「老い」を特別扱いしない──父を見送った経験から考える、母との近すぎない距離感と向き合い方【連載Vol.6】
女性が自分自身のからだとこころに目を向け、「今のわたしは、どんな状態なんだろう?」と考えるきっかけを届ける「I’m OK? PROJECT」。本連載では、 I’m OK? PROJECTアンバサダーである梅宮アンナさんのこれまでの経験や、日々の中で感じてきたことを通して、読者の皆さんも「わたしは、大丈夫?」と一歩立ち止まって、自分自身に問いかけてみませんか?
Vol.6となる今回は、親の老いとの向き合い方について。親の老いは、ある日突然訪れるものではなく、日常の中の小さな違和感として現れることもあります。
父を見送った経験を経て、アンナさんは母の変化をどのように感じてきたのでしょうか。娘として向き合う中で見えてきた戸惑いやこれからの備えについて、率直な思いを伺いました。
PROFILE
1 気づけば“支える側”になっていた私が感じた、母の老い
2 母を思うからこそ、“近すぎない距離”でいたい
3 将来を心配しすぎるより、“今できること”を大切にしたい
気づけば“支える側”になっていた私が感じた、母の老い
I'm OK?編集部:これまでに、お母さまの老いを感じた瞬間はありますか?
梅宮アンナさん:ありますね。会話のテンポがこれまでより少しゆっくりになったり、耳が遠くなったり。そうした日常の小さな変化から、「ああ、年齢を重ねているんだな」と感じることがあります。
それから、新しいことを覚えるのにも少し時間がかかるようになってきたのかな、とも感じますね。例えばスマートフォンの使い方でも、「これは電話なの?LINEなの?」と戸惑っている様子を見ることがあって、そういうやりとりが増えてきたなと思います。
また、年々、親子の立場が少しずつ変わってきていると実感します。小さい頃は、もちろん子どもである私が叱られる立場でした。でも今は、逆に私が母に注意したり、声をかけたりする場面もあるんです。
親はずっと自分を導いてくれる存在だと思っていたので、自分が支える側に回っていることに気づいた時は、正直少し戸惑いもありましたし、同時に寂しさのようなものも感じました。
母を思うからこそ、“近すぎない距離”でいたい
I'm OK?編集部:お父さまを見送られたあと、お母さまとの関係性に変化はありましたか?
梅宮アンナさん:父が亡くなった時、母のことがとても心配でした。母は「もし生まれ変わっても、また一緒になりたい」というくらい、父のことが大好きなんです。だからこそ、父が亡くなったあと、母がこの先どう過ごしていくのか、とても不安に感じていました。
なので、できるだけ一緒にいる時間を増やそうと思って、いろいろな場所に連れて行ったり、食事に行ったりする機会も増やしました。
ただ、そうして過ごす時間が増える中で、少しずつ「このままでいいのかな」と感じることも出てきたんです。ずっと一緒にいると、それが当たり前になって、お互いに少し無理をしていることにも気づきにくくなるのかなと思って。
I'm OK?編集部:今後お母さまとは、どのような距離感で向き合っていきたいと考えていますか?
梅宮アンナさん:夫から「お母さんと一緒に住めばいいんじゃない?」と言ってもらい、ありがたいと思いました。ただ、最終的には「今は同居しない」という選択をしました。
それは決して冷たい気持ちからではなくて、これまで長い時間を一緒に過ごしてきたからこそ、近すぎることで関係が崩れてしまうこともあると感じていたからです。私たちは、ある程度距離を保っていた方が、結果的にいい関係でいられるのではないかなと思っています。
また、近くにいて何でも先回りしてやってしまうことが、かえって母の自由や自立を奪ってしまうこともあるのではないかなと感じています。
私は「老いを特別扱いしないこと」が大切だと思っています。「もう年だから」と過剰に気を遣いすぎるのではなく、普段通りに接すること、必要以上に支えすぎないこと。そのバランスを大切にしながら、これからも自然に向き合っていけたらと思っています。
将来を心配しすぎるより、“今できること”を大切にしたい
I'm OK?編集部:お母さまの老いや介護について、不安はありますか?
梅宮アンナさん:不安はあまりないですね。もちろん、これからいろいろなことが起きる可能性はあります。母は今、電車やバスに乗って好きなところへ出かけられますが、それができなくなったら大変だな、と考えることもあります。
でも、これから起こるかもしれないことを今から全部心配しても仕方がないと思っています。その時々で、できることを考えていけばいいのかなと。
というのも、もともと私は、あまり先のことを細かく決めすぎるタイプではないんです。先の予定を決めすぎると、自分で自分を縛ってしまうような気がするんですよね。
だから、起きたことに対してその都度向き合い、その時にできることを選んでいく。それくらいのスタンスでいる方が、自分には合っているのかなと思っています。
I'm OK?編集部:お父さまを見送られた経験を踏まえて、事前に備えておいてよかったことや、今感じていることはありますか?
梅宮アンナさん:実際に経験してみて、こうしたことは本当に家族の状況によって大きく変わるものなんだと実感しました。
例えば、父は遺言書を残していなかったのですが、結果的に私たちの場合、そのおかげでかえってスムーズに進んだ部分もありました。すべてを法律に則って整理することができたので、混乱せずに手続きを進められたんです。
ただ、これは本当にケースによると思います。私たちの場合はたまたまそうでしたが、事前に税理士や相続の専門家に相談しておくことで、いざという時の負担を減らせるケースも多いのではないかなと感じました。最低限の知識があるだけでも、負担はかなり変わるのではないかと思います。
また現実的な備えとして、保険の重要性も実感しました。父が亡くなった時は保険に助けられましたし、私自身もがんになってから「保険に入っていてよかった」と強く感じました。がんは治療費が高額になったり、治療に専念するために仕事を休まざるを得ないケースもあります。何かあった時の備えを持っておくことは、自分だけでなく家族の安心にもつながるのではないかなと思いました。
親の老いと向き合うことには、きっと正解はありません。それぞれの家族に、それぞれの距離や形があります。だからこそ、自分たちなりの向き合い方を見つけながら、その時その時の時間を大切に過ごしていけたらよいのではないかなと思っています。