つわりの吐き気で悩まない。6つの対処法を実践して乗り切ろう
PROFILE
1 つわりの吐き気に関する基礎知識
2 つわりの吐き気に効果的な6つの対処法
3 吐き気はつわり以外の原因が隠れていることも
4 つわりの吐き気に関してよくある疑問
5 つわりの吐き気がつらいときは、対処法を取り入れてみよう
つわりの吐き気に関する基礎知識
つわりが原因で起こる吐き気についてよく知らない場合、いつからいつまで続くのか、自分だけが悩んでいるのではないか等、さまざまな不安に苛まれてしまうこともあります。まずはつわりで吐き気が出やすい時期はいつなのか、つわりの吐き気はなぜ起こるのか等、基礎知識を確認しましょう。
つわりで吐き気を感じやすい時期
つわりの吐き気は、妊娠5〜6週目頃から始まるのが一般的です。早い人であれば、妊娠4週目から吐き気を感じることもあります。つわりのピークは妊娠8〜10週目頃が多く、その後妊娠13〜16週目頃には症状が次第に落ち着く妊婦の方が多いです。
つわりがある時期であれば、吐き気をはじめとする症状は1日のどの時間帯でも起こり得ます。日中仕事をしなければならない時間帯で吐き気に悩んだり、夜寝る前に気持ち悪くなったりすることもあるでしょう。
つわりで吐き気を感じる原因
2023年12月、つわりの原因がGDF15というホルモンだとする論文が、総合科学学術雑誌「Nature」に掲載されました。これによると妊娠前にGDF15の値が低かった人ほど、妊娠してGDF15の値が高くなることで、つわりの症状が出やすいとされています。
また、つわりの吐き気はホルモンバランスによって引き起こされているとも考えられています。これは妊娠によって活性化した体内のホルモンが、嘔吐中枢を刺激することで吐き気が生じるためです。そのほかにも妊娠中は黄体ホルモンのプロゲステロンが増加し、体内にガスが溜まりやすくなるため、吐き気につながると考えられています。
※参考:Nature GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy
つわりの吐き気の個人差
つわりを経験する女性は、妊婦全体の50~80%ほどといわれています。しかし、つわりの症状や程度は、人によってさまざまです。短期間の軽い吐き気のみで済む方もいれば、出産直前まで吐き気をはじめとするつらい症状に苦しむ方もいます。
祖母や母親のつわりがひどいと子どものつわりもひどくなる、といったように遺伝が関係しているとの説もあります。しかし、祖母や母親はつわりの症状が軽かったものの、自分は重かったと語る女性もいるため、つわりの程度が遺伝で決まると断言するのは難しいです。また、なかには2回以上妊娠し、1人目と2人目でつわりの程度が変わる女性もいます。
また、つわりの症状が重くなる原因の一つとして、多胎妊娠が挙げられます。双子や三つ子を妊娠している場合、母体に負担がかかるため吐き気等の症状が重くなりやすいのが一般的です。
※参考:牧田産婦人科
つわりの吐き気に効果的な6つの対処法
つわりで吐き気の症状があると、日常生活を送るなかで多大なストレスを感じることになります。妊娠による体の変化でつわりが起きている以上、完全に吐き気をなくすのは難しいでしょう。しかし、吐き気の症状緩和に有効な方法がいくつかあるため、困ったときは以下の6つの対処法を実践してみてください。
水分補給
吐き気がして食事ができなくなったり、嘔吐を繰り返したりすると、体内の水分が失われます。つわりの吐き気がひどいときでも、水分補給は意識しましょう。人間は食事をしなくても、水さえあれば1カ月ほど生きることが可能といわれています。しかし、水を全く飲まなければ2〜3日で命の危機にさらされてしまいます。
軽い脱水症状になると、吐き気がひどくなることもあります。常温の水やレモン水等、飲めそうなものを試してこまめに水分を摂取するようにしてください。炭酸水や野菜ジュース、スープ等も、吐き気があるときに飲みやすいでしょう。
嘔吐している場合は、水分だけでなく電解質も失うため、脱水症状の危険性が高まります。水を飲むだけでは体内の電解質濃度が薄くなるので、経口補水液やスポーツドリンク等を少しずつ飲むといいでしょう。もし吐いてしまったとしても、経口補水液等は電解質が大腸で素早く吸収されるように組成が工夫されているため、脱水症状を防ぐことが可能です。
食事の量や回数の調整
つわりで吐き気があり、食事をしたくないと感じる方もいるでしょう。しかし、空腹状態はかえって吐き気を強めてしまいます。そのため、吐き気があるときでも、少量の食事を取るのがおすすめです。一度にたくさん食べると、胃に負担がかかって気持ち悪くなるので、少しずつ食べるようにしましょう。
吐き気がひどいときは、1日3食にこだわらず、少量の食事を数回に分けて取るのが効果的です。食べられそうなときに、食べられそうなものを食べてみてください。
つわり中でも食べやすいもの
つわりで吐き気があるときでも、水分の多いものは食べやすいという人が多いようです。いちごやスイカ、みかん、もも、りんご等のフルーツや野菜であれば、さっぱりしていて食べやすいでしょう。また、プリンやアイス、ヨーグルト等の冷たい食べ物は、口の中をスッキリさせてくれます。また、生姜は強い吐き気止めの作用を持っており、口の中をさっぱりとさせてくれます。生姜湯、生姜紅茶や、酢漬けなどどんな形でも効果はありますので、試してみるのもよいでしょう。
胃のムカつきを抑えるクエン酸が含まれているレモンやトマト、梅等を食べるのもおすすめです。固形物を食べるのが難しい場合は、ゼリー飲料や野菜ジュース、野菜スープ等を飲んでみてください。おかゆやお茶漬け等、水分が多くスルッと食べられるものを選ぶのもいいでしょう。
安静にする
つわりの吐き気がひどいときは、休息を取ることが大切です。体を動かすと気持ち悪くなることもあるため、できるだけ安静にするようにしてください。家事をしなければならない場合も、最小限にしてください。家族に家事を頼んだり、家事代行サービスを依頼したりするのもいいでしょう。
吐き気があるときは、体に負担をかけない服装や姿勢を心がけるのも重要です。締め付けのない下着や服を着用する、横向きに寝てクッションや抱き枕を脚に挟む姿勢を取る等の方法で、体を楽にできるでしょう。
つわりによる吐き気がひどい状態で働いている方は、仕事を休むことも検討してください。会社員なら、医師の診断書があれば仕事を休んでも傷病手当をもらえる可能性があります。傷病手当の対象になるかどうかは自宅での安静が必要と診断される等いくつかの条件があるので、つわりが重いと感じる場合はまず医療機関の受診を検討しましょう。
ストレス発散
ストレスは、吐き気等つわりの症状を悪化させる要因の一つです。妊娠中はホルモンバランスが急激に変化するうえに、体の変化への戸惑いや、出産や育児への不安で精神が安定せず、ストレスを感じやすくなるでしょう。
つわりの吐き気がひどいときは、休息を大事にしつつストレスを解消しましょう。趣味に没頭して自分の時間を楽しむと、リフレッシュできます。例えば本や映画に没頭したり、大声で好きな歌を歌ったりするといいでしょう。
無理のない範囲で軽くストレッチや散歩をするのも、ストレス解消に効果的です。自律神経を整えるために、深呼吸をしたり睡眠時間を長くしたりするのもいいでしょう。家族や友人等に話を聞いてもらうのも、リフレッシュにつながります。
吐き気を抑えるツボ押し
東洋医学では、つわりに効果的とされるツボがいくつかあります。吐き気の症状があるときは、吐き気を抑えられるツボを押してみましょう。
まず、手首にある「内関(ないかん)」というツボは、胃の不快感や気持ち悪さの解消に効果的です。手のひらを上に向け、手と手首の境目にあるしわの中央から指3本分ほど、ひじ側に下がったところにツボがあります。
また、足裏にある「裏内庭(うらないてい)」は、食欲不振やストレスが原因の嘔吐に効果的なツボです。人差し指裏の付け根に位置する、ふくらんだ部分を押してください。
ほかにも膝の皿の下にある「足三里(あしさんり)」は、嘔吐や腹痛、下痢等に効くツボです。靭帯(じんたい)の外側にあるくぼみから、指4本分の場所を押しましょう。
なお、ツボ押しはリラックスした状態で行うのが大切です。深呼吸を数回すると、上手に脱力できます。一つのツボは、2〜3回を目安に押してください。強い力で押す必要はないため、気持ちいいと感じる程度の力で押しましょう。
ツボを押すときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うようにすると、体の力が抜けた状態で上手に刺激を加えられます。つわりの吐き気が気になる時期は、ツボ押しを習慣として続けてみてください。
制吐薬を服用
つわりの吐き気や嘔吐がひどい場合は、医師の診断によって薬を処方してもらうことも可能です。医師は妊娠中でも安全と考えられる薬を処方するので、自己判断で市販薬を購入するよりも安心できるでしょう。
多くの場合、まずはビタミン剤が処方されます。ビタミンB6には吐き気を抑える効果があるとされているので、服用して改善するかどうかを確認しましょう。ビタミン剤で症状が改善されなければ、制吐薬のドキシラミンやメトクロプラミドが処方されることもあります。
吐き気はつわり以外の原因が隠れていることも
可能性は低いですが、妊娠中に吐き気や嘔吐等の症状がある場合、つわり以外の原因が隠れていることもあります。症状をよく確認し、つわりではないかもしれないと感じたときは、速やかに医師に相談してください。妊娠中、つわり以外に吐き気や嘔吐が起きる原因として、考えられるのは以下のとおりです。
入院の必要性もある妊娠悪阻
吐き気や嘔吐等、つわりの症状があまりにもひどい場合は妊娠悪阻が疑われます。妊娠悪阻とは、つわりが重症化した状態です。嘔吐が続いた結果、体重減少や脱水を起こし、母体や胎児に影響を及ぼします。
病院で尿中ケトン体検査を行って陽性であったり、妊娠前より体重が5%以上減少したりしている場合は、妊娠悪阻と診断され入院が必要なことがあります。重症で食事が取れない状態では、電解質やビタミン、糖分が点滴投与されます。嘔吐が続き、体重の減少が著しいときは、速やかに医療機関を受診してください。
※参考:MSDマニュアル 妊娠悪阻
ウイルスや細菌による胃腸炎
吐き気や嘔吐は、つわりではなく胃腸炎が原因で起きているケースもあります。胃腸炎は、胃と腸の粘膜に炎症が起きている状態です。多くの場合はウイルスや細菌が原因で、吐き気や嘔吐のほかに下痢や腹痛等が生じることもあります。
胃腸炎は、病原体によって潜伏期間に差があるのが特徴です。食べ物が原因の場合、食べてから数日後に症状が出るケースもあるため、気づくのが遅れることもあります。
胃腸炎が疑われるときは、水分補給が重要です。嘔吐がある場合も、少量ずつ水分補給をしましょう。嘔吐を繰り返すと水分だけでなく電解質も失われるため、経口補水液を飲むのがおすすめです。薬を服用して治療する方法もありますが、医師に妊娠中であることを必ず伝えましょう。
早期治療が必要な虫垂炎
つわりによる吐き気や嘔吐ではなく、虫垂炎を起こしているケースもあるため覚えておきましょう。虫垂炎は、虫垂内部で感染と炎症が起きた状態で、急性虫垂炎は一般的に盲腸とも呼ばれています。まず上腹部やへそ周囲に痛みを感じ、その後吐き気や嘔吐等の症状が見られることが一般的です。
妊娠中の虫垂炎は重症化しやすく、速やかに治療をしなければ流産や早産の確率が高まるとされています。吐き気や嘔吐だけでなく、強い腹痛がある場合は、虫垂炎を疑い医療機関を受診しましょう。
つわりの吐き気に関してよくある疑問
つわりの吐き気を和らげる方法はわかっても、妊娠中は普段と異なる体の変化が起こるため、不安になることも多いでしょう。つわりの吐き気に関して、多くの方が疑問に思うポイントを以下で紹介するので、チェックしてみてください。
吐き気がどの程度なら受診したほうがよいのか
吐き気や嘔吐でつらいと感じたときは、我慢せず産婦人科を受診しましょう。点滴や投薬は必要ないと判断されたとしても、受診することで医師からアドバイスをもらえます。
食べたり飲んだりすると吐いてしまう、トイレの回数が減った、体重の減少が著しい等の場合は、つわりが悪化して妊娠悪阻になっている可能性もあります。妊娠悪阻は母体や胎児に影響を及ぼすため、早めに医療機関を受診してください。
つわりの吐き気で胎児に影響は出るか
つわりで吐き気や嘔吐がある場合でも、通常であれば胎児に影響はありません。つわりの吐き気が起こるのは主に妊娠初期であり、この頃の胎児は小さいため、多くの栄養を必要としないからです。吐いてしまって食事が十分に取れなくても、成長が阻害される可能性は低いといえます。
ただし、食事や水分がほとんど取れずに脱水症状に陥る妊娠悪阻の場合は、母体に影響が出るおそれがあります。早めに医療機関を受診し、点滴治療等を受けましょう。
妊娠後期でも吐き気は起きるか
妊娠後期は、妊娠初期のつわりとは異なる理由で吐き気が起こることがあります。
妊娠後期は子宮が大きくなるため、胃や腸が圧迫されて吐き気を感じやすくなります。また、消化器官の働きを弱めるホルモンが増えることも、吐き気が起こりやすくなる原因の一つです。出産が近づくにつれて強まるプレッシャーがストレスとなり、吐き気や胃のムカつきが起こる妊婦の方もいます。
吐き気への対処法は、妊娠初期のつわりと同様です。水分補給を意識しながら、食べられるものを少量食べたり、ストレスを発散したりしてください。妊娠後期はおなかが大きいため、胃や腸を圧迫しないよう寝るときの姿勢も工夫が必要です。体の左側を下にするシムス位は、胃酸が逆流しにくいため楽に感じやすいでしょう。
つわりの吐き気がつらいときは、対処法を取り入れてみよう
吐き気はつわりの代表的な症状であり、多くの妊婦が悩んでいます。しかし、多くの人が悩んでいるからといって、つらい症状を我慢する必要はありません。水分補給を重視しながら、食事を工夫したりストレスを発散したりして、吐き気の緩和につなげましょう。
吐き気や嘔吐でつらいときは、早めに医療機関を受診してください。吐き気の原因が妊娠悪阻かどうかを知ることができ、過ごし方のアドバイスももらえるでしょう。