PMSとはなにかわかりやすく解説!セルフケアで体調を改善しよう
PROFILE
1 PMSとは
2 病院での治療法は2通り
3 PMSを治療する際の問題点
4 PMSへの4つの対処法
5 PMSを乗り切る際の疑問
6 PMSは無理せず楽に過ごそう
PMSとは
PMSは、正確には「月経前症候群」と言います。症状の特徴を詳しく見ていきましょう。
生理前の体調不良
PMSは生理が始まる3日前から2週間前に体調不良が起きます。ただ、生理が始まると症状が落ち着くという特徴から、「月経前症候群」という名称が名付けられました。
生理がある女性なら誰でも起きる可能性があり、実際に約20~50%の女性がPMSを経験しているといわれています。正確な診断は病院に行く必要がありますが、生理前の不調が3カ月以上続く場合はPMSの可能性が高いです。
もし病院で本格的に診断する場合は1カ月単位で経過観察し、症状の聞き取りを行って診断します。
※参考:MSDマニュアル「月経前症候群」
症状は身体と精神に表れる
PMSには体の不調である身体的症状と、精神的な不調である精神的症状があります。
身体的症状 | 精神的症状 |
---|---|
●腹痛 ●頭痛 ●腰痛 ●肌荒れ ●胸のハリ ●むくみ ●のぼせ・ほてり ●便秘 ●眠気 ●不眠 ●倦怠感・疲れやすい ●過食または食欲不振 等 | ●イライラ ●気分の落ち込み ●涙が勝手に出て止まらなくなる ●不安感が強くなる ●気持ちが落ち着かない ●集中力ややる気の減退 ●神経が過敏になる ●情緒不安定 等 |
PMSの症状は発症する人の状況や体質によって目立つ症状が異なる特徴もあります。例えば、わかりやすい状況の差としては年齢です。
10~20代は心身共に成長段階にあるため、精神的に影響を受けやすく、PMSも精神的症状が目立つことがあります。
一方で20代後半から30代前半は妊娠がしやすい成熟期に入るため、身体のホルモン分泌が活発化。PMSでは身体的症状も目立つようになります。
ただ、どの症状が必ず起きるとは言えず、個人差が非常に大きいのもPMSの特徴です。
※参考:MSDマニュアル「月経前症候群」
原因はホルモンバランスの可能性
PMSの明確な原因は解明されていませんが、2023年12月時点ではホルモンバランスが関わっているのではないかと考えられています。
女性の体は排卵から生理が起きるまでに、エストロゲンやプロゲステロン等のホルモン濃度が増加します。しかし、生理直前にホルモンが減退。体内のホルモンバランスが大きく変化し、体調不良を引き起こしてしまっていると見られています。
ただ、原因はホルモンバランスのみではなく、遺伝やマグネシウム・カルシウムの欠乏による関係も疑われています。加えて、ホルモンバランスが崩れる要因となるストレスや生活習慣の乱れも無関係とは言えません。
そのため、複合的な要素からPMSを発症している可能性もあります。
病院での治療法は2通り
PMSは主に婦人科・産婦人科、メンタルクリニックや精神科で治療を行っています。身体的・精神的症状があり、ひとまず治療を受けたい場合はまず婦人科・産婦人科等が選ばれることが一般的です。
ただし、より精神的症状が深刻で他のアプローチが必要な場合はメンタルクリニックや精神科で治療を受ける人もいます。症状や病院との相性を考え、通院先を選ぶことになるでしょう。
なお、病院で行う治療法はカウンセリング、薬物治療、手術と大きく分けて3通りあります。ここからは各治療法について詳しく見ていきましょう。
専門家によるカウンセリング
PMSの精神的症状を和らげるには、専門家のカウンセリングによる治療を行います。不安や悩みを相談することで精神的な負担を和らげ、症状を軽減することが可能です。特に普段から人と話すことで気持ちが楽になりやすいという人には向いています。
なお、カウンセリング先を選ぶ際はPMSによる精神的不調を受付けている病院を選びましょう。そのなかでも公認心理師や臨床心理士といった、精神的な不調に精通した有資格者が在籍している病院がおすすめです。
病院・カウンセラーによってはオンラインから相談できるケースもあるため、利用しやすい病院を選んでください。病院へ足を運ぶのはハードルが高いという場合、まずはオンライン診察を試してみても良いかもしれません。
処方された薬を飲む
PMSの全体的症状を軽減するためには、処方された薬による薬物治療も一般的です。主に処方されることが多い薬としては以下のものがあります。
目的 | 特徴 | |
---|---|---|
低用量ピル | ホルモンバランスの変動を抑制し、PMS症状を軽減するため。 | ●ホルモンバランスの変動を抑制し排卵を止める ●身体的・精神的症状の緩和 ●服薬中は妊娠しにくくなる ●授乳中でも服用できる |
漢方薬 | 体質を改善し体調不良を整えていくため。 | ●個人にあわせた処方ができる ●副作用が少ない |
抗うつ薬 | 強い精神的症状がある場合に症状を緩和するため。 | ●相談だけで緩和できない症状を和らげられる |
PMSを治療する際の問題点
PMSは病院で気軽に治療を始めることができますが、治療に際しては2つの問題点があります。病院に行ってから困ることのないように、事前に確認をしておきましょう。
治療で保険は適用されない
じつはPMSだけの治療には保険が適用されません。基本的には治療費・処方薬は全額実費です。そのため、診察料・検査料・処方薬を合わせて、1カ月で数万円かかることも珍しくありません。さらにPMSは長期的な治療が必要になることも多く、長期的に金銭的な負担になることが予想されます。
ただし、月経困難症や子宮内膜症の診断を受けた場合は保険適用内です。PMSに悩んで病院に行く人は症状が重いケースが多く、月経困難症の診断が下される場合もあります。症状が重い場合は、まずは気になる症状をまとめて医師の判断を仰いでみると良いでしょう。
病院の治療法だけで改善しない可能性
PMSの治療のほとんどは緩和治療が主で、基本的には原因を完全に解消することができません。また、人によって症状にも違いがあり、原因もさまざまです。ある意味、すべての女性に等しく有効な治療法はないと言えます。
そのため、PMSは病院の治療だけではなく、複合的な体質改善も必要となります。次に紹介していく対処法等も併せて行い、体質を改善していくことを目指しましょう。
PMSへの4つの対処法
PMSを改善するために、次の4つの対処法も行うことをおすすめします。
●セルフチェック
●適度な運動
●栄養バランスの良い食事
●ストレス解消
以下で各対処法のポイントを解説していきます。
PMSのセルフチェック
体調不良の原因が何かわからないと不安も大きくなります。よくわからないまま具合が悪い状態が続くのは、精神的にもストレスです。
そこで、まずはPMSであるかセルフチェックをしてみましょう。PMSであると自覚できれば、得体の知れないものではなくなります。治療や改善策を計画することができるため、前向きな行動もしやすくなるはずです。
PMSのセルフチェックは上記で紹介した身体的・精神的症状を当てはめて行うことができます。生理前の不調で一致するものがないか、確認をしてみましょう。
運動の習慣化
PMSの改善策の一つとして、運動の習慣化も行いましょう。適度な運動は体内サイクルの働きを促し、ホルモンの分泌等も助けてくれます。また、運動はストレス解消にも効果的です。いらだちや不安感等の感情の発散にも役立ちます。
なお、運動量は週に60分程度を目安にすることをおすすめします。軽く汗をかく程度の運動量を目指しましょう。
もし一気に運動する時間がないのなら、分割をして運動をしても問題ありません。例えば1日あたり20分・週に3回ウオーキングをする等、続けやすい方法で運動を習慣化していきましょう。
摂取する栄養素を考えた食事
PMSの改善には、食事で取る栄養素にも着目していきましょう。症状緩和には、精神的症状を緩和することにつながるものや、体内の不足を補うものを選びます。具体的におすすめな栄養素は次のとおりです。
症状緩和に役立つ栄養素 | 目的・効果 | 食品例 |
---|---|---|
マグネシウム | イライラや不安感を軽減する (セロトニンを作りやすくなる) | アーモンド そば |
カルシウム | 牛乳 チーズ | |
ビタミンB6 | まぐろ・かつお等の魚 牛・豚・鳥等のレバー | |
ビタミンB1 | 神経伝達物質を作る 体内物質の作用を高める | 豚肉 うなぎ たらこ 玄米ご飯 |
ビタミンB2 | 豚レバー うなぎ アーモンド 鶏卵 納豆 | |
鉄分 | 貧血軽減 | 豚レバー しじみ 小松菜 まいわし 卵黄 |
ビタミンD | 代謝や免疫を高める むくみ抑制 | さけ まいわし さんま まぐろ めかじき キノコ類 |
DHA・EPA | 飽和脂肪酸を避けて栄養を取るため (肉類を避ける分、積極的に取ることを推奨) | サケ サバ イワシ |
栄養素は食べ物で摂取できるほうがより新鮮で効果的ですが、すべてを食事で取ることは困難です。そのため、食事以外の不足分はサプリで補うことをオススメします。サプリも活用すれば、無理なく栄養バランスを保ちやすくなります。
自身に合ったストレス解消
各治療や対処法に加え、自身に合ったストレス解消も行っていきましょう。PMSはストレスが大敵です。ストレスの影響が増えると症状が悪化することも考えられるため、なるべくストレスを溜め込まないようにしなければいけません。
なお、簡単なストレス解消の一例として、以下のような方法もあります。
●睡眠
●入浴(半身浴)
●アロマテラピー
●好きなものを見る
●おいしいものを食べる
●おしゃべりする 等
ストレス解消は気負い過ぎないことが大切です。義務感で何かをするより、簡単にできることでも、自分がすっきりする方法や気分転換になることを行いましょう。
ストレスを溜めないために感情もコントロールしよう
強い感情によるストレスを受けないために、アンガーマネジメントを意識することもおすすめします。
アンガーマネジメントとは、怒りを制御し理解することです。怒りやいらだちを感じる事柄から一歩引いて物事を見ることで、自分が感情に振り回されにくくなります。
例えば何かに怒りを感じたとき、いま感情を爆発させる必要性があるか一度考えてみてください。それは本当にいま怒りをぶつけて、解決することなのでしょうか。
また、人の行動にいらだちを感じるときは、人と自分は全く違う人間であることを思い出してみましょう。他人の行動はコントロールできないため、思いどおりにいかなくても仕方がないことです。このような考え方一つで、感情に振り回されなくなります。
PMSを乗り切る際の疑問
最後にPMSを乗り切りたいときに浮かびやすい疑問を紹介します。
PMSはいますぐ解消するとは限らず、長い付き合いとなることも多いです。不安や疑問は解消し、うまく付き合っていくことでPMSから受けるストレスも軽減しましょう。
PMSを理由に仕事を休める?
通常は生理による体調不良であれば、生理休暇として仕事を休むことができます。労働基準法68条において、企業側はいかなる雇用形態でも、生理による体調不良がある従業員を就業させてはいけないのです。
ただし、労働基準法68条にPMSは明記されておらず、生理休暇が利用できるかは企業により異なります。相談しやすい上司に相談し、どのような対応となるのか一度確認をしてみてください。
※引用:e-Gov法例検索「第六十八条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」
PMSはいつから医師に相談する?
PMSについて相談するタイミングには、明確な決まりはありません。
PMSと思われる症状が一つでも辛いのなら、医師に相談をしても問題はありません。PMSは限られた症状のみが強く出ることもあるため、症状の種類より症状の深刻さで医師への相談を決めるようにしましょう。
また、医師へ相談すべきか悩んだ場合は、一度救急安心センターへ相談してみてください。救急安心センターとは、体の不調が相談できる電話相談の連絡先です。
救急安心センター事業とは、専門の担当員もしくは医師・看護師が電話口で寄せられた相談から症状の深刻度を判断し、必要に応じて関連病院への案内等を行います。相談内容から緊急性が高いと判断した場合は、救急車の手配もしてくれるため、万が一の時も安心です。
※参考:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)をもっと詳しく!」
PMSは市販薬でも改善する?
深刻な症状でなければ、市販薬で改善できる可能性はあります。実際に第二類医薬品でPMS向けの市販薬は豊富に展開されています。
ただPMS向けの市販薬は痛み止めや胃腸薬以外は、生薬を主体に作られていることが多いです。買う際は自分の症状に対応した成分が含まれている製品を選ぶ必要があります。
例えばPMSを改善する漢方薬には、次のような効果もあります。
種類 | 効果 |
---|---|
当帰 | 血を作るのを促し、血の巡りを良くする。体を温める効果もある。 |
芍薬 | 痛みや炎症を軽減し、血行を良くする。精神を静める。 |
生姜 阿膠 | 血の巡りを良くし、体を温める。また、阿膠は止血作用もあり、不正出血に効果が期待できる。 |
五苓散 | 体内の水の排出を促し、水の巡りを改善させる。吐き気、頭痛、めまい、むくみ等の改善が期待できる。 |
上記以外にも目的にあわせ、さまざまな漢方が市販薬に選ばれています。選ぶ際は自身の症状に合うものを比較検討し、選ぶようにしましょう。
PMSは無理せず楽に過ごそう
PMSは生理前に身体的・精神的症状を引き起こしてしまうものです。もし生理の3日~2週間前に不調が気になる場合は、PMSである可能性を考えておきましょう。
PMSの症状は個人差が大きく、自分がどれぐらい深刻か冷静に判断しづらいものです。PMSの代表的な症状を照らし合わせてみる等、セルフチェックを行い、症状によっては病院での治療も検討してください。
また、症状を緩和するために食事や運動等、生活習慣の改善も同時に行うと効果的です。症状を悪化させないためにも期間中は体をいたわり、ストレスの少ない状態で過ごしましょう。