持つことも意識してみてください。
例えば好きなことをしたり、自宅で何もしないでのんびり過ごすのも良いでしょう。心身ともに休める時間を持つことでストレスを解消し、体への負荷軽減も期待できます。
吐き気向けのツボを押す
もし辛い吐き気に見舞われた場合は、吐き気を抑えるツボ押しをしてみましょう。吐き気には次のツボ押しが効果的です。
効果 | 場所 | 押し方 | |
---|---|---|---|
内関 (ないかん) | ・息詰まり改善 ・吐き気改善 ・自律神経を整える | 左手首の内側 | 1.手のひらを自分に向けて握る 2.手首のシワの始まりを見つける 3.シワから薬指・中指・人差しの順に乗せる 4.人差し指の下にある腱と腱の間を押す |
合谷 (ごうこく) | ・肩こりの緩和 ・胃腸の不調解消 ・便秘などの解消 ・生理痛の緩和 | 手の甲 | 1.手の甲を自分に向ける 2.軽く手のひらを開く 3.親指と人差し指の間を辿る 4.双方の間で窪んでる箇所を押す |
足三里 (あしさんり) | ・胃腸の働きを抑える ・左手首の内吐き気改善 | ふくらはぎ | 1.膝のお皿の下の外側のくぼみを探す 2.くぼみに人差し指を置く 3.人差し指から続けて指を置く 4.四本目の小指が当たっている箇所を押す |
ツボ押しは出先でもできるため、覚えておくと吐き気があったときにケアできます。何個か覚えておき、いざという時に備えておきましょう。
PMSやつわりと生理による吐き気の見分け方
生理予定日付近で起こる吐き気には、生理によるもの以外にもPMSやつわりが考えられます。それぞれのケースの特徴を説明します。
PMSによる吐き気
生理前から吐き気が続く場合は、PMS(月経前症候群)の可能性があります。
PMSは、生理前に身体的・精神的症状が酷くなる疾患です。症状の1つとして、吐き気や胸焼けなどの症状が出ることもあります。原因は正確に解明されていませんが、ホルモンバランスの急激な増減が関係していると考える見方もあります。
ただPMSは、基本的に不調を引き起こすもので生死に関わるものではありません。すでに紹介した生理時の吐き気に対する対処法と同様の方法で症状を緩和できることが多いです。しかし、人によっては日常生活が困難なケースもあるため、その場合は婦人科などへの相談が推奨されます。
▼PMSによる吐き気の詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
PMSの吐き気の原因は?市販薬や漢方等の対処法を知ろう
つわりによる吐き気
生理予定日付近での吐き気の場合、生理による不快症状ではなく妊娠によるつわりの可能性もあります。妊娠していると生理は来なくなりますが、子宮内部や膣はもともと少しの刺激でも出血しやすい場所。そのため、妊娠に異常がなくても妊娠初期に出血が起こることもあり、これを生理と勘違いしてしまう可能性があります。また、妊娠初期症状とPMSは、下腹部痛や頭痛のように似ている症状が多く、判断がしにくいものです。
まずは、生理予定日から1週間たっても生理がこなかったり、トイレで拭いたときにティッシュにつくような出血しかないという場合は妊娠検査薬で調べてみましょう。また、日頃から基礎体温を測っているのであれば、高温期が16日以上続いている場合や、思い当たる性交渉から3週間が経過していて生理が来ていないのであれば、妊娠の可能性が考えられます。
吐き気の有無や程度を妊娠の目安にするのではなく、妊娠の可能性があるようなら、妊娠検査薬で判断することが重要です。
▼妊娠初期症状に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
妊娠初期症状にはどんなものがある?生理前との違いもチェック
生理や子宮に関わり吐き気がある病気
生理で吐き気が引き起こされてしまうのは珍しくありません。しかし、稀に病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
ここからは生理や子宮に関わり、吐き気の症状が出る病気について解説します。
子宮筋腫
もし生理の前後の吐き気以外に貧血や下腹部の痛みがある場合は、子宮筋腫が疑われます。子宮筋腫とは、子宮にできる良性腫瘍のことです。子宮筋腫が大きくなりすぎると、生理前後以外でも圧迫されて吐き気が出る可能性があります。命にかかわる病気ではありませんが、発症することで吐き気を始めとする身体的症状を引き起こします。
また、基本的には手術をせず、薬で緩和治療を行います。しかし、筋腫が大きくなったり症状が強い場合は、手術を行うこともある病気です。吐き気・貧血・下腹部の痛みなどが同時にある場合は、婦人科や産婦人科などで一度相談をしてみてください。
子宮内膜症
吐き気に加えて下腹部の痛み、さらに腰痛などが強く出る場合は子宮内膜症が隠れている可能性があります。子宮内膜症とは、本来できないはずの子宮以外の場所に内膜が形成されてしまう疾患です。卵巣、子宮を支える靱帯、子宮頸部との間などに内膜組織が形成されることで不調を引き起こします。
子宮内膜症も正確な原因がわかっていませんが、とくに出産経験がない人は発症しやすいと言われています。なお、治療はステロイドなどの薬物治療などが中心です。ただし状態が深刻な場合は内膜組織を除去する手術を行うこともあるため、体への負担が大きくなるというリスクもあります。
気になる症状がある場合は他の疑われる疾患と同じく、一度婦人科や産婦人科へ相談をしてみてください。
生理による吐き気の相談先
ここからは生理についての不調を相談できる窓口を紹介します。生理の症状に苦しんでいると、心細く感じることも多いはずです。
つらい場合はぜひ相談窓口を活用して、一度症状を相談してみてください。
女性健康支援センター
女性健康支援センターとは、女性の健康を守ることを目的とした全国に配置された支援施設です。生理や更年期など女性ならではの症状や疾患に関連する相談を受付ています。
なお、実際に相談する先は全国の保健所になりますが、所属する医師や保健師が相談に乗ってくれるので専門的なアドバイスが受けられます。必要に応じて生活指導も行ってくれるため、症状緩和の方法に悩んでいる人にも向いていると言えるでしょう。
また、全国の女性健康支援センターは以下の厚生労働省の公式サイトから調べられます。
厚生労働省 性と健康の相談センター事業の概要
日本助産師会
日本助産師会は、母子の健康を守ることを目的に設立された助産師による公益社団法人です。自然な妊娠・出産のために女性の健康を守る活動を行っており、活動の1つとして全国に相談窓口を設けています。
とはいえ相談は妊娠・出産の予定が無い人でも、問題ありません。助産師という名はついていますが、女性の生殖機能の健康を助けることも目的としているためです。
相談窓口は日本助産師会の公式サイトで公開されているので、最寄りのものを探してみてください。なお、相談方法や対応時間などは施設によって異なります。
※参考:日本助産師会「全国の相談窓口」
救急安心センター
救急安心センターは、治療が必要かもしれない人を助けることを目的に、総務省が全国的に展開した事業です。ケガや病状について電話相談を受け、相談内容から救急車や来院の必要性など、適切な対応方法を導いてくれます。
なお、相談は専門の相談員や看護師、医師などが受け付け、症状に対する指導やアドバイス、関連病院への案内なども行ってくれます。
例えば吐き気などの症状が酷く、時間が経っても収まる様子がないなど、おかしいと感じた場合は相談してみても良いかもしれません。症状をカウンセリングして、緊急性なども判断してくれます。
※参考:救急安心センター「♯7119実施エリア」
生理中の吐き気でよくある疑問
生理と吐き気に悩みが多い人は、まだまだ不安が拭えないことが多いでしょう。そこで最後に生理中の吐き気に関連した、よくある疑問を集めました。
生理中はストレスが少ない生活を過ごすことも大事です。気になる疑問がある場合は解消し、不安なく生理を過ごしていきましょう。
吐き気はいつまで続く?
生理が原因の吐き気の場合は、生理が終わるころに収まってくる可能性があります。ただし吐き気は生理以外の理由で起きているケースもあり、強い吐き気は注意が必要です。気になる複数の症状がある場合は、専門機関へ相談してみてください。
また、もし生理由来によるものでも「多少は誰しも我慢しているから」と、我慢することはありません。紹介した対処法や専門家への相談をするなど、自分を大事にするケアを行ってください。
吐き気向けの市販薬の選び方は?
ロキソプロフェンやイブプロフェンは胃への刺激となることもあるため、胃の粘膜を保護するアセトアミノフェンも配合された優しい処方の製品を選ぶのがおすすめです。
生理による体調不良で仕事は休める?
生理休暇を利用すれば雇用形態や就業規則に関わらず、仕事を休むことができます。生理休暇は、労働基準法68条に明記された制度です。
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
※引用:e-Gov法例検索「第六十八条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」
生理休暇はどのような企業でも対応する義務があるものです。ただし、会社によって休みが有給休暇扱いとなることもあるため、あらかじめ確認をしておきましょう。
まとめ:吐き気はまずはセルフケアで緩和してみよう
生理中の吐き気は正常に生理を促すために分泌されるホルモンが原因です。しかしホルモン自体は悪ではなく、女性のからだの働きが引き起こしてしまう症状と言えます。要因自体を無くすことはできないため、吐き気などの症状との付き合い方を模索していきましょう。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひ食事や日々の過ごし方を工夫してみてください。