妊娠のしくみとは?確認方法やわかったときに気を付けたいことを解説
PROFILE
1 妊娠のしくみ
2 妊娠初期の体の変化
3 妊娠したかどうかの確認方法
4 妊娠とわかったら気を付けること
5 妊娠の仕組みや体の変化を把握して将来に備えよう
妊娠のしくみ
まずは、妊娠がどのように成立するかを解説します。妊娠は、排卵・射精・受精・着床といった4つのステップを経て成立します。受精卵がどのように形成され、子宮内膜にどのように着床するのかを理解しましょう。
排卵
排卵とは、成熟した卵子が卵胞を破って卵巣から放出されることです。女性は思春期を迎えると、生理がはじまります。生理には一定の周期があり、卵胞期・排卵期・黄体期・生理といった4つのサイクルを繰り返します。このうち、排卵が起こるのは排卵期です。
卵胞に包まれた卵子は、生理周期に合わせて成長します。排卵直前には、直径20mm程度の大きさになるといわれています。排卵の時期にはエストロゲンの分泌量が急激に増えることで、子宮内膜の一部が剥がれることがあります。
このときに排卵出血と呼ばれる少量の出血が起こることがありますが、生理現象なので問題ありません。卵子の寿命は24時間程度といわれており、この間に受精しなかった場合は子宮内膜が剥がれ落ち、生理がはじまります。
射精
射精とは、男性の生殖器から体外に精液が放出されることです。精液の中には、精子が含まれています。腟内に入り込んだ精子は、子宮頸管と子宮をとおって卵管に進み、卵管で卵子を待ちます。
精液に含まれる精子の数は、毎回一定ではありません。精子の数は1回の射精で1億個以上が含まれているといわれていますが、個人差があります。また、腟内に多くの精子が放出されても、すべてが卵管にたどり着けるわけではありません。
卵管までたどり着ける精子はごくわずかで、必ず受精に至るとは限らないのが実情です。卵子と同様に、精子にも寿命があります。腟内に放出された後の精子の寿命は、72時間程度だといわれています。
受精
受精とは女性の腟内に精子が入り、卵管で卵子と出会って融合し、一つの細胞になるまでのプロセスです。卵子と精子が融合した細胞は、受精卵と呼ばれています。排卵により、卵管に放出される卵子は一つだけです。
そのため、多くの精子が卵管にたどり着いても、卵子と融合できるものは一つに限られます。受精卵は2個から4個、8個と細胞分裂を繰り返しながら子宮に移動します。受精卵が卵管から子宮にたどり着くまでの期間は、4~6日程度です。
ただし、卵子と精子が融合して受精卵になっても、必ず妊娠が成立するとは限りません。細胞分裂がうまくいかなければ、子宮までたどり着けなかったり、着床できなかったりすることもあります。
着床
着床とは、細胞分裂を繰り返しながら移動した受精卵が子宮にたどり着き、子宮内膜に潜り込むプロセスです。受精卵が着床するまでの期間は、受精卵ができてから7日程度が目安です。
ただし、この時点では妊娠が成立したわけではありません。妊娠が成立するのは、受精卵ができてからおよそ12日後です。妊娠しているか気になる場合、早い段階で市販の妊娠検査薬を使用したいと考える人もいるかもしれません。
妊娠検査薬は、hCGと呼ばれるホルモンの分泌量を基準に測定するのが一般的です。妊娠成立直後はhCGの分泌量がまだ少なく、たとえ妊娠していても陽性反応が出ない可能性があります。
妊娠初期の体の変化
妊娠後は、徐々に体に変化が起きるようになります。変化の度合いや症状等は、個人差があります。妊娠初期に表れやすい症状については、こちらの記事で詳しく紹介しているので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
ここからは、妊娠初期に表れる基本的な体の変化を紹介します。
▼妊娠初期症状に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
妊娠初期症状にはどんなものがある?生理前との違いもチェック
基礎体温
基礎体温とは、生命を維持するために最低限のエネルギーしか消費していないときの体温です。女性の場合、生理周期に合わせて基礎体温が変化します。これは、プロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が変動するためです。
生理周期が一定の場合、基礎体温を継続的に測定すると、低温期と高温期の2層にわかれます。排卵後は妊娠に備えてプロゲステロンの分泌量が増えるため、少し体温が上がり、高温期を迎えます。
妊娠に至らなければ、生理を迎えるとともに低温期に入るのが一般的です。しかし、妊娠後は妊娠後期までプロゲステロンの分泌が活発になるため、低温期に入らず、基礎体温が高い状態が続きます。
生理・おりものの変化
生理は、妊娠するととまります。これは、プロゲステロンやエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが大きく関係しているためです。排卵後、妊娠に至らなかった場合、女性ホルモンの分泌量が減り、不要となった子宮内膜が剥がれ落ち、体外に排出されます。
一方で妊娠が成立した場合、女性ホルモンの分泌量が減らず、子宮内膜も必要になるため、生理として体外に排出されません。着床時期に着床出血と呼ばれる少量の出血が起きることがあるため、生理がきたと誤解するケースもあります。
また、妊娠すると生理だけでなく、おりものにも変化が表れます。これは生理と同様に、女性ホルモンの分泌量による影響です。妊娠すると女性ホルモン分泌量が減らないため、おりものの量が普段よりも増える傾向にあります。
▼妊娠初期の生理の状況については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
妊娠初期に生理痛があるのはなぜ?原因と適切な対処法を解説
つわり
妊娠には、つわりの症状で気付く人も少なくありません。つわりとは、妊娠初期に表れる不快な諸症状です。代表的なつわりの症状は、次のとおりです。
● 吐き気
● 嗅覚過敏
● 眠気
● イライラ
● 頭痛 等
つわりの症状が表れはじめるのは、妊娠5週目頃です。妊娠8週~9週頃の症状が最もひどく、徐々に落ち着いてくるのが一般的です。しかし、人によっては、妊娠後期や分娩までつわりの症状に苦しむ人もいます。
つわり症状の表れ方や度合いは、人によってさまざまです。経産婦でも、毎回同じ症状が表れるとは限りません。
▼妊娠初期のつわりについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
妊娠初期のいつからつわりが起こる?症状ごとの対処法を徹底解説
ホルモンバランスによる体調変化
女性の場合、ホルモンバランスが体調に影響しやすい側面があります。特に妊娠中はホルモンバランスが変化し、体調への影響が出やすいので注意が必要です。妊娠中に出やすいホルモンバランスによる主な体調変化は、次のとおりです。
● 頭痛
● 眠気
● 胸や腹部の張り
● 腹痛
● 胃痛
● 腰痛
● 肌荒れ
● 便秘
● 倦怠感 等
妊娠中は上記のような身体的症状のほか、イライラする、怒りっぽくなる、情緒不安定になる等の精神的症状が表れることもあります。これは、妊娠によってホルモンバランスが変化することで、自律神経が乱れるためです。
子宮が大きくなることによる変化
妊娠すると胎児の成長に伴い、子宮が大きくなるため、徐々に腹部が膨らんでいきます。しかし、妊娠しても、すぐに腹部が膨らむわけではありません。妊娠直後の子宮の大きさは、鶏の卵程度のサイズです。
妊娠4週頃にはガチョウの卵よりもやや大きいサイズ、妊娠10週頃には握りこぶし程度のサイズに成長します。胎児の大きさはまだ小さいものの、この頃には頭や胴体、手足等のパーツの区別がはっきりとしてきます。
また、子宮が徐々に大きくなることで、周囲の臓器を圧迫します。膀胱が圧迫されれば頻尿になり、トイレの回数も増えるでしょう。胃が圧迫されれば胃の容量自体が小さくなり、妊娠前と食事量が変わらない場合は、食べ物が食道に逆流しやすくなります。
妊娠したかどうかの確認方法
妊娠に気付くきっかけは、人によってさまざまです。生理がこないことで気付く人もいれば、体調の変化で気付く人もいます。しかし、体の変化だけでは妊娠の判断が難しいため、妊娠検査薬や産婦人科で確認するようにしましょう。
妊娠検査薬を使う
妊娠検査薬とは、尿を使用して妊娠の有無を調べられる試薬です。一般的な妊娠検査薬は、hCGと呼ばれるホルモンの量をもとに妊娠の有無を判定します。hCGは、着床後に胎盤になる場所から分泌されるホルモンです。
hCGが一定量を超えると試薬が反応し、陽性判定が出ます。妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後から使用できるものがほとんどです。近年の妊娠検査薬は精度が高く、産婦人科を受診する前に妊娠の有無を確認したいときに便利です。
ただし、検査の時期が早すぎる場合、十分なhCGが分泌されておらず、妊娠していても陽性と判定されないこともあります。正しく判定するためには、用法を守って検査をする必要があります。
産婦人科を受診する
妊娠検査薬で陽性判定が出た後は、必ず産婦人科を受診するようにしましょう。検査薬で陽性判定が出ても、正常な妊娠だとは限りません。妊娠の中には、卵管や卵巣、腹腔等で妊娠する異所性妊娠があります。
異所性妊娠は、子宮内膜以外の場所で受精卵が着床することです。最も頻度が高いのは、卵管妊娠です。胎児は、子宮以外の場所では育ちません。異所性妊娠が起きると、胎芽の成長に伴って破裂するおそれがあります。
正常妊娠であるかを確認するためにも、妊娠検査薬で陽性判定が出た後は、産婦人科の受診が必要です。生理初日から数えて5週後半~6週前半になれば、胎嚢と胎児の心拍が確認できるため、このタイミングで産婦人科を受診しましょう。
体の症状から判断するのは難しい
妊娠初期はホルモンバランスの変化により、つわりをはじめとしたさまざまな体調変化が表れやすい時期です。しかし、予定日になっても生理がこず、体調に変化を感じたとしても、必ず妊娠しているとは限りません。
なぜならPMSや生理不順でも、妊娠初期と類似した症状が出ることがあるためです。生理予定日を過ぎても生理がこない場合は、ただ遅れているだけかもしれません。また、妊娠初期における症状の有無には個人差があります。
さらに、生理不順で体調に変化がない人の場合、妊娠中期まで妊娠に気付かないこともあります。体の症状だけでは妊娠の判断は難しいため、あまり神経質にならず、妊娠の可能性がある場合は適切に妊娠検査薬を使用して確認しましょう。
生理と基礎体温の変化で気付くこともある
妊娠するとホルモンバランスの影響により、生理や基礎体温が変化するのが一般的です。女性ホルモンの分泌量は妊娠によって増えるため、生理がとまります。妊娠後は妊娠後期までプロゲステロンの分泌量が増えるため、低温期に入らず、高温期が続きます。
そのため、生理周期が安定しており、基礎体温を付ける習慣がある場合は、生理と基礎体温の変化で妊娠に気付くケースが多いようです。ただし、ホルモンバランスは精神的な影響を受けやすい側面もあります。
基礎体温は、基本的に排卵を機に高温期に移行します。しかし、ストレスや自律神経に乱れがある場合、ホルモンバランスが崩れ、排卵が起きないことも珍しくありません。このような事情もあるため、生理と基礎体温だけでは妊娠の自己判断は難しいのが現状です。
妊娠とわかったら気を付けること
母体は胎児の成長に影響するため、妊娠前と妊娠後では生活や食事の見直しが必要になることもあります。ここからは妊娠発覚後に気を付けることを解説するので、将来のために備えましょう。
市販薬の服用は医師に確認
妊娠がわかった後は、気軽に市販薬を服用しないように注意しましょう。風邪や頭痛の症状があるときには、ドラッグストアで手軽に購入できる市販薬に頼りたいこともあるかもしれません。
市販薬に配合されている成分は処方薬よりも弱いものが多く、一時的に服用してもほとんど影響がないといわれています。しかし、市販薬の中には、胎児に影響を与える成分(NSAIDs)が含まれているものもあります。
特に妊娠初期には胎児への影響が出やすいため、添付文書での確認が必要です。やむを得ず市販薬を服用する場合は、薬剤師や医師に相談するようにしましょう。
葉酸の摂取
母子共に健康で出産するためには、妊娠中の食事管理も重要です。妊娠中は、魚や野菜等の栄養バランスが整った食事を取るようにしましょう。特に摂取を心がけたい栄養素は、葉酸です。
葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の生産をサポートする役割があります。妊娠中に葉酸が不足すると、脊髄の発達異常である神経管閉鎖障害を引き起こすリスクがあるので注意が必要です。
妊娠を希望している場合は、妊娠1カ月以上から葉酸を積極的に摂取するようにしましょう。葉酸が多く含まれる食品には、ほうれん草やモロヘイヤ、ブロッコリー、レバー等があります。
また、妊娠初期につわり症状で十分に食事が摂取できない場合は、サプリメントを活用するのも手段の一つです。葉酸の過剰摂取は吸収阻害を引き起こす可能性もあるため、1,000マイクログラムを超えないように摂取しましょう。ただし、通常は過剰摂取した場合でも尿中に排泄されるため、大きな心配はありません。
飲酒や喫煙をやめる
近年は生活習慣の欧米化により、女性の飲酒率や喫煙率が増えています。妊娠後も飲酒や喫煙を続けると、胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠がわかったらすぐにやめるようにしましょう。
飲酒による胎児への主な影響は、子宮内胎児発育遅延や中枢神経障害、頭蓋顔面奇形、心奇形等です。1日のアルコール摂取量が15ml未満であれば、胎児への影響は少ないといわれています。ただし、少ない量でも全く影響がないとは言い切れないため、極力摂取を控えるようにしましょう。
また、喫煙によって発生する煙の中には、ニコチンや一酸化炭素、シアン化合物等の有害物質が含まれています。これらの有害物質は、子宮内胎児発育遅延や流産、早産、前置胎盤等を引き起こすリスクがあるので注意が必要です。
カフェインの摂取を控える
妊娠中は、カフェインの摂取量に注意しましょう。カフェインは、コーヒーや茶葉等に含まれている成分です。近年は、カフェインの配合量が多いエナジードリンクも登場しています。1日のカフェイン摂取量が300mgを超える場合、流産や低体重児のリスクがあるようです。そのため妊娠中は、カフェインの摂取量に注意しましょう。
ただし、カフェインの摂取自体が母体や胎児に影響するわけではありません。妊娠中でも、少量であればカフェインを摂取しても問題がないといわれています。注意が必要なのは、カフェインの摂取量です。
また、コーヒーを飲む習慣がある場合、妊娠を機にやめると逆にストレスを感じる人もいるかもしれません。このような場合は、ノンカフェインコーヒーを選ぶと良いでしょう。
食事と栄養
妊娠初期はつわり症状により、思うように食事が取れないケースも少なくありません。栄養を補うために無理に食事を取ろうとすると、つわり症状が悪化し、生活や仕事に支障を来すおそれがあります。
しかし、妊娠初期の栄養は、胎児の発育にほとんど影響しないといわれています。つわり症状がひどいときには、食事を小分けにし、適度に間食を取るようにしましょう。ただし、次のような食品は食中毒や感染症を引き起こすリスクがあるため、避ける必要があります。
● 生魚
● 生肉
● 非加熱肉 等
妊娠中は、体重の増加が少ないほど胎児が育ちにくくなります。その一方で食事量を増やすことで体重が著しく増加すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になるリスクも高まります。
▼娠初期の食事については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
妊娠初期の食事はコレだけ見ればOK!摂取したい栄養素や推奨されないもの
体調優先で無理しすぎない
母子共に健康な出産を迎えるためには、妊娠中を快適に過ごすことも大切です。近年は働き方に対する価値観の多様化により、妊娠・出産後もさまざまな形で働き続ける女性が増えています。
今の職場で働き続ける場合、妊娠の報告が必要です。職場への報告は、安定期に入ってからするケースが多い傾向にあります。しかし、妊娠初期はつわりをはじめとするさまざまな症状が出やすい時期です。
安定期前は周囲への報告を控える人も多いですが、体調に不安がある場合は、早めに報告するようにしましょう。周囲に迷惑をかけることを考え、無理して働く人も少なくありません。母体が無理すると胎児の成長に影響するため、休みたいときにはしっかり休むことも大切です。
妊娠の仕組みや体の変化を把握して将来に備えよう
妊娠は、排卵・射精・受精・着床といったプロセスを経て成立します。排卵期に妊娠が成立しなかった場合、不要となった子宮内膜がはがれ、生理となって血液とともに体外に排出されます。
生理予定日から7日以上経過しても生理がこない場合は、妊娠の可能性を疑いましょう。ただし、ホルモンバランスの乱れや生理不順により、生理が遅れているだけのこともあります。
また、妊娠すると母体による胎児への影響が大きいため、必要に応じて生活習慣や食事の見直しも必要です。妊娠生活に不安がある場合は、遠慮なくかかりつけ医に相談するようにしましょう。