更年期とはどのような期間か?よくある女性の症状と対策を紹介
PROFILE
1 更年期とは
2 【系統別】更年期によくある症状
3 更年期を乗り切る4つのポイント
4 更年期を迎える前の疑問
5 更年期を前向きに乗り越えるために体の変化を理解しておこう
更年期とは
更年期とは、誰もが迎えるものです。この時期には、身体的な変化だけでなく、心理的な変化も起こり、適切な理解と対処が求められます。女性の更年期で知っておきたい主な要素は、以下のとおりです。
● 更年期とは閉経前後の期間のこと
● ホルモンバランスの乱れと心理的要因で不調になる
● 女性と男性の更年期の違い
これらの要素を理解することで、更年期の健康をより適切に管理するための準備ができます。
更年期とは閉経前後の期間のこと
更年期は女性のライフステージの1つで、閉経前後の約10年間を指します。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳ですが、個人差が大きく、40代前半から50代後半まで幅広く分布しているのが実情です。早い人では30代後半から更年期に入る可能性もあり、更年期は身体的にも精神的にも大きな変化が現れる時期といえます。
ホルモンバランスの乱れと心理的要因で不調になる
更年期には、卵巣機能の低下により女性ホルモン、特にエストロゲンというホルモンの分泌量が急激に減少します。このホルモンバランスの乱れが、更年期症状と呼ばれるさまざまな不調の原因です。主な症状は以下のとおりです。
● のぼせ(ホットフラッシュ)
● 不眠
● めまい
● うつ症状 等
このように症状が重く、日常生活に支障が出る状態が更年期障害です。更年期障害による不調は、仕事のストレスや家庭環境の変化等による心理的要因も症状に大きく影響します。ホルモンの変化と心理的要因が複雑に絡み合うため、個々の状況に応じた対応が必要です。
※参考:磐田市立総合病院
女性と男性の更年期の違い
更年期は女性特有のものと思われがちですが、男性にも更年期はあります。ただし、女性と男性では更年期の特徴が大きく異なります。女性の場合、閉経を境に急激にホルモンバランスが変化しますが、男性のホルモン減少は緩やかです。男性の更年期は40代以降に始まり、期間に明確な終わりはありません。そのため、不調が長期間続く可能性があります。症状も、女性とは異なる傾向があり、疲労感や筋力低下、性機能の低下等が特徴的です。しかし、男性の更年期に関する社会での理解は十分に広まっていません。
男性の更年期症状は緩やかに長く続く傾向があり、女性の更年期症状は突然強く症状が出やすいという違いがあります。
参考:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
【系統別】更年期によくある症状
更年期でよくある症状は、以下のとおりです。
● 肩こり等の運動器官に関わる症状
● 頭痛等の精神に関わる症状
● のぼせ等の自律神経に関わる症状
● 吐き気等の消化器に関わる症状
● ドライアイ等の皮膚・分泌に関わる症状
● 月経異常等の生殖器・泌尿器に関わる症状
それぞれどのような症状なのか、詳しく解説します。
肩こり等の運動器官に関わる症状
更年期の運動器官症状は、多くの女性が経験する悩みです。日本女性医学学会の「女性医学ガイドブック 更年期医療編」に掲載されたデータによると、肩こりは約50%の女性が経験する最も頻度の高い症状であることがわかっています。
エストロゲンの減少は自律神経系のバランスを崩し、筋肉の緊張や血行不良を引き起こします。その結果、肩こりだけでなく、腰痛、関節痛、手足のしびれ等も現れやすくなるのです。これらの症状は日常生活の質を低下させ、仕事や家事の効率にも影響を与えます。適度な運動やストレッチ、マッサージ等で症状の緩和を図ることが重要です。
※参考:愛成病院
頭痛等の精神に関わる症状
更年期の精神症状は多岐にわたり、生活に大きな影響を与えます。代表的な症状は、以下のとおりです。
● 頭痛
● めまい
● 不眠
● 不安感
● イライラ
● 集中力低下
● うつ 等
このような症状はホルモンバランスの乱れが主な原因で、症状によっては日常生活や仕事が思うようにいかなくなることもあります。特に不眠は他の症状を悪化させる要因となるため、睡眠の質の改善が重要です。症状が重い場合は、専門医への相談を検討しましょう。適切な対処で、精神的な安定を取り戻し、日常生活への影響を軽減できます。
※参考:板谷内科
のぼせ等の自律神経に関わる症状
自律神経症状は更年期の代表的な不調で、多くの女性が経験します。主な症状は以下のとおりです。
● のぼせ(ホットフラッシュ)
● 動悸(どうき)
● 発汗
● むくみ 等
この中で最も一般的なのは体温調節中枢の乱れが原因で起こる「のぼせ(ホットフラッシュ)」です。この症状は、突然上半身や顔に熱感が広がり、時に発汗を伴います。症状の度合いによっては日常生活に大きな支障をきたし、睡眠の質も低下させてしまうでしょう。対処法は、涼しい環境の維持、軽装等が効果的です。重症の場合はホルモン補充療法も選択肢となるので、辛い場合には無理せず、医療機関を受診しましょう。
吐き気等の消化器に関わる症状
更年期の消化器症状は、多くの女性を悩ませる問題の1つです。主な症状は以下のとおりです。
● 吐き気
● 下痢
● 便秘
● 胃もたれ
● 胸やけ 等
このような症状が起きるのは自律神経の乱れが主な原因で、ホルモンバランスの変化が消化器管の機能に影響を与えるためです。特に胃腸の動きが鈍くなることで、消化不良や便秘が起こりやすくなります。また、ストレスも症状を悪化させる要因の1つです。これらの症状により、食欲が低下し、栄養バランスが崩れることもあります。症状が長引く場合は、専門医へ相談しましょう。
ドライアイ等の皮膚・分泌に関わる症状
更年期には、皮膚や分泌に関するさまざまな症状が現れます。代表的な症状は、以下のとおりです。
● ドライアイ
● 喉の渇き
● 皮膚の乾燥
● 湿疹
● 発汗
● 唾液分泌の異常 等
これらはエストロゲンの減少が主な原因で、これにより皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸の減少、粘膜の機能低下が起こります。さらに、加齢により皮膚のバリア機能を担うセラミドの減少も皮膚に大きな影響を与える原因の一つです。特に、皮膚の乾燥は肌老化を加速させる要因にもなるため、保湿ケアを十分に行い、必要に応じてセラミドを含む化粧品の使用を検討するとよいでしょう。
月経異常等の生殖器・泌尿器に関わる症状
更年期には生殖器・泌尿器系にも多くの変化が起こります。主な症状は、以下のとおりです。
● 月経不順
● 尿失禁
● 性交痛
● 外陰部のかゆみ 等
これらはエストロゲンの減少による腟や尿道の粘膜萎縮、骨盤底筋の弱化が原因です。特に尿失禁は加齢による尿道等を締める筋肉の衰えも影響しており、日常生活に支障をきたします。また、性交痛は夫婦関係にも影響を与える可能性があるため注意が必要です。対策としては、骨盤底筋体操や腟潤滑剤の使用等があげられます。症状が気になる場合は、婦人科や泌尿器科へ相談しましょう。早めの対処で症状の改善や進行の予防ができます。
更年期を乗り切る4つのポイント
更年期を乗り切るポイントは、以下の4つです。
● 食生活の見直し
● 無理のない有酸素運動
● 市販薬・サプリを活用
● 更年期障害の治療
このようなポイントを日常生活に取り入れることで、更年期の症状を和らげ、より快適に過ごせます。それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。
食生活の見直し
更年期を健やかに過ごすには、バランスの取れた食生活が欠かせません。栄養バランスを重視し、主食・副菜・主菜の割合を3:2:1に保つことが理想的です。1日3食、規則正しく食べることで、体調管理と症状の緩和に役立ちます。特に、植物性エストロゲンを含む大豆製品、カルシウムが豊富な乳製品、良質なタンパク質、ビタミンE・Cを含む食品の摂取が重要です。水分補給も忘れずに行い、体調の安定を図りましょう。
無理のない有酸素運動
適度な運動は更年期症状の緩和に効果的とされています。特に推奨されるのは、ウォーキング、ヨガ、水中歩行等の有酸素運動です。おおよそ週3〜4回、1回20〜40分程度がおすすめです。運動前後には、ウォーミングアップとクールダウンにそれぞれ5分ほど時間をかけることで、ケガの予防にもなります。有酸素運動には、ストレス発散やリラックス効果、筋力維持、骨密度の向上等、メリットが多いです。
また、適度な運動は睡眠の質も向上させます。ただし、無理はせず、自分のペースで続けることが大切です。運動習慣を楽しみながら継続し、心身共に健康的な更年期を過ごしましょう。
市販薬・サプリを活用
更年期症状の一時的な緩和や栄養補給のために、市販薬やサプリメントの活用も効果的です。これらはのぼせ(ホットフラッシュ)や発汗、不眠の改善に役立つ場合があります。食事の補助としてカルシウムやビタミンB郡・C・D・E、イソフラボン等のサプリメントも効果的です。ただし、持病がある場合や他の薬を服用している場合は、相互作用に注意しましょう。使用前には必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。また、サプリメントに頼りすぎず、基本的にはバランスの良い食事をとり、全体的な健康管理を心がけましょう。
専門医による治療
ホルモン補充療法は、減少したエストロゲンを補充することで症状を緩和しますが、副作用のリスクもあるため、慎重な判断が必要です。漢方療法は、個々の症状に合わせて処方され、心身の乱れを整える働きがあります。心理療法は、ストレス管理や不安の軽減に効果的です。
これらの治療は、産婦人科や更年期外来、女性外来で受けることが可能なため、つらいときは我慢せず、早めに医師に相談しましょう。適切な治療により、生活の質の向上が期待できます。
更年期を迎える前の疑問
更年期を迎える前には、多くの疑問や不安が生じるでしょう。更年期に関してよくある疑問は、以下のとおりです。
● 更年期障害になりやすい人とは?
● 更年期なのかをチェックする方法は?
● 更年期障害の治療は保険適用になる?
このような疑問を解消することで、更年期に対する理解を深め、適切な対策を事前に講じることができます。知識を得ることで不安を軽減し、より前向きな姿勢で更年期に備えましょう。それぞれの疑問について詳しく回答します。
更年期障害になりやすい人とは?
更年期障害のリスクは個人によって異なりますが、真面目で完璧主義の傾向がある人や、仕事・育児・介護等のストレスが多い人はなりやすいとされています。これは、ストレスがホルモンバランスに影響を与えるためです。ただし、体質も大きく関係するため、同じ状況でも症状の現れ方には個人差があります。このようなリスク要因を認識し、事前に予防策を取ることが重要です。
更年期なのかをチェックする方法は?
更年期症状の評価には、SMI(Simplified Menopausal Index)という簡易的な指数がよく用いられます。これは10種類の質問に答えて点数化し、更年期の度合いを評価するものです。各症状の頻度や程度によって評価し、合計点数で更年期障害の度合いを判定します。このチェックは自己診断の目安となり、適切な対処法を選ぶ指針として有効です。51点以上が受診の目安とされていますが、最終的な診断は医師が行います。そのため、気になる症状がある場合は、点数にかかわらず専門医へ相談しましょう。
更年期障害の治療は保険適用になる?
更年期障害と診断され、医師による適切な治療を受ける場合は、保険が適用されます。例えば、ホルモン補充療法や漢方による治療は、一般的に保険適用の対象です。ただし、すべての治療や薬剤が保険適用というわけではありません。美容目的の治療や、医学的に必要性が認められない治療は保険適用外となります。
実際に受ける治療が保険適用内かどうかは、治療開始前に必ず医師や医療機関に確認しておきましょう。自己負担額や治療期間等も併せて確認しておくと、経済的な面での準備もしやすくなります。保険適用の有無を事前に把握し、安心して治療を受けられるようにしましょう。
更年期を前向きに乗り越えるために体の変化を理解しておこう
更年期は女性の人生において重要な転換期であり、さまざまな身体的・精神的変化を経験する時期です。しかし、これらの変化は自然な過程であり、適切な対処法を知れば、快適に過ごすことができます。まず、自身の体調の変化に敏感になり、早めに症状を把握することが大切です。対策として、食生活の見直しや適度な運動、十分な睡眠等、基本的な生活習慣の改善が効果的とされています。必要に応じて、市販薬やサプリメントの利用も検討しましょう。
症状が重い場合は、躊躇せず専門医に相談することをおすすめします。また、身近な人からの精神的なサポートを得るのも重要です。更年期を単なる我慢の時期とせず、新たな人生のステージへの準備期間として前向きに捉え、より充実した日々を送りましょう。