おしりから突き上げるような痛みが生理中に…原因や対処法を徹底解説
PROFILE
1 生理に関連するおしりから突き上げるような痛みの原因
2 慢性的におしりから突き上げるような痛みを起こす原因
3 おしりから突き上げるような痛みが突然起こる原因
4 おしりから突き上げるような痛みで注意が必要なケース
5 生理のときのおしりから突き上げるような痛みの3つの対処法
6 生理中の痛みに関する無料の相談先
7 おしりから突き上げるような痛みに関する疑問
8 痛みの原因を知りしっかり対処しよう
生理に関連するおしりから突き上げるような痛みの原因
生理中のおしりの痛みの原因はさまざまです。特に医療機関への早期受診が必要となる、「子宮内膜症」と「子宮腺筋症」の2つの病気と、排卵痛について解説します。
閉経まで続く可能性「子宮内膜症」
生理がある女性ならばだれでもなる可能性があるのが、子宮内膜症です。子宮内膜症は子宮内膜やそれに似た組織が、子宮内膜以外の場所に現れる病気です。
子宮にできた子宮内膜は、通常生理とともに体外に排出されます。しかし子宮ではない場所にできた子宮内膜は、体の外に出せません。子宮内膜が現れた場所の組織に癒着し、炎症や痛みの原因となってしまいます。
子宮内膜症は膀胱のような骨盤内、腸のような腹腔内だけではなく、まれに肺や心臓にも生じます。おしりから突き上げるような痛みがある場合、子宮内膜症がおしりに近い直腸と子宮の間に発生しているのかもしれません。
子宮内膜症には以下のような特徴があります。いくつかあてはまる場合には、子宮内膜症の可能性を疑ってみましょう。
● 生理痛がひどくて長く続く
● 生理以外のときにも痛みがある
● 生理のたびに症状が悪化している
● 妊娠しにくい
● 生理の出血量が多い
● 排便時や性交時にも痛みがある
子宮内膜症になる原因はわかっていません。子宮内膜症は遺伝しませんが、子宮内膜症になりやすい体質と遺伝の関係を指摘する専門家がいます。子宮内膜症の近親者がいるなら注意するとよいでしょう。
30代後半からなりやすい「子宮腺筋症」
おしりから突き上げるような痛みを感じる病気には、子宮内膜症の他に子宮腺筋症があります。子宮腺筋症は、子宮内膜の腺組織が子宮筋層内で増殖する病気です。生理の際に出るプロスタグランジンというホルモンの影響で子宮が収縮し、痛みを引き起こします。
子宮腺筋症に多く見られるのは、以下の症状です。
● 生理の出血量が多い
● 強い生理痛がある
● 膀胱や直腸に圧迫感がある
● 性交時に痛みがある
● 生理時以外の腹痛や腰痛
子宮腺筋症は女性ホルモンのエストロゲンの影響を受けるので、閉経を迎えるまで症状が重くなっていきます。35〜50歳くらいの女性が痛みを感じやすく、閉経すると症状が改善するようです。
子宮腺筋症の診断は超音波検査やMRIで行われるケースが多いようですが、診断を確定するためには、入院して手術で子宮から子宮内の組織を採取しなければなりません。
治療方法には薬物療法もありますが、根治のためには手術による子宮全摘出が一般的です。
排卵痛
排卵時に生理痛のような痛みを感じることがあります。これは、卵子が卵巣の壁を突き破る際の痛みだと考えられますが、痛みがない人もいればその強さも人によって異なります。
生理痛のように下腹部に痛みを感じる人が多いのですが、中には腰痛や、おしりから突き上げるような痛みを感じる人もいます。生理予定日から大体2週間前あたりに痛みが出やすいので、これも判断材料の1つになります。
排卵痛自体は排卵が終わってしまえば痛みもなくなるため、生理痛の際に飲む市販の鎮痛薬で十分対処できることもあるでしょう。しかし、いつもより明らかに痛みが強い場合や長引いている場合は、何らかの病気が隠れていることもあるため、婦人科に相談してください。
慢性的におしりから突き上げるような痛みを起こす原因
生理前か否かに関わらず、日頃から慢性的におしりから突き上げるような痛みを感じる場合に考えられる原因は次の通りです。
痔核(外痔核)
いぼ痔の1つである外痔核は、強い痛みを引き起こす場合があります。肛門付近にいぼ状の腫れができる痔核は、他の痔と異なり刺激が加えられなければ出血しにくいのが特徴です。しかし、痛みが強いというのも特徴のひとつで、痛みで座ることができなかったり、排便もできなかったりすることがある程です。
また、外痔核は治りやすいものでもあります。排尿、排便痔に強くこすって刺激を与えたりせず、清潔な状態にしておくことで、長くても一週間程度で痛みが軽くなりはじめ、そのまま痛みがおさまるのが一般的です。
痔核部分をできるだけ清潔かつ通気性のよい状態に保ち、軟膏薬を塗るなどしておけば時間と共にひくことがほとんどですが、場合によっては切開することもあります。
肛門周囲膿瘍
肛門付近の病気でおしりから突き上げるような痛みを伴うものには、肛門周囲潰瘍もあります。これは、肛門付近の皮膚の小さな穴に細菌が入って化膿して起きるもので、化膿が進むに連れて痛みが強くなり、発熱することもあります。さらにに厄介なのは軟膏や飲み薬などでは治りにくいということ。自然に治っていくこともありますが、小さく切開して膿を出すことで治りやすいだけでなく、劇的に痛みが緩和されたという人も多いようです。
おしりから突き上げるような痛みが突然起こる原因
生理とは関係なくおしりがキューッと痛む場合、骨盤や肛門、陰部等に異常が起きている場合があります。それぞれの異常について解説します。
骨盤の炎症・歪み
骨盤の異常には、仙腸関節障害や仙腸関節炎等があります。仙腸関節は骨盤に関係する関節で、足からくる衝撃を、上半身に伝える前に吸収する働きがあります。この関節が緩んだり固まったりすると、以下のような場所に痛みを引き起こします。
● 骨盤の出っ張り
● 足の付け根
● おしり
● 腰
仙腸関節障害や仙腸関節炎は、いつも足を組む向きが同じだったり、重いバッグを常に同じ肩にかけて歩いていたりすると生じやすいようです。骨盤に左右非対称の負荷がかからないように、日常的に気をつけるようにしましょう。
特に生理中に痛みがひどくなる場合も、理由があります。骨盤に炎症や歪みが生じていると、子宮内膜を体から出すために、子宮がより大きな収縮運動をしなければなりません。大きすぎる子宮の収縮運動は、おしりにある仙骨神経叢という神経を刺激し、痛みを出します。
また骨盤の異常は、おしりを強打した後や出産後にも生じやすくなります。仙腸関節の痛みはヘルニアのような腰痛と間違われやすく、治療が遅れやすいので注意してください。
肛門周辺の異常
生理に関係なくおしりに痛みを時折感じるなら、肛門や肛門周辺に異常があるかもしれません。肛門周辺というと、痔を思い浮かべる方も多いでしょう。痔や肛門周辺の潰瘍なら、波はあるものの常に痛みが続きます。
常に痛みがあるわけではなく一瞬ズキンとくる痛みがたまにくる、という場合には以下のような病気が潜んでいる可能性があります。
● 消散性直腸肛門痛
● 肛門挙筋症候群
消散性直腸肛門痛になると、突然おしりに激しい痛みが生じます。痛む時間は、数秒からしばらく続くものまでさまざまです。
肛門挙筋症候群は肛門付近に筋れん縮が生じるため、直腸に痛みが起こります。痛みの長さは短いものから20分近く続くものまであります。直腸にズキンとくる一過性直腸神経痛や、尾骨付近が痛む尾骨痛も、肛門挙筋症候群の仲間です。
陰部神経痛
陰部神経痛は、陰部神経の痛みを指すので、女性だけではなく男性にも生じます。おしりや太ももの内側、恥骨丈夫、尾骨、陰部、下腹部等が痛むケースが多いようです。
陰部にかかる圧力により、痛みが発生しやすくなります。特に以下のようなケースに痛みが強く出ていないか確認してみましょう。
● 排便の力み
● 生理の出血量が多い日
● 便秘
● おしりへの圧力(椅子に長時間座る、椅子が固い等)
陰部神経痛の痛み軽減には圧力を緩めることが大事なので、長時間座って仕事をする際に椅子にクッションを敷く等工夫するとよいです。また痛みが続くようなら、別の病気の可能性があるので病院で診察してもらってください。
おしりから突き上げるような痛みで注意が必要なケース
生理中に起こる痛みかどうかに関わらず、おしりから突き上げるような痛みの中には病院への受診が必要になることがあります。すでに紹介した痔核のように自然に治る可能性があるものでも、悪化すると排便すら困難になり、肛門以外の面に悪影響を及ぼすことがあります。また、そもそも腸や骨盤内での炎症や病気が原因となっていることもあり、その場合は早急な治療が要されます。
我慢できないほどの強い痛みや、高熱を伴う場合、何日も痛みが引かない場合は肛門科を受診してください。
生理のときのおしりから突き上げるような痛みの3つの対処法
おしりから突き上げるような痛みの対処法を紹介します。セルフケアで改善できる場合もあるので、以下に解説する3つの対処方法を、上から順番に試してみましょう。また、病院に行く場合は何科にかかるべきかという点も参考にしてください。
1. 下半身を温める
2. 市販薬を使う
3. 病院で原因を特定して治療する
下半身を温める
仙腸関節の動きが固くなっているときは、痛みが強く出ている部位を温めましょう。カイロや厚着で部位を温めるほかに、入浴や半身浴等の方法があります。運動で血流をよくしても痛みが和らぐことがあるので、自分に適した方法を探してみてください。
しかし関節の痛みや炎症の全てに対して、温めるという対処法を取るわけではありません。捻挫や打撲の初期症状やぎっくり腰のような急性腰痛に関しては、冷やした方が効果的です。痛みの原因によっては、患部を温めたために炎症が悪化する場合があるので注意しましょう。
痛みを緩和しようと無理して温めず、痛みが和らいでくるのか確認しながら少しずつ温めるのがポイントです。
市販薬を利用
痛みを一時的に緩和させたいなら、市販薬を使うのも選択肢の1つです。生理痛をおさえる薬や解熱鎮痛剤には、一般的に解熱鎮痛効果のあるイブプロフェンやロキソプロフェンという成分が含まれています。
イブプロフェンは抗炎症作用が強く解熱鎮痛作用もあり、ロキソプロフェンは鎮痛効果が特に強いと言われています。いずれもドラッグストアのような薬局に陳列している薬なので、簡単に手に入ります。
痛みをおさえる薬は一時的に痛みを緩和できますが、原因自体を解決するわけではありません。そのため薬の効果がなくなると、また痛み出してしまいます。原因を特定して対処しようと思ったら、病院で調べてもらいましょう。
またおしりから突き上げるような痛みが、冷えや便秘、痔等を原因とする場合、それぞれの原因に効果がある市販薬を使うのが効果的です。冷えが原因なら体を温める作用がある生姜(ショウキョウ)やケイヒといった成分が含まれる漢方を、便秘なら便秘の薬を、肛門周辺のトラブルならそれにあった薬を購入してください。市販薬の購入の際にも、薬局で薬剤師に相談することもできるので、デリケートな悩みではありますが、できれば相談して選ぶことをおすすめします。
病院で原因を特定して治療
患部を温めたり、市販薬を使っても効果がない場合は、病院で原因を特定して治療する必要があります。子宮内膜症のような病気の場合、症状が生理のたびに悪化してしまうため、速やかに治療しましょう。
「原因は子宮なの?肛門なの?骨盤なの?」と、何科にかかるべきか悩む方も多くいます。生理中に痛みがある場合は、まず婦人科を受診してみてください。婦人科は女性特有の病気に対して強みを持っています。また妊娠中の場合は、妊婦健診等でお世話になっているかかりつけの医者に相談するとよいでしょう。
おしりから突き上げるような痛みの原因は子宮だけではなく、骨盤や肛門等に起因するケースも多く見られます。そのようなケースでは、外科や消化器科、肛門科等で専門的な治療をします。
痛みの原因を調べるために、さまざまな検査があります。生理中は尿検査ができないことがあるので、検査と生理日が重なりそうなら時期をずらしましょう。
生理中の痛みに関する無料の相談先
生理中の痛みに関して相談に乗ってくれる場所があります。「おしりが痛いなんて、友人や親に相談しにくい」という場合は、相談センターを頼ってみましょう。
性と健康の相談センター
厚生労働省が主導で、都道府県、政令指定都市、中核市が主体となって行っているのが「性と健康の相談センター」です。従来から「女性の健康支援事業」と「不妊専門相談センター事業」がありましたが、令和4年に男女問わず相談しやすいようにと「性と健康の相談センター」に一本化されました。
相談できる内容は、多岐にわたります。一例を以下に記載したので参考にしてください。
● 思春期の女性の健康相談
● 婦人科疾患、更年期障害等
● 予期せぬ妊娠
● 新型コロナウイルスに関連した妊娠・出産の相談
● 出産前検査について
性と健康の相談センターでは、ライフステージに応じた性や生殖に関する相談ができます。厚生労働省の公式サイトに一覧が掲載されているので、在住する市町村の相談センターに連絡を取ってみてください。
相談先によって異なりますが、基本的に相談は平日の夕方までです。センターによっては電話だけではなく、メールやオンラインで相談できます。例えば広島県のセンターでは、事前に予約すれば、土日祝日や夜間におけるオンライン相談も可能です。
参考:厚生労働省「性と健康の相談センター事業の概要」
日本助産師会相談窓口
助産師というと、妊娠や出産、子育ての相談場所のように感じますが、実際には女性の性や健康の悩み全般の相談にのってくれる専門家です。思春期の問題から更年期障害まで多岐にわたる悩みを受付ているので、保健指導ができる専門家に相談したいと思ったら日本助産師会を頼ってみましょう。
全国各地の助産師会の相談受付時間は、相談先によって異なります。相談先によっては相談内容を妊娠・子育てに絞っていたり、1カ月に2日程度しか相談日を設けていない窓口もあるので、詳細は日本助産師会の全国相談窓口を確認してください。
参考:日本助産師会「全国の相談窓口」
加入中の保険の相談窓口
加入中の保険によっては、無料の健康相談窓口を設けている場合があります。女性の看護師や医師が対応してくれケースもあるので、「おしりからくる痛みについて、男性には相談しにくい」という方も利用しやすいでしょう。
保険の相談窓口を利用できるのは基本的に保険加入者で、受付の際に保険の証券番号が必要とされるのが一般的です。加入している保険会社の健康相談サービスを利用する際には、手元に保険証券を準備してください。
おしりから突き上げるような痛みに関する疑問
おしりに急激な痛みがあると、不安になるのは当然です。ここではおしりから突き上げるような痛みへの3つの疑問に対して、Q&A方式でお答えします。
生理中に痛みがあるのは当たり前?
子宮内膜を体外に出すために、生理中は子宮が収縮します。強い収縮の際に痛みがあること自体は珍しくありません。子宮の収縮や、出血量の多さによる神経の圧迫、ホルモンバランスの崩れ等が原因で、生理中の出血の多い日に腹痛や腰痛、頭痛を感じます。
しかし耐えがたい激しい痛みや、日常生活に支障をきたすような痛みは、子宮内膜症のような深刻な病気から生じている可能性があります。子宮内膜症は日本人の10%が悩んでいる病気と考えられ、珍しい病気ではありません。
痛みが続き生理のたびに悪化しているようなら医師による診断を受け、原因を突き止めて治療を開始しましょう。
参考:公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会
▼生理痛に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
生理痛は4つの原因で発生!ひどいならば病院で治療を受けよう
生理痛がひどいときはどうする?原因や対処法をわかりやすく解説
生理痛の症状がひどいときはどうする?痛みを和らげる4つの方法を紹介
薬はインターネットで買える?
インターネットで購入できる薬と、購入できない薬があります。薬には副作用のリスクがあるため、安全な医薬品を購入できるように薬機法でさまざまなルールが決められています。
インターネットで購入できるのは、第1類・第2類・第3類医薬品の3種類に分けられる一般用医薬品です。医療用医薬品(処方薬)や要指導医薬品に分類される薬は、対面販売が義務づけられているため、インターネットでは購入できません。
薬機法に則って作られている販売サイトで、一般用医薬品のみを購入するようにしましょう。また販売許可を得ている販売サイトかどうかは、厚生労働省の公式サイトで確認できます。
参考:厚生労働省「一般用医薬品の販売サイト一覧」
生理を理由に仕事を休める?
生理を理由に、仕事を休むことができます。生理休暇は労働基準法に記されている、労働者の権利です。
労働基準法(第六十八条)には、以下のような記載があります。
「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」
つまり生理の症状がひどくて就業が困難な場合には、生理休暇を取得できるということです。また、生理休暇は雇用形態に関わらず、契約社員やパート、アルバイト等でも取得可能です。
ただし、生理休暇は必ずしも有給休暇ではありません。生理休暇の詳細決定は会社によって異なるので、気になる場合は生理休暇が有給かどうか、休みの取得日数に上限はないか等会社に詳細を確認してみるとよいでしょう。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法 第68条」
痛みの原因を知りしっかり対処しよう
場所が場所なだけに、おしりから突き上げるような痛みはなかなか人に相談できません。つい痛みを我慢して、やり過ごしてしまいます。しかし生理中の耐えがたい痛みには、深刻な病気が隠されているケースがあるので注意が必要です。この記事で紹介した以外にも、手術術後癒着(特に婦人科・消化器手術)、がん性疼痛(骨転移含む)などが挙げられますが、これらは比較的まれなケースです。手術歴がある人や、他の不調がある人はその可能性を踏まえて医師に相談してみましょう。
体を温めたり薬局の薬を使用したりといった対処方法を行っても効果がない場合、速やかに専門家に尋ねましょう。最初から病院に行くのが不安なら、女性の健康についての悩み相談を受付けている窓口に問合せるという選択肢があることも覚えておきましょう。