つわり中は7つの対処法を実践しよう。気持ち悪くなる原因から紹介
PROFILE
1 つわりの基礎知識
2 つわりの症状への7つの対処法
3 つわりに似た症状がある病気にも注意
4 つわりの対処で役立つ制度
5 つわりの時は無理をせず体をいたわろう
つわりの基礎知識
まずは基礎知識として、一般的なつわりの症状と症状を引き起こす原因と考えられるホルモンについて解説します。また、つわりの症状がでる時期もご紹介するので、目安として参考にしてみてください。
つわりの症状
つわりの症状は多岐にわたり、身体的・精神的にさまざまな症状を引き起こします。
ただ、症状の種類や程度には個人差があるため、対処法も異なってきます。どれか一つの症状のみを強く自覚する人もいれば、複数の症状に悩まされる人も少なくありません。
一般的につわりは次のような症状が確認されます。
● 吐き気
● 嘔吐
● 倦怠(けんたい)感
● 頭痛
● 眠気
● 唾液の増加
● 嗅覚過敏
● イライラ
このうち「吐き気」や「嘔吐」については、約50~80%の妊婦さんがつわりで経験するといわれています。
※参考:ヒロクリニック
つわりの原因
今までつわりの原因は「ホルモンバランスの変化」が関係するとみられていましたが、実際は不明な点も多いと考えられていました。
しかし近年では、つわりを起こす原因として「GDF15(成長分化因子15)」と呼ばれるホルモンの影響が注目されています。
通常、GDF15は脳へ食欲や吐き気等の信号を送るためのホルモンですが、妊娠した女性は胎盤をつくるためにGDF15の分泌量が増えてしまうのです。
そのため、体内のGDF15の濃度が高くなり、つわりの症状を起こすと考えられています。また、GDF15の値によって、症状の出方に違いがあるのではないかという見解もあります。
※参考:Nature
つわりの症状が出る時期
つわりの症状が出やすい時期は、妊娠5~16週目の時期といわれています。そのうち、8~10週目に症状のピークがみられることが多いです。
つまり、妊娠初期から妊娠中期の頭ぐらいまでは、体調不良が起きる可能性に備えておく必要があります。
つわりの症状への7つの対処法
つわりが起き始めると、妊娠前より体調のコントロールが難しくなるかもしれません。しかし、一つ一つの症状に寄り添っていけば、緩和できることも多いです。
ここからは気になるつわりの症状の対処法を、詳しくご紹介します。
一度に食べる量を減らして回数を増やす
つわりで「吐き気」や「嘔吐」が気になる場合は、一度の食事で食べる量を減らし、回数を増やすという方法があります。
きちんと1食分食べても吐いてしまっては、栄養が1食分損なわれたままになります。しかし、一度の食事で食べる量を減らし分散することで、少しずつ栄養を取り入れることが可能です。
もし嘔吐してしまっても、食事を分散すれば極端な栄養不足・水分不足を避けやすくなります。また、つわりが来ている時期は、妊婦さんの胃腸も弱っていることが多いです。そのため、食事を分けることで胃腸への負担も軽減することができます。
なお、食事を分けて取る際は、1食ではなく1日でトータルカロリーを摂取することを意識するとよいでしょう。空腹状態になると吐き気が強まる場合もあるため、空腹になる前に食べられるものを早めに胃に入れておくのがコツです。
もし吐き気で食べられなくても脱水になると危険なため、水分補給だけは欠かさないようにしてください。
つわりの小分け食におすすめの食べ物 |
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● おにぎり・・・水分と糖質のバランスがよい ● パン・・・手軽・薄味で食べやすい ● バナナ・・・糖質・ビタミン・マグネシウム・カリウムが取れる ● クラッカー・・・手軽にすぐおなかを満たせる ● 炭酸飲料・・・食前に少量摂取することで消化を助ける |
あめやタブレットでスッキリする
胃や胸のむかつきが気になる場合は、あめやタブレットを活用してみてください。あめやタブレットを舐めることで口内をスッキリさせ、むかつき感を抑えられることがあります。
種類はかんきつ系、梅味、ミント味等のさっぱりとしたものがおすすめです。あめは少量ですが、あまり物が食べられない時の栄養にもなります。
ただし、お菓子ばかりで栄養を取り過ぎると糖尿病の危険も出てくるため、食べすぎには注意しましょう。
気になるニオイを避ける・絶つ
妊娠すると、今まで気にならなかったニオイで体調不良となる「においつわり」になることもあります。「においつわり」の場合は、気になるニオイを避ける・絶つのが一番効果的です。
家の中にあるニオイが要因ならパートナーにも協力してもらって、ニオイの原因を避ける・抑えるようにしてください。外出先や仕事場等でどうしても避けられない場合は、マスクを着用するのがおすすめです。
また、食べ物のニオイが気になるという方の場合は、食べ物を冷ますとニオイが軽減されます。温かい物を無理して食べず、温度を下げたものを試してみてください。
体を休める
つわりの症状がつらいときは、無理をせず体を休めることも大切です。つわりは、長ければ妊娠中期の頭まで症状が続き、身体的・精神的にも消耗します。
疲労やストレスが溜まり、症状が悪化する恐れもあるため、睡眠を取ることや休める時に一息つくことはとても大切です。忙しい方は忘れがちなポイントですが、休息も選択肢の一つとして頭にとどめておいてください。
つわりの症状に対応したツボを押す
つわりの症状が起きて困っている時は「ツボ押し」も試してみてください。
東洋医学では、ツボ押しはさまざまな症状を緩和するといわれています。その中でもつわりの症状の緩和に効果的といわれているツボは以下のとおりです。
症状にあわせ、次のツボを押してみてください。
ツボの名前 | 場所 | 効果 |
---|---|---|
内関 | 手と手首の境目から指3本置いたところ | 吐き気・胃の不快感等 |
裏内庭 | 足裏の人差し指の付け根 | 吐き気・食欲不振等 |
百会 | 両耳と鼻の延長線の頭頂部 | 頭痛・肩こり・自律神経等 |
風池 | 耳の後ろと後頭部の中間 | 頭痛・肩こり・のぼせ等 |
合谷 | 人差し指と親指の根本からやや人差し指よりの部位 | 眠気・頭痛・肩こり等 |
中衝 | 中指の爪の生え際の親指側 | 眠気・血行不良等 |
適度な運動をする
倦怠(けんたい)感、眠気、イライラが気になる方は対策として、体調がよい時に適度な運動をするのもおすすめです。
運動をすることで血行が良くなり気分転換もできるため、身体的・精神的な症状を緩和できるでしょう。また、適度な運動は運動不足になりやすい妊娠中の体力維持にも効果的です。
なお、運動方法は妊娠初期でもできる「マタニティーヨガ」や「ストレッチ」等の簡単なものを選びましょう。つわりがある妊娠初期~中期は激しい運動をすると赤ちゃんの負担となってしまいます。そのため、軽い運動がおすすめです。
ここでは簡単なストレッチの方法をいくつか紹介するので、参考にしてください。
妊娠中におすすめなストレッチ | |
ストレッチ例 | 【肩のストレッチ】 両肘を曲げて握った拳を胸の前に置き、ゆっくり息を吐きながら肘を後ろに引いて肩甲骨を寄せる。肩甲骨を寄せたまま肘を下げて力を抜く。(4~5回繰り返す) 【首のストレッチ】 頭頂部を片手で横から抑え、頭を掴んでいる利き手のほうに手の重みでゆっくりと倒していく。少しキープしたらゆっくり首を戻し、反対も同様に行う。 【足首のストレッチ】 座りながら片足をもう片方の膝の上に置き、置いた足の指に手の指を差し込んで握る。ゆっくりと時計回りに足首を回し、回し終えたら逆回しに動かす。反対の脚も同様に行う。 |
運動の頻度 | 毎日がおすすめ(入浴後や寝る前がよい) |
ストレッチ時間 | 10~15分 |
歯磨き粉を使わずにブラッシングする
つわりがひどい方は、歯磨きで吐き気をもよおすことも少なくありません。そんな方は歯磨き粉を使わずブラッシングすることも検討してみてください。歯磨き粉があれば口内の汚れは落ちやすいですが、ブラッシングだけでもある程度の汚れを落とせます。
また、歯を磨くときに歯ブラシがなるべく舌に触れないようにすると、吐き気も抑えやすくなります。
もし歯磨き自体が難しい場合は、デンタルリンス(液体ハミガキ)も活用するとよいでしょう。
デンタルリンスは口内洗浄のためのマウスウォッシュと異なり、歯の洗浄や歯周病予防に特化しています。匂いや味が薄いものもあるため、使えそうな製品を探してみてください。
つわりに似た症状がある病気にも注意
つわりの症状は一部の病気の症状とよく似ています。妊娠が確定しているならつわりの可能性が高いですが、可能性の一つとして注意が必要です。
ここからは注意すべきつわりと似た症状の病気をご紹介します。
胃がん
胃がんは、慢性的な炎症、塩分過多の食事や飲酒、ピロリ菌等を要因として発症する「がん」の一つです。初期の自覚症状は少なく、進行すると吐き気や胸やけの症状がみられることがあります。
男女共に胃がんは40歳近くなるとかかる人が増えるため、その年代の妊婦さんは注意が必要な病気と言えます。吐き気や胸やけが一向に治らない場合は、一度病院で検査しておくと安心です。
なお、胃がんの検診は50歳以上が対象です。ただ50歳未満でも自己負担で受診することは可能なため、不安な方は受診を検討してください。
膵炎
膵炎は、アルコールの摂取や胆石ができることで起きる膵臓の炎症です。症状として吐き気、嘔吐等がみられ、つわりと症状が似ています。ただ膵炎の場合は、加えて発熱、上腹部の痛み、背中~腰にかけての痛み等の症状がみられることも特徴的です。
また、膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」があります。
数日~数週間で症状が治まるものは「急性膵炎」、炎症が慢性化して膵臓の機能を破壊しはじめるものを「慢性膵炎」と呼びます。膵炎は急に発症しやすくいつの間にか治まる場合があり、知らないうちに重篤な状態に陥ることもあるため注意が必要です。
なお膵炎は、病院で血液検査や造影CTで調べることが可能です。
慢性化すると消化不良からの体重減少や、糖尿病の発症等の懸念も出てきます。吐き気等に加えて背中等の痛みがある場合は、一度病院への相談をご検討ください。
更年期障害
更年期障害とは、女性が閉経に向けてホルモンが減少していく過程で起きる体調不良のことです。症状の一つとして、吐き気、頭痛、疲れやすい等のつわりと似た症状があります。その他の症状としては、ほてり、抑うつ感、イライラ、肩こり、腰痛等が特徴的です。
更年期が始まっている方はホルモンの影響で月経不順にもなるため、症状とあわせて妊娠・つわりと勘違いすることがあります。
ただ、更年期は一般的に40代以降になる方が多いです。しかし、30代後半の方でも症状が出てくる場合があるため、その年代の女性は更年期障害の可能性も疑われます。
なお、更年期障害の治療は婦人科・産婦人科等で、ホルモン補充療法や漢方治療が行われます。
つわりの対処で役立つ制度
つわりの対処としていくつか利用できる制度があります。これからつわりとうまく付き合っていくためにも、利用できる制度を確認しておきましょう。
つわり休暇
つわり休暇は、「男女雇用機会均等法」に基づいて制定された制度です。つわりの症状が重く、医師から仕事を休むように指導された場合に利用できます。
この制度のポイントは、就業規則や雇用形態に関係なく利用できる点です。どのような会社でも、法律に基づいて従業員の休暇の申請を受け入れる義務があります。
また、医師による指導があった場合は、勤務時間の変更や勤務の軽減も可能なので、体調にあわせて活用していきましょう。
※参考:厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」
母子健康手帳
母子健康手帳もつわりの対処に役立ちます。
母子健康手帳を持っていると、急な体調不良が起きたときにかかりつけ病院でなくても、最寄りの病院で診てもらうことが可能です。
通常は急にかかったことのない病院ですぐに診てもらうのは難しいため、いざという時に助かるシステムと言えます。
また、母子健康手帳は妊娠中の注意点もまとめられているため、妊娠・出産・育児のちょっとした困りごとがあった時に心強い資料にもなります。妊娠がわかったら、役所で早めにもらって持ち歩くようにしましょう。
つわりの時は無理をせず体をいたわろう
つらいつわりの症状には、症状ごとに対処していくことが重要です。
特に吐き気や嘔吐については起きやすい症状のため、日々の中で対策を講じておく必要があります。特に食事では量や回数の調整をして、嘔吐対策や胃腸への気遣いを欠かさないようにしましょう。もしすでに嘔吐が多い場合は、水分補給もしっかり行ってください。
吐き気予防として、ニオイ対策もすると過ごしやすくなる可能性があります。受付けないニオイを特定し、つわり中は避けるようにしましょう。
また、症状が出ている時は、あめやタブレットを食べる、ツボ押し、歯磨き粉の使用は避ける等の方法で不快感を抑えることができるかもしれません。ぜひ試してみてください。