生理不順について基本から解説!検査を受けて病気を治療しよう
PROFILE
1 生理不順とは
2 生理不順になる4つの原因
3 病院での生理不順の治し方
4 生理不順に対処する4つのポイント
5 生理不順になった際の疑問
6 生理不順の改善をしていこう
生理不順とは
生理不順とは、周期的に起きるはずの生理が不規則にくる状態を指します。
生理は数日前後することもありますが、本来28~35日間に1度の周期で来るものです。しかし、上記の目安に6日前後ズレて生理がくる場合は「生理不順」にあたります。
ただし、28日周期で生理が来る人は10~15%程度、逆に生理が不規則な女性は20%いると見られており、生理不順が起きることは珍しくありません。
しかし、本来は正常な周期がなければいけないものです。生理が突然不規則になった人はもちろん、普段から不規則な人も原因が隠れていないか注意が必要になります。
参考:MSDマニュアル
▼生理周期に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
生理周期は年齢によって変化する?20代・30代・40代の平均を解説
平均的な生理周期は?バラバラで安定しないときの対処法を解説
生理不順になる4つの原因
生理不順になる原因は次の4つのいずれかであることが考えられます。
●年齢
●ストレスや疲れ
●ダイエット
●病気
続いて各原因を詳しく見ていきましょう。
年齢による体の変化
女性は10代の「成長期」と30代後半~40代の「更年期」に体の変化があり、生理に影響を及ぼします。成長期は体が成長途中なため、子宮の働きもまだ始まったばかりで、ホルモンバランスも不安定なため、どうしても生理も不規則になることが多いです。
また、更年期も妊娠が必要なくなるため体が閉経に向かいます。閉経に向けてホルモン分泌が減り、バランスが乱れて生理不順になりやすくなっています。
ストレス・疲れによるホルモンバランスの乱れ
ストレスや疲れが生理不順に関わっていることも珍しくありません。
女性はストレスが高い状態に晒されると、視床下部の機能が低下し、そのせいで生理を機能させるエストロゲン(卵生ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されにくくなります。ホルモンバランスの乱れによって正常な生理が行われなくなってしまうのです。
また、激しい疲労がある場合は、体が自動的に生理を止めてしまうことがあります。人の体は生命活動の継続を優先するようにできていますが、女性の場合は生理が「生命活動に必要ないもの」として除外されてしまいます。もし疲労度が高い状態が続いていて生理不順があるのなら、体の反応が起きている可能性が高いでしょう。
生理不順に関わるストレスの種類
ストレスと一言で言っても、次のような種類があります。精神的に強い感情にさいなまれるだけではなく、身体的な負荷がかかること、いわゆる「疲れ」もじつはストレスの一種です。
●身体的要因・・・睡眠不足、業務過多等身体的な疲れや不調等
●精神的要因・・・何らかの理由による不安感、恐怖感、怒り等
●社会的要因・・・職場、家庭、学校等人と関わるうえで受けるストレス
いずれかで具体的にストレス要因が思いあたる人は、体へ悪影響を及ぼしている可能性を視野に入れる必要があります。
過剰なダイエット
過剰なダイエットが原因で生理不順となることもあります。急激にダイエットをすると、女性ホルモンの分泌を助ける脂肪物質である「レプチン」が減少しすぎてしまうためです。
通常レプチンは体脂肪に含まれており、レプチンはエストロゲンの分泌を促す、いわば正常な生理を起こすための助手的な存在。しかし、過剰なダイエットで体脂肪が極端に減少してしまうと、助手の数が足りません。ホルモンが仕事をするのに意思伝達がうまくいかず、生理不順が起きてしまいます。
とはいえダイエットをしていると、どこからが問題なダイエットなのかわからなくなりがちです。じつは体に危険がある範囲はBMI値で判断できます。次の計算式に当てはめて割り出してみましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
このとき、BMI値が21以下の場合は生理不順を起こす可能性があります。さらにBMI値が16を下回ると、今後妊娠しにくくなる危険があるので注意してください。
生理不順がおきる病気が発症中
生理不順は子宮や卵巣へ影響を及ぼす病気が原因なこともあります。主に関係が考えられる病気は次のとおりです。
●バセドウ病
●多嚢胞性卵巣症候群
●高プロラクチン血症
各病気の概要を以下で詳しく解説します。
バセドウ病
バセドウ病は甲状腺に異常が起こる自己免疫疾患です。自身の体の中で精製される抗体が異常に増加し、抗体が自身を攻撃して、身体機能を低下させてしまいます。また、抗体が増加し血液に流れることで甲状腺も肥大化します。
症状としては動悸、異常発汗、手の震え、下痢、情緒不安定等があり、喉仏の両側あたり(甲状腺)が腫れることが特徴です。加えて甲状腺異常の影響によって症状の一つとして、生理不順や極端に短い、または長い周期の生理がくるようになります。
多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群は卵巣に嚢胞(病変)が多数できて、卵巣が腫れてしまう病気です。男性ホルモンが何らかの理由で過多となってしまい、ホルモンバランスが乱れてしまうことでさまざまな症状を引き起こします。
特徴的な症状としては、体の男性化があります。具体的にはにきびが増える、体毛が濃くなる、胸が小さくなる、筋肉が増える等です。また、女性ホルモンの分泌が阻害されるため、生理不順や不正出血、無月経等が起こりやすくなります。
多嚢胞性卵巣症候群は、明確な要因は解明されていません。現状では男性ホルモンをコントロールする機能がうまく働かないために、男性ホルモン過多となることが要因ではないかと見られています。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症とは、妊娠していないにもかかわらず、母乳を作るために分泌される「プロラクチン」が高まり、身体的症状や生理不順を引き起こす状態です。
本来プロラクチンは授乳中に体に負荷がかからないよう、排卵を抑制し妊娠しにくくしてくれる働きがあります。しかし高プロラクチン血症は妊娠していないのにプロラクチンが過多となり、生理不順を起こしてしまうのです。
なお、高プロラクチン血症が起きる原因としては、次のものが挙げられます。
●胃腸薬や精神安定剤の服用(薬にプロラクチンが含まれているため)
●甲状腺機能の低下(橋本病)
●てんかん
●視床下部の病気
●慢性腎不全 等
生理不順以外には頭痛、視界の違和感、胸の張り、妊娠していないのに母乳が出る等があります。
病院での生理不順の治し方
もし病院で生理不順を改善したい場合は、どのような治療を行うのでしょうか。何をするのかわからないと、病院に行くのも不安です。
そこでここからは病院の一般的な生理不順の治し方を紹介します。細かい治療方針は病院によって異なりますが、一つの指標としてご覧ください。
ホルモン治療
生理不順は、排卵や生理を起こすためのホルモンがうまく分泌されないことが原因であることが多いです。そのため、まずホルモン治療を行います。不足しているホルモンを製剤で服薬し、ホルモンバランスを整えることが可能です。
なお、ホルモン治療は黄体ホルモンを投薬する「ホルムストローム療法」、黄体ホルモンと卵生ホルモンの2つを投薬する「カウフマン療法」があります。前者は黄体ホルモンが分泌されていないケース、後者は黄体・卵生の両方のホルモンの分泌が不足しているケースに使用します。
対応する病気の治療
もし例として紹介したバセドウ病と多嚢胞性卵巣症候群の場合は、次の治療を行います。
バセドウ病 | 多嚢胞性卵巣症候群 |
---|---|
①薬物治療 抗甲状腺薬によって甲状腺異常を改善させる。人により個人差があり2年ほど経過を見ながら治療を行う。 | ①薬物治療 排卵誘発剤を使って排卵を促して生理を改善させる治療。 |
②放射性ヨウ素内用療法</B> ベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、機能を改善させる治療。 | ②生活指導 生活習慣の改善を指導し、生理不順を招かないようにする。 |
③甲状腺摘除術 甲状腺を手術で摘出する治療法。術後は甲状腺ホルモン薬を服用する。 | ③腹腔鏡下卵巣多孔術 卵巣に多数の小さな穴を開けて卵巣内のホルモンが分泌されやすくする治療。 |
生理不順に対処する4つのポイント
生理不順は病気等の可能性に気を付けなければいけませんが、それ以外は生活習慣やストレス等が原因であることも多いです。そのため、病気ではない限りは、分析と生活習慣の見直しで生理不順が改善できることがあります。
そこで、ここからは生理不順に対処するときの4つのポイントを解説します。
▼生理不順の対処法に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
平均的な生理周期は?バラバラで安定しないときの対処法を解説
基礎体温をチェック
まずは自分の体がどのような状態か知るために、基礎体温をチェックしてみましょう。基礎体温とは、安静時の自分の体温のことです。体温の変化によって排卵時期や生理の開始日等を予測することができます。
基礎体温をチェックするために、小数点より下の第2位まで測れる基礎体温計と基礎体温表を用意。毎朝目が覚めたら寝たまま体温を測り、1カ月間記録していきます。また、併せておりもの、生理、性交、不正出血も記録しましょう。
なお、記録は2週間ごとの変化をチェックします。
通常は生理が始まると「低温期」が2週間、生理後は次の生理が起きるまで「高温期」が2週間あります。次の生理が起きるまでの間に排卵が起きるとエストロゲンが分泌されるため、体温が上がる仕組みです。
基礎体温表で記録をつけてみて、自身の体温も2週間ごとに変化していれば、正常にホルモンが働いていると予測することができます。逆に体温の変化が不規則な場合はホルモンバランスも崩れている可能性があるかもしれません。
▼生理中の体温に関する詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
生理時の体温は上がる?下がる?女性の基礎体温の変化とわかることを解説
食事と適度な運動で体調管理
生理不順を改善するためには、食事の見直しと適度な運動もポイントになります。適切な栄養と運動を取り入れることで、ホルモン分泌を助け、体内サイクルを改善させることができます。食事と運動は特に次のポイントを意識してみてください。
ポイント | 効果 | |
---|---|---|
食事 | ・主食・主菜・副菜をバランス良く ・五大栄養素を3食で摂取する (タンパク質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン) | 脳内物質の分泌を助け、体内サイクルを安定させることができる。 |
運動 | ・週60分以上の有酸素運動 (汗をかく程度) | 生活習慣病の予防、代謝やホルモン分泌を助けることができる。 |
なお、栄養は新鮮な食材で摂取できるのが理想ですが、全ての食事に手をかけるのは大変です。冷食やサプリメントも活用し、3食で五大栄養素を取るようにしてみましょう。
日常的にストレス解消
生理不順はストレスによる影響でも起きることがあるため、日常的にストレス解消をすることも意識してみてください。例えばストレス解消の一例として次のようなものが挙げられます。
家でできるストレス解消 | 外でできるストレス解消 | その他ストレス解消 |
---|---|---|
●余分に寝る ●湯船に浸かる ●腹式呼吸をする ●マッサージをする ●映画・ドラマを見る ●趣味の時間を楽しむ ●好きなものを食べる | ●好きな場所へ行く ●体を動かす ●親しい人と出掛ける ●親しい人と話す ●おいしいものを食べに行く ●カラオケで発散する | ●泣いてみる ●曲を聞く |
もし疲れや睡眠不足等の身体的なストレスの場合は、睡眠や入浴等家でゆっくりするだけでもストレスが解消されます。また、精神的なストレスは好きなことをして気分転換をしてみたり、人と話すことで癒やされることもあるでしょう。
気力が回復すると感じるストレス解消方法で、嫌なものをため込まないように発散させていきましょう。
市販薬を活用
病院へ行く前段階として市販薬の漢方薬を活用する手もあります。漢方薬は副作用も少なく、市販薬でも使いやすいものが多いです。また、漢方薬自体も体質を改善するという考え方なため、個人でも安心して使いやすいです。
なお、生理不順の改善が期待できる漢方は以下のものがあります。
種類 | 効果 |
---|---|
当帰(トウキ) | 血を作るのを促し、血の巡りを良くする。体を温める効果もある。 |
芍薬(シャクヤク) | 痛みや炎症を軽減し、血行を良くする。 |
生姜(ショウキョウ) 阿膠(アキョウ) | 血の巡りを良くし、体を温める。また、阿膠は止血作用もあり、不正出血に効果が期待できる。 |
上記の漢方を組み合わせ、「生理不順向け」の製品となっていることもあります。ただ製品によって成分差があるのでどれが良いか見比べて選ぶようにしてください。
もし選び方がわからない場合は、薬剤師に聞くと確実です。漢方薬はほとんど副作用はありませんが、飲み合わせに注意が必要な場合もあります。初めて服用する場合は薬剤師からのアドバイスももらうと安全です。
生理不順になった際の疑問
生理不順は不安なことも多く、まだまだ疑問もあるかもしれません。そこで最後にここまでで紹介していない関連した疑問を取り上げます。
気になる疑問がある人はぜひ参考にしてください。
生理不順の検査にかかる費用はいくら?
一般的に生理不順の検査にかかる費用は初診料を含め、保険適用で合計で1万円ほどになることが多いようです。なお、検査の種類と各料金の目安は次のとおりです。
種類 | 料金目安 | 判断箇所と検査理由 |
---|---|---|
血液検査 | 約3,000円 | 女性ホルモンや下垂体ホルモン等の数値を調べるため。 |
超音波検査 (エコー) | 約1,600円 | 膣に機器を挿入し子宮や卵巣の状態や異常を調べるため。(※おなかのうえからエコーで状態を調べることも可能) |
CTまたはMRI | 病院により異なる | 病変がないか画像で調べるため。(※採血や超音波検査で病気が疑われる場合のみ) |
子宮癌検査 その他 | 約1,600~2,100円 | 血液検査等で異常がある場合に癌であるか調べるために行う。 |
また、上記に加えて内診も行うことが多いです。触診で腹部にしこりがないか確かめたり、膣に指を入れて子宮等の状態を調べます。
急な生理痛で仕事は休める?
労働基準法68条によれば、従業員が生理で体調不良となった場合はいかなる雇用形態でも仕事を休ませなければいけないと明記されています。この法律は勤めている会社の就業規則に記載されてなくとも有効です。
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
※引用:e-Gov法例検索「第六十八条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」
また、法律には明記されていませんが、生理前のPMSでも生理休暇が適用されることがあります。体調不良がひどい場合は無理をせず、まずは担当者に相談してみましょう。
生理不順の改善をしていこう
年齢による影響でない限りは、生理不順は何らかの対応が必要です。放置すれば生理不順が悪化する恐れもあり、また最悪の場合は後の妊娠にも関わります。特にストレスや過剰なダイエット、病気には注意が必要なので原因は把握しておきましょう。
また、病気以外が原因なら、生活習慣の改善で生理不順が治ることもあります。自分の体の状況を分析しながら、バランスの良い食事と適度な運動、ストレスをためない生活を行って改善を目指していきましょう。まずはできることからでも大丈夫。自分の体を見つめ直してみませんか。