【ファイナンシャルプランナー 高山一恵さんインタビュー】 女性にこそ必要な「わたし」を軸にしたマネープランの立て方
PROFILE
1 女性にこそ、マネープランが必要な理由
2 女性が陥りがちなお金の間違いと、不安の正体
3 “わたし軸”って、具体的にどういうこと?
4 まずは「未来の自分」を想像してみる
5 自分の人生をタイムバケットで考えてみる
6 女性の人生を守るのは知識よりも、まずは「わたし」という軸
女性にこそ、マネープランが必要な理由
I'm OK? 編集部:今日は「わたしを軸にしたマネープラン」をテーマにお話を聞かせてください。まず、なぜ女性にとって、自分を主体としてお金の問題を考えることが重要なのでしょうか?
高山さん:女性はライフイベントや、自分以外の人の影響を受けやすく、お金の状況が変わりやすいんです。結婚や出産、働き方の変化があると、収入や支出の形が大きく変わりますよね。例えば結婚した後に、パートナーの転勤に合わせて離職するのも、男性より女性の方が多いという現実があります。つまり、女性のお金事情はパートナーの状況に影響されてしまうこともあるのです。だからこそ、女性がマネープランを考えるということは、自分がどういう人生を歩みたいのかという、人生そのものを考えることだと思うんです。
I'm OK? 編集部:たしかに…20代から40代は、女性にとって変動の真っただ中ですね。
高山さん:そうなんです。それに、最近はSNSやWEBでお金の情報がたくさん入ってくるので、理想や正解の間で迷ってしまう女性も多いです。
女性が陥りがちなお金の間違いと、不安の正体
I'm OK? 編集部:女性だからこそ抱くお金の不安や、陥りがちな間違いというのはありますか?
高山さん:これは傾向として言えることなのですが、出産や育児、家族等によって影響を受けやすいからこそ、自分の軸を持ちにくく、その結果、友人やSNSの中のような他者と比較してしまいがちです。
それから日本特有の事情として、女性の社会的環境も影響しています。今の時代は長く不況が続いた影響もあり、老若男女、年代を問わず老後のお金に漠然とした不安を抱く人が増えています。そのうえ、時代は変わりつつあるけれど、日本では女性の経済的自立が必ずしも最善と考えられてこなかったという背景もあります。過去長い間、他者と共存する形の人生設計が望まれてきたのに、今は自立が強く謳われるようになり、じゃあ結婚や出産をしても仕事が続けられるのか、教育費はきちんと捻出できるのか、その後に老後のお金が残るのか…と、先を考えては不安ばかり募らせてしまう、というのはよくあることです。
I'm OK? 編集部:お金のことを考える前に、お金の不安ばかりが大きくなってしまいますね…。
高山さん:そうなんです!お金に限らず、不安なことと向き合うというのは負荷がかかります。だからこそ、本当は考えなければいけないのに動き出せない、考えたくない、というステージにいる人も多いように感じます。
“わたし軸”って、具体的にどういうこと?
I'm OK? 編集部:改めて、「わたし」を軸にしたマネープランとはどういうものですか?
高山さん:簡単にいうと、「自分の価値観を中心に置いたお金の設計」です。例えば、同じ年収でも、安心のために貯金を厚くしたい人と経験にお金を使いたい人では、最適解が違います。どんなお金の使い方なら有意義か、というのは人によって違い、それはもちろん家族であっても価値観が異なることもあります。節約するのもお金を使うのも、自分自身が納得できているかを基準にプランを立てることが重要です。
I'm OK? 編集部:そのとおりだと思います。たしかに人によってゴールも違いますね。
高山さん:はい。女性だからこうすべき、この年代だからこうすべき、というものではなく、「私はどんな人生を送りたい?」という問いから逆算してお金を考える。それが「わたし」を軸にした考え方です。
まずは「未来の自分」を想像してみる
高山さん:結婚や介護のように、家族やパートナーといった周囲の影響を受けやすい女性だからこそ、現実的な視点で今考えなければならない問題を抱えることが多く、結果として現状に焦点を置きすぎる傾向があります。今お得なこと、今節約できること、に目を向けがちになりますが、マネープランというのは実は長期的な目線がとても重要です。
I'm OK? 編集部:お金を貯めることも必要となると、長期的な計画になりますね。
高山さん:そうですね、まずは今を知ること。そして、タイムバケットを考えてみることがおすすめです。
自分の人生をタイムバケットで考えてみる
I'm OK? 編集部:タイムバケットというのは?
高山さん:今、とか5年後、という一点ではなくて、例えば20代、30代といったように、未来にあるそれぞれの年代になったとき、自分がどういう人生を歩んでいたいのかを考えるということです。それを想像することで、大体この時期には結婚していたい、このころには介護が入ってくるかな、と具体的なイメージが湧いてきます。
I'm OK? 編集部:たしかに、漠然としていたものがぼんやりと輪郭を帯びてきます。

I'm OK? 編集部:実際にマネープランに落とし込もうとしたとき、まず最初にすることはなんですか?
STEP1:お金の使い方を棚卸しする
高山さん:お金の使い方の棚卸しです。お金を貯めよう!と思うと、入ってくるお金ばかり考えてしまうことがあります。でも、収入が増えても支出が増えたせいで、結局残るお金が増えないというのもよくあります。まずは住宅費といった固定費、趣味や交際費等のできれば使いたいお金、そして削減できるお金を考えてみましょう。
ここでポイントなのは、削る目線ばかりではなく、自分にとってどんなお金の使い方が幸せかということ。ダイエットと似ていて、無理な節約を考えても苦しくてなかなか続きません。自分にとってこの趣味は大切、あるいは周りに影響されて着飾ってきたけれど、本当はファッションよりも体験そのものに興味がある、というように、自分の本当に好きなことを考えてみてほしいです。そもそも今の自分というものが、割と「こうあるべき」という思い込みによってできあがっているということも少なくありません。
STEP2:生活防衛資金を作る
高山さん:次に重要なのは、生活防衛資金を作ることです。
I'm OK? 編集部:生活防衛資金とは何ですか?
高山さん:生活するために最低限必要になるお金です。例えば、ケガや病気で一定期間収入がないという状況でも、生きるために必ず発生するお金のこと。お金の不安が大きい人は、まずはこれを作ることで目先の不安が解消されます。
I'm OK? 編集部:生活防衛資金はいくらぐらい必要ですか?
高山さん:いろいろな考え方がありますが、目安としては生活費の最低6カ月分ぐらいです。例えば離職するとすぐに次の仕事が見つからないこともあるので、3カ月分だと途中で追い詰められて判断を焦ったりしがちです。子どもがいれば1年分ぐらいはあると理想です。
STEP3:見直し前提で、まずは設計
I'm OK? 編集部:女性は結婚や出産をまだしていない段階だと、ますます見通しが立てにくくなりませんか?結婚に限らず、見通しが立てにくいけれどもお金に大きく影響することはどう考えたらいいでしょうか。
高山さん:先ほどのタイムバケットで考えた時、見通しが立たない部分というのは、つまりある程度先のことですよね。ここは、とりあえず決めます。自分の理想をベースにして良いので、仮のプランを立てる。もちろん、複数立てておけばさらにいいのですが、マネープランやライフプランは「その通りにいかなかったら…」と思うから立てにくいという側面もあります。ある程度そのタイムバケットに近づいてきたら今より見通しが立てやすくなるはずなので、そのときに変えればいいんです!
お金も人生も、目標やゴールなく進むのは迷いやすいし、理想に到達しにくくなります。まずは理想をしっかり考えて、そこから逆算したほうが現実にはぐっと近くなるんです。
STEP4:定年までのプランを組む
I'm OK? 編集部:時間軸で言えば、このプランのゴールはどこになりますか?
高山さん:何歳まで生きるのか、というのは誰にとっても未知ですよね。特に今は人生100年時代と言われています。でも、収支のメインとなるのはやっぱり働けるうち。そう考えると、最低でも定年までに必要なお金を作る必要があるので、マネーという観点では、「ゴールは定年まで」と置きましょう。
定年までにどの程度貯蓄したいのかが明確になれば、10年ごとの貯蓄目安が分かります。独身の場合は比較的シンプルですが、子どもがいる人は、進学等で教育費が多くかかる時期等と照らし合わせて、いつ頃出費が増えそうか、いつ頃貯蓄に集中すべきか、というプランが立てやすくなります。
女性の人生を守るのは知識よりも、まずは「わたし」という軸
I'm OK? 編集部:お金に不安がある女性に、伝えたいことはありますか?
高山さん:情報過多の時代なのは、お金のことも例外ではありません。スマホ一つで知識がいくらでも得られるようになり、これはダメ、これはこうすべき、という短絡的な情報を目にしやすい環境です。でも本来は、何をどうすべきかは個々の価値観によって異なります。お金は貯めれば貯めるだけ良いというわけでもなく、必要なお金が残せているのであれば、切り詰めすぎる必要もないはずです。
つまり、重要なのは自分が納得できているかどうか。そのためには、実はお金を使ってみることが大切なときもあります。使ったからこそ、自分にとって何が無駄で何がそうではないのかが分かる、ということがあります。だから私は、20代のように若い時は、ある程度、趣味やお付き合いにお金を使うのも大事だと思っています。
これを機会に、すぐに答えを出そうとしなくていいので、まずは、じっくり自分と向き合う時間を作ってみてください。